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「白子屋駒子」 [映画]

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〔1960年/日本〕


材木問屋・白子屋の美しい一人娘駒子(山本富士子)は、
親から、婿を取るようにと強く勧められていたが、
それを頑なに拒否していた。


駒子は若い番頭・忠八(小林勝彦)を
深く愛しているのだ。
忠八は身分の違いから、
自分の気持ちを抑えていたが、
火事騒ぎが起き、駒子を守った事から、
二人の仲は決定的となる。


駒子の母・お常は、
通いの髪結い・清三郎と密通しており、
清三郎から金をせびられる日常。
父・庄三郎(中村雁治郎)は、
その事を知ってか知らずか、
お常の尻に敷かれて、言いたい事も言えない。


ある日、忠八は、
清三郎やその仲間と揉み合う。
その場を助けてくれたスリの女が撃った鉄砲の弾が、
仲間の1人を殺してしまい、
忠八に殺人の嫌疑がかかってしまう。


忠八が死罪になったと聞かされた駒子は、
泣く泣く、婿養子を迎える。
しかし、死んだと聞かされていた忠八が、
駒子の前に現れる。
全ては清三郎の策略だったのだ・・・。





山本富士子さんが、
嫁入り前の娘を演じる悲恋物。


山本さん演じる駒子が、
番頭の忠八の前で、
いつも、「いやよいやよ」と身をよじっている様子が、
いつまでも印象深い。


忠八がとっても真面目で、
彼女の思いに中々応えてくれなくて、
つい、そうなってしまうらしい(笑)。


商家の娘と番頭が出来上がるって、
時代劇ではよく見るけれど、
結ばれたという話も結構あるので、
そうタブーではなかったとは思うのだけれど、
それにはやはり、
親の承諾が絶対だったのでしょうね。


山本さんの演技は申し分ないのだけれど、
残念なのは中村雁治郎さん。
私は、飄々とした関西弁を話す中村さんが好きなのに、
この映画では、いつもとはイメージと違う東京弁。


しかも、女房が男と密通しているのに、
何も言えない、頼りなさげな夫の役。
私は、人を食ったような中村さんの演技気に入っているから、
この映画の彼は、ちょっと物足りない。


それから、駒子が忠八と愛し合う気持ちは、
とっても理解できるのだけれど、
白子屋に婿に入った、彼女の旦那さんがちょっと気の毒じゃない?(笑)


この婿さん、美しい駒子と結婚できた事をそれはそれは喜んで、
めっちゃ仕事に精を出す。
傾いていた白子屋を、
再建してくれるくらいの手腕の持ち主。


それなのに、
妻は、恋人が忘れられず、
さらに、死んだと思っていたその恋人が、
生きていたなんて。
怒る気持ちも分からなくはないわ(笑)。


評価 ★★★☆☆

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「飛べないアヒル」 [映画]

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〔1992年/アメリカ〕


弁護士・エミリオ・エステベスは傲慢で、
裁判で勝つためなら、どんな作戦も厭わない男。


そんな態度を上司から諌められた彼は、
帰り道、飲酒しながら車の運転をし、
捕まってしまう。


彼に課せられたのは、500時間の社会奉仕。
その内容とは、
少年アイスホッケーのコーチ。


実はエステベスは、
少年の頃、優秀なアイスホッケー選手だったのだ。
多大な期待を寄せられ、
ある試合でペナルティショットを打ったが、
パックはゴールのふちに当たり失敗、
コーチから見限られた悲しい思い出。
それが今の彼の性格を形作っているといってもよかった・・・。


エステベスは、
派遣されたホッケーチームの練習場に
出向いてビックリ。
選手は全員、寄せ集めの落ちこぼれ。
チームは、今まで一度も勝った事がない弱小。
見ただけでうんざり。


しかし、徐々に彼の心に火が付き、
“ダックス”と命名したチームは、
優勝を目指して動き始める・・・。





嫌々、少年スポーツチームのコーチになった男が、
次第に目覚め、
チームを優勝に導く・・・
まったく展開が読めるような、
よくあるお話しではあるけれど、
やっぱり観れば感動してしまう。


「がんばれ!ベアーズ」の
アイスホッケー版といえば間違いなく、
さらに、ディズニー映画らしく、
子どもたちがとても生き生きと描かれていて、
見ていて飽きない。


ホッケー心に火の付いたエミリオ・エステベスが、
少年たちを特訓する場面が珍しくて面白い。
彼は生卵をパックに見立てて、
割らないように、パスの練習をさせる。
実際のホッケーであのような事をするのかは分からないけれど、
ホッケーの練習風景を見る事などあまりないので、
興味深くて。


子どもたちのスケートが上手くて。
最初からスケートの出来る子役が選ばれたんだろうか。
それとも、決まってから特訓?


エステベスが、
子供たちの母親の1人と、
恋愛関係になって、
子どもたちの前でキスしたりするのが、
日本の映画とは、ちょっと違うところか。
日本でそのようなエピソードを盛り込んだら、
なんだか生々しくなってしまうだろうし、
よほど上手く作らないと、
「恋愛要素は必要なし!」と言われてしまう気がする。
お国柄の違いね。


ラストで、クイーンの「We are the Champions」が流れて、
めっちゃ気分が盛り上がる!
ありきたりだけど、
やっぱりスポーツチームが優勝した時、
これ以上に相応しい曲はないのではないかと思う。
大好き。


評価 ★★★☆☆

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「悪の法則」 [映画]

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〔2013年/アメリカ〕


ハンサムで腕の立つ弁護士・マイケル・ファスベンダーは、
美しい恋人・ペネロペ・クルスと婚約し、
今が人生の絶頂期。


彼は友人・ハビエル・バルデムと、
麻薬取引の仕事に関わる事になる。
それは彼にとって、
人生でたった一度の、
闇社会との関係、のはずだった。


仲買人のブラッド・ピットを紹介され、
メキシコの麻薬カルテルと接触するファスベンダー。


それがこの先、
どんな恐ろしい事態を招く事になるか、
知りもせずに・・・。





マイケル・ファスベンダー、
ペネロペ・クルス、
ハビエル・バルデム、
キャメロン・ディアス、
そして、ブラッド、ピット。


この超豪華な顔ぶれに、
予告を観た時から、
楽しみで仕方なかった映画。


でも、話はそう凄くはなかった(笑)。
というより、
なんだかごちゃごちゃした感じで、
理解がしにくい。
スッキリしない。


ストーリーを追うより、
雰囲気を楽しむ映画なのかなぁ、と思う。


数か所ある、
殺人の場面はちょっとショックだけど、
映画だと思えば面白い。
特にラスト近く。
まぁ、闇社会に関わるには、
あれくらいは覚悟の上じゃなきゃ、
駄目という事でしょうね。
素人が思うよりずっと、
深い闇があるという事ね。


それから、もっとビックリな場面が、
キャメロン・ディアス。


バルデムが突然ファスベンダーに、
「彼女が、ある“もの”と性交する所を見せつけられた」と言い出す。
観ているこちらは、ファスベンダー同様、
意味が分からないでポカンとしていると、
バルデムの回想シーンが始まる。


なんというか、
あんな場面、初めて見たわ(笑)。
アダルト向けのビデオなどでは、
過去にもあった手法なのだろうか。
無いとしたら、
ある意味、物凄く斬新(笑)。


評価 ★★★☆☆

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「青春の夢いまいづこ」 [映画]

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〔1932年/日本〕


江川宇礼雄は父が会社を経営する、
裕福な家のボンボン。


大学ではいつも斎藤達雄、大山健二、笠智衆らとつるんでは
大学前のカフェに出掛けたりしている。
カフェの愛らしい女給・田中絹代は、
彼らのマドンナ。
みんな彼女に、何らかの思いを抱いている。


そんなある日、江川の父が急死し、
彼は大学を中退し、会社を継がねばならなくなる。
慣れない社長業と、
中々抜けない学生気分。


1年後、斎藤達が就職する時期がやってきた。
就職難の折、
彼らは江川の会社に入れてほしいと頼みに来て、
江川はその願いを受け入れる。


しかし、主従関係となってしまった、
江川と、他の3人は、
今までのように気楽な関係とはいかず、
なんとなくギクシャクしてしまう。


さらに、田中をめぐって、
斎藤と対立するようになってしまい・・・。





小津安二郎監督のサイレント映画。


タイトルを聞いただけで、
切なくなるような気がするけど、
内容も、本質は切ない。
展開がコミカルなので、
一見コメディのようにも見えるけれど。


大学時代、
あんなに仲良しだった学友が、
自分の会社に社員として入ってきた途端、
ギクシャクしてしまうという過程が、
なんだか悲しい。


親しければ親しいほど、
友達とは主従関係になってはダメだと痛感する。
どんなに就職口がなくても、
友達が社長をする会社に入っては、
今までの関係が崩れてしまう。
友達とは、外で会って、
互いに仕事の愚痴を言い合うくらいがちょうどいい。


笑える場面も多い。


江川は立場が立場なだけに、
お見合いの話が多く、
2人の見合い相手が出てくる。


どちらも、金持ちの娘らしいけれど、
なんだかいい感じのしない女たちで、
田中絹代の愛らしさには、足元にも及ばない。
当然、江川も結婚する気にはならず、
わざと嫌われるような事をしたりする。


カンニングの場面も大変。
腕を骨折したふりをして、
包帯の中にカンニングペーパーを入れたり(笑)。


ラスト、田中が、
どちらの男を選ぶのか、
興味があったけれど、
やっぱりそうきたか、という結末。
私だったら、そちらは選ばないかもしれないな(笑)。


評価 ★★★★☆

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「隠された記憶」 [映画]

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〔2005年/フランス〕


TVのキャスター・ダニエル・オートゥイユと、
出版社勤務のジュリエット・ビノシュは、
12歳の息子がいる、恵まれた夫婦。


ある日、彼らの家の前に、
レジ袋に入れられたビデオテープが置かれていた。
そこに映っていたのは、
固定カメラでただひたすら、彼らの家が撮り続けられた映像で、
薄気味の悪さが感じられた。


また、同じ袋には、
子供が口から血を流しているような絵が入っており、
同じ絵は、
職場や、息子の学校にも届けられる。


さらに、2度3度とビデオが届けられ、
警察に訴えた夫妻だが、
実害がないという事で、
相手にしてもらえず、
フラストレーションは溜まるばかり。


そんな中、オートゥイユは、
子供の頃の、ある出来事を思い出していた。
それは、両親が孤児のマジッドという少年を引き取り、
数日間、一緒に暮らした事。


しかしオートゥイユはマジッドを理由もなく嫌い、
両親に嘘の訴えをして、
マジッドを孤児院に追いやったのだ。


マジッドが現在住むマンションを突き止めたオートゥイユは、
彼に会いに行くが・・・。





殺人が起こるわけでもなく、
直接的に嫌がらせを受けるわけでもないけれど、
ひたすら自分の家をビデオで撮られるという行為の気持ちの悪さに、
犯人は誰なのだろうと、見入ってしまう。


ビデオテープの場面が結構長いけれど、
不思議と飽きる事はない。


ダニエル・オートゥイユがTVで顔を晒す有名人なだけに、
狂信的なファンの仕業とも考えられるし、
ジュリエット・ビノシュの、
思わせぶりな交友関係から、
そちらの関係者の嫉妬かなとも思ったけれど、
この邦題が引っ掛かる。


何か古い出来事が、
この事件を引き起こしているはず、という
考えから抜け出せない。


そして次第に分かってくる、
オートゥイユの、幼い頃の出来事。


幼い頃、
自分ではそれほど深く考えずしてしまった事で、
今になって、
「悪い事をしたな」と相手に詫びたいような出来事は、
確かに私にもある。
まして、オートゥイユの場合、
マジッドの人生をも左右させてしまう嘘をついたわけだから、
いつまでも良心の呵責に苛まれていても、
不思議ではあるまい。
その罪悪感が、この映画の核といってもいい。


ただ、この映画には答えがない。
スッキリしたオチが欲しい私には、
消化不良な内容だった。
私には、この映画を読む能力がないのだろう。


途中で、息を飲むようなシーンがあって、
思わず「ひっ!」っと声が出てしまった。
自宅で観てよかった(笑)。


評価 ★★★☆☆

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