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「大阪の女」 [映画]

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〔1958年/日本〕


大阪の、落語家や漫才師が多数暮らす集落、
通称「芸人村」。


ここの長屋で、
元漫才師の父・半丸(中村雁治郎)と暮らす
お千(京マチ子)は、
情が深い、気のいい女。


お千はバンドマンの夫と死に別れ、
今はお針子をして、
生活力のない半丸を養っている。


彼女は隣に住む宗二(高松英郎)を密かに愛していたが、
擦れ違いが重なり、
思いは叶わず、
見合いした米太郎(船越英二)と所帯を持つ。


夫婦はそれなりに上手くいっていたが、
ある日、米太郎が轢き逃げ事故に遭ってしまう。
病院のベッドで彼は、
「ある秘密」をお千に打ち明けようとするが、
中々言い出せない様子のまま死んでしまい・・・。





京マチ子が、
人情味あふれる優しい女を好演。
いつもの、妖艶な演技もいいけれど、
こういった女も上手い。
若尾文子さんも好きだけど、
京さんも好きだなぁ。


京さん演じるお千は、とにかく目の前にある運命を
受け入れる。
どんなに宗二が好きでも、
宗二に恋人があると知れば(誤解だが)
すぐに諦めて、
父が連れて来た男・米太郎と結婚する。


気乗りのしない結婚でも、
一緒になったからには、
米太郎に深い愛情を示す。
何事を運命と受け入れ、
その中で自分ができる最高の事をする。


彼女を見ていると、
欲がないって清々しいなぁと思う。
私もお千のようになりたいものだ。


そんなお千に対して、
中村雁治郎演じる彼女の父が、
ちょっと危ないんだな(笑)。


彼はとにかく、酒と女が大好き。
ある日、
お千に頼まれて、大金を持って帰る使いに出るんだけど、
絶対、この金を失うはずだと、
どう考えても、話が読める。


案の定、くだらない理由で金がなくなる。
こんなおっさんに金を持たせては駄目(笑)。
けれどそんな父でも、
お千は責めたりはしない。
もっと怒ってもいいのにと、
観ているこちらは思うけれど、
全ては「仕方ない」で終わってしまう。


お千自身も、
その後得た、もっと凄い大金を、
ある理由でポンと投げ出すんだもの。
彼女にとってお金は、
人生にそれほどの深い意味を持たないようだ。


50年代の大阪の町が見られるのも楽しい。
繁華街は大変な賑わいで、
歩くのも困難なくらい。
終戦から10年以上経って、
人々は貧しいながらも、
それなりの生活をしていたであろう様子が偲ばれる。


評価 ★★★☆☆

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