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「お茶漬の味」 [映画]

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〔1952年/日本〕


佐分利信と小暮実千代は、
結婚8年目の夫婦で、子供はいない。


見合いで出会った2人は、
お互いに価値観が合わないまま結婚し、
なんとなく今日まで来てしまった。
特に小暮は、
生活全般にスマートさのない田舎出身の夫を、
どこか見下している。


小暮は、日々の無聊を慰めるように、
友人の淡島千景や、
姪の津島恵子と遊びまわり、
家事は家政婦に任せきり。
佐分利も、そんな妻を
好き放題させている。


ある日、津島が見合いの席から逃げ出してくる。
津島は、
「愛のない結婚をして、佐分利の夫婦のようにはなりたくない」と言い、
また、佐分利も、
「無理に結婚させても、僕たちのような夫婦が一組増えるだけ」と、
初めて本音のような言葉を発する。


佐分利の発言にショックを受けた小暮は、
置き手紙をして、神戸の友人宅へ遊びに行ってしまう。
ところが、その間に、
佐分利の南米への出張が決まってしまい、
彼は神戸に電報を打つが、
ついに小暮は出発にまでに帰って来ず、
佐分利は出立してしまう・・・。





小津安二郎監督の、
夫婦を描いた作品。


私は今まで、
佐分利信という俳優の良さが
よく分からずにいた。
なんだかぶっきらぼうで、
退屈な演技しかできない人だと思っていた。


でも、この映画では、
彼のそんなイメージがピッタリ合っていて、
すんごく良い。


言いたい放題、やりたい放題の我儘な妻・小暮実千代を、
咎めるわけでもなく、諌めるわけでもなく、
無言で見守っている。
お見合いで結婚した妻には、
今まで激しい感情を抱いた事もないという男の役を、
見事に演じている。


小暮実千代がまた強くて(笑)。
彼女は佐分利がいない所で、
彼を「鈍感さん」などと呼んで、
馬鹿にしている。
そんな小暮を見て、
「見合い結婚は嫌だ」と思ってしまう、
津島の若い娘らしい感情も分からなくはない。
彼女は、
「私は結婚したら、旦那様の悪口なんて絶対言わないわ」と言う。


まぁ、小暮は小暮で、淋しいんでしょうね。
結婚したとはいえ、
夫が自分を愛してくれているとは感じられず、
放っておかれている。
好き放題できるという事は、
どうでもいいとイコールのようなもの。
怒りでもいいから、自分にぶつけてくれたら、
まだ愛情を感じられるだろうに。


小暮は、旅行したり、
歌舞伎に行ったり、野球観戦したり、
遊ぶネタには事欠かないようだ。
何しろ佐分利は、
出世して、お金だけは稼いでくるらしい。
小暮は、自分の家のキッチンに、
何があるのか、
冷蔵庫の中身さえ知らない。
ちょっと羨ましいようなご身分だわ(笑)。


ラストが大変に良い。
誰かと長く一緒に暮らすには、
互いの歩み寄りがとても大切なのだと、
この映画は教えてくれる。


評価 ★★★★☆

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