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「エデンより彼方に」 [映画]

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〔2002年/アメリカ〕


1950年代のアメリカ、コネティカット州。
専業主婦・ジュリアン・ムーアは、
誰もが羨む生活を送っていた。


一流企業に勤める夫・デニス・クエイドと2人の子供がいる暮らし。
良妻賢母で、
経済的にも恵まれている。
雑誌社から、主婦のお手本として、
取材を受ける事もある。


ある日、ムーアは、
残業で遅くなったクエイドの為に、
食事を届けようと彼の事務所に入った所、
夫の秘密を知ってしまい、
大変なショックを受ける。


今まで築いてきた幸せな家庭像が、
音を立てて崩れそうな衝撃。
しかし夫婦は、
今の地位を手離す考えはなく、
なんとかやり直そうと努力を始める。


そんなムーアは、
新しくやってきた黒人の庭師・デニス・ヘイスバードと話すと
心の安らぎを得られる自分に気付く。
ヘイスバードは知的で教養に溢れた、
心の広い男だった。


しかし時代はまだ、黒人差別が激しく、
ムーアとヘイスバードが一緒に車に乗っただけで、
たちまち噂になってしまう。


さらに夫は、
夫婦関係が修復不可能なほど、
ムーアから心が離れてしまい・・・。





1950年代の裕福な専業主婦が、
思いもよらない出来事から、
現在の幸福は砂上の楼閣だった事に気付く物語。


まだまだ差別が根強く残る、
古い時代のアメリカの主婦をジュリアン・ムーアが好演。
出だしは彼女の、
幸福の絶頂の場面から始まる。


素敵な夫、可愛い子供、
自宅で開かれるホームパーティ。
非の打ちどころのない生活。


だからこそ、夫の隠し事を知る場面は、
「あちゃー」って感じで(笑)。
いや、笑い事じゃないけどね、
それに、その前から秘密を仄めかす場面があって、
なんとなく予感はあったのだけれど。


その後、ムーアと黒人のデニス・ヘイスバードが、
とても親しくなるわけだけど、


やっぱりムーアの行動は、
多少軽率だったと言わざるを得ない。


彼女は、自分がヘイスバードと一緒にいる時の、
人々の興味本位の視線を知らないわけじゃない。
私がもしムーアの立場で、
家族との平穏な生活をこの先も永遠に望むなら、
ヘイスバードと出掛けたりはしない。
狭い町で、噂になるのは火を見るより明らかだもの。
李下に冠を正さず、
瓜田に靴を納ず、だ。


ムーアが友達だと思ってきた主婦が、
実はぜーんぜん友達じゃなかった場面も、
すごくヤな感じ。
意地悪そうな顔してると思ったのよね。
こやつ絶対ムーアの事を本気で心配なんかしてないな、って。


時代のせいなのか、性格なのか、
ムーアは自分から大きく人生を動かそうなんて、
夢にも思ってはいないようだ。
黒人の地位向上委員会に電話した時も、
ボランティア以上の事をしようとは考えていない。


でも、この映画はそれでいい。
例えば、ムーアが差別撤廃に目覚めて、
突然こぶしを振り上げるような展開になっていたら、
余韻は何も残らなかっただろう。
1人の主婦の、
人生のある時期を切り取って見せたような、
面白い映画だった。


評価 ★★★★☆

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