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「浮草物語」 [映画]

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〔1934年/日本〕


旅芸人の一座が、
地方の小さな町で興行を打つためにやって来た。


実はこの町には、座長の喜八の昔の恋人・つねがおり、
息子まで生ませていた。
その息子・信吉も、もう二十歳。
誰に似たのか、出来が良く、
喜八は内心、自慢であったが、
自分が父だとは絶対に名乗らなかった。


一座の看板女優・おたかは、
喜八とは男女の関係であり、
そのせいか、この町に来てから、
喜八に落ち着きがない事を見抜いている。


喜八がつねの家に足繁く出入りしている事を知ったおたかは、
その腹いせに、
一座の若手女優・おときに、
信吉を誘惑するように命じる。


計画通り、おときの誘いに乗ってきた信吉であったが、
2人は次第に本気で愛し合うようになってしまう・・・。





小津安二郎監督の作品の中で、
私が一番好きなのが、「浮草」。
(川口浩様が出ているというのもあるけれど(笑)、
それを抜きにしても、本当に面白いと思う)


本作は、その「浮草」のオリジナルで、サイレント映画。
小津監督が、25年後に、
セルフリメイクしたという事だ。


なぜリメイクしたのか、
その理由は分からないけれど、
やはり、監督自身も、
このストーリーに面白さを感じていたんじゃないかなぁと、
勝手に想像している。
音の出る映画が撮れるようになって、
もう一度、あの作品を作り直してみたいって気持ちになったかなぁ、って。


この映画の何が面白いんだろう。
特別な事は何も起こらないのに。


旅芸人の座長が、
自分が父だという事を隠して、
息子と交流する場面がいいんだろうか。
いずれ分かって、修羅場になるだろう・・・、
そんな危うい予感が、
ワクワクとは違うけれど、
映画的な期待に胸が踊る。


看板女優が、若い女優を使って、
座長の息子を誘惑させる。
これは賭けだ。
一歩間違えば、
息子は「ラッキー!」で終わってしまう可能性がある。
若い息子にとって、旅役者の女優なぞ、
後腐れなく遊ぶには格好の相手じゃないか。


これはもう、息子の性格次第。
もちろん看板女優は、息子の純情そうな様子を見て、
この作戦を考えたんだろうけど。
その、意地悪で計算高い女の気持ちがまた、
この話を盛り上げる。


小津監督といえば思い出される、
「娘を嫁にやる、やらない」の映画も良いけれど、
この「浮草物語」、そしてリメイク版の「浮草」は、
また別の味わいがあって素晴らしい。
ぜひお薦めしたい1本。


評価 ★★★★★

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