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「噂の娘」 [映画]

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〔1935年/日本〕


灘屋酒店は、かつては繁盛していたが、
今は傾きかけた造り酒屋。


主人の健吉(御橋公)は入り婿で、
妻を亡くしている。
世間は彼を、貧乏くじを引いたと噂しているが、
本人は店の立て直しに懸命だ。


しかし舅の金使いは、
儲かっていた頃から変わらず、
さらに次女の紀美子(梅園龍子)も
派手に遊び歩くのが大好き。


真面目な長女・邦江(千葉早智子)だけが
父と店を案じ、
金持ちの息子と見合いする決心をする。


しかし、見合いの相手は、
邦江より、付き添いで来ていた紀美子を気に入ってしまい、
2人は内緒で逢引するようになる。


一方、店の再建に焦った健吉は、
ある事をするのだが、
それがとんでもない事態を引き起こし・・・。





成瀬巳喜男監督作品。
1時間もない、短い映画。
チェーホフの「櫻の園」がモチーフだそうだけれど、
私は「櫻の園」を読んでもいないし、
粗筋も知らないので、
普通に、古い作品として楽しんだ。


妹を同伴してお見合いに出掛けた長女。
なんとなくこの時点で嫌な予感がする。
地味で真面目な長女に対して、
妹はモダンで、派手。


見た目を気にする男だったら、
きっと妹を気にいるんじゃないかと思っていたら、
案の定。


長女は、自分の結婚は店の為だと考え、
それが自分の幸せだと健気に言うが、
妹は、そんな結婚は理解できないようだ。
姉の見合い相手に気に入られた事は、
彼女にとって自由恋愛の一つであって、
姉の気持ちなどは何も考えていなさそうだ。


姉は着物で、
妹は洋装。
そんな女の服装の過渡期な感じも、
映画の内容に上手く効いている。


ただ、ラスト近くで、
妹にも実は辛い事があるのだと分かる。
そうか、そうだったのか。
ちょびっとグレてしまっている彼女の気持ちも、
ここで理解する。


そして、「あーあ、やっちゃった」と言いたくなるラスト。
なんとも救いのない終わり方だけど、
でも、人間、生きていれば色々あるさ、頑張ろうよ、
と声を掛けたくなる終わりでもある。


評価 ★★★☆☆

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