「出来ごころ」 [映画]
〔1933年/日本〕
子持ちの男やもめ・喜八は、
工場で日雇い労働をする、貧しいが気のいい男。
ある日、喜八は、長屋の隣に住む青年・次郎と、
寄席に行った帰り道、
何か困り果てているような女・春江と出会う。
彼女は、勤務していた会社が潰れ、
身寄りもなく、途方に暮れているのだ。
可哀相に思った喜八は、
行きつけの飲み屋のかあやんに、
春江を泊まらせてやってくれと頼む。
春江の性格の良さを見込んだかあやんは、
そのまま彼女を自分の店で働かせる事にする。
喜八も、春江の気立ての良さと、
その美しさを気に入り、
いい年をして、恋心を抱くようになる。
しかし、春江は、
若くてルックスのいい次郎に惹かれ始めていた。
そんなある日、
喜八の息子が重病になり・・・。
小津安二郎監督のサイレント映画。
これもなかなか面白い。
ラストはどうなるの?という思いで、
ワクワクしながら観る。
喜八と次郎、
喜八と息子。
どうにも女っ気のない日常に(かあやんは別(笑))、
偶然飛び込んできた、春江という女に、
夢中になってしまう喜八の気持ちも、
分からないではない。
でも・・・ね、
年若く美しい春江が、
どう考えても、子持ちの男やもめの喜八と付き合うとは思えないのが、
この作品の、
喜劇でもあり、
悲劇でもある所。
この恋の顛末は、誰が見ても一目瞭然。
次郎がまた、すんごくいいんだな。
喜八の気持ちを知っている彼は、
自分に思いを寄せているらしい春江に、
とてもつれない。
春江がまた、純粋で可愛くて。
彼女がもっと性悪女だったら、
別の展開になっていたんだろうけど、
でも、どんな性悪だとしても、
喜八から奪えるものは、
何も無さそうだしなぁ(笑)。
喜八の息子が病気になった理由がまた、
なんとも・・・(笑)。
病気なのに喜劇というのも、
すごいものだわ。
ラストはちょっと無理矢理な感じがしないでもないけど、
喜八の気性がよく出ていると思えば悪くはない。
いい映画だった。
評価 ★★★★☆