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「ほしをつぐもの」 [映画]

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〔1990年/日本〕


出世できないまま、
会社から早期退職を勧告された吉田健児(田中邦衛)は、
帰る途中で突然倒れ、
意識不明となってしまう。


病院に担ぎ込まれた健児は、
幼い頃の夢を見ていた。
昭和20年3月。
学童疎開していた長野から、
友達5人と脱走した時の夢を。


疎開先の寺から、
男子4人、女子2人で東京を目指した健児たちは、
ひたすら山の中を歩いた。
しかし、考えが甘かったのは明らかで、
疲労のわりに、進んだ距離はほんのわずか。


そんな中、彼らは猟師のおじさん(ビートたけし)に出会う。
健児たちの無謀な計画を聞いたおじさんは、
最初は寺へ帰れと言ったが、
彼らの意志が固い事を知り、
行動を共にしてくれる事になる。


おじさんは口は悪いが、
心は温かで、
魚やうさぎを食糧にしながら
東京への道を下ってゆく。
短いが楽しい旅。


「この川を越えれば東京だ」
おじさんはそう言い、別れを告げるが・・・。





これは反戦映画だ。
戦闘や銃撃の場面がほんの一瞬あるだけの、
子供が描く反戦映画だ。


父と母に会いたい。
その一心で疎開先から逃げ出した子供たちだけれど、
やっぱり子供は子供。
その計画はずさんで、
大人から見ると、
どう考えても無理があり、ハラハラしてしまう。


1人の男の子は、
錆びた釘を踏んだせいで、
足が腫れ、体が震えると言う。
どう見ても破傷風の症状。
嫌な予感が頭をよぎる。


そんな中、出会う猟師のおじさん。
演じるビートたけしがいい。
その口の悪さは、
彼がコントでよくする、
鬼瓦権造がもう少しソフトになった感じで、
「馬鹿野郎、この野郎」がすぐ出てくる(笑)。


でも、それを言いながら、
彼は笑っている。
観ているこちらはそれが可笑しくて、
笑ってしまう。


けれど、口は悪くても、
彼はとても真っ当で、
子供たちがどんどん彼を好きなってゆくのが分かる。


ある地点で、突然別れを告げたおじさんに、
泣き出した子供たちの気持ち、
分かるなぁ。
それだけ濃い数日間だったんだよね。
親に会うという目的がなかったら、
おじさんとずっと一緒にいたいという気持ちに、
私までなっていたもの。


時代考証がどうのとか、
色々なご意見があるようだけど、
細かい事はどうでもいい。
戦争がなかったら、
この子供たちだって疎開する必要もなかったわけで、
戦争の馬鹿馬鹿しさを思う。


昨日、集団的自衛権の行使が容認された日本。
どんな法律にも
メリットとデメリットがあるのは分かっているけれど、
この国はこの先、どうなるんだろうと、
こんな私でも、少し考えてしまう。


評価 ★★★☆☆

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