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「剣」 [映画]

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〔1964年/日本〕


東和大学の剣道部で、
新しい主将を決める話し合いが、
今、行われている。
候補者は市川雷蔵と川津祐介の2人。
剣の腕は拮抗しているが、
日頃の生活態度などから、市川が選ばれる。


市川は剣道一筋に励む、
ストイックすぎるくらいストイックな学生で、
融通が利かず、例外を許さない。
一方・川津は、
酒、煙草、麻雀、女と、
一通りの遊びをこなす、気ままな男だ。


厳しい市川を、
一部の部員は、神のように崇めていたが、
息苦しさを感じる部員もいる。
そして、そんな市川に対し川津は、
ライバル心とともに、何か苛立ちを感じ、
彼の本性を暴いてやりたいと日頃から思っている。


川津は自分の下宿に市川を呼び出し、
女子学生・藤由紀子を待機させる。
狭い部屋で、女と2人きりになった時、
市川がどう出るかを見てやろうという計画だ。
その後、藤は川津に、
「彼は私の誘惑に勝てず、キスをし、スカートに手を入れてきた」と
報告する。
半信半疑ながらも、勝った気になる川津。


強化合宿の日がやって来た。
市川は部員たちに、
「この海辺の町には、遊びに来たわけではない。
 絶対、海に入ってはいけない」と厳命。
厳しい練習の日々が続いた。
しかし、合宿も終わりに近づいたある日、
市川が不在の隙に、川津が部員たちを煽った。
「全員で海に行こう。黙っていれば分かりはしない」、と・・・。





「剣三部作」の2作目。


「強いは弱い、弱いは強い」
この映画を観ているうちに、
この言葉が浮かんでくる。


大変に面白く、見入ってしまう。
自分にも他人にも厳しく、
絶対に妥協を許さない市川雷蔵。
常に、張られた糸のようにピンとしていて、
それはとても凄い事だとは思うけれど、
なんというか、余裕がなく、
ある意味、とても世間知らずだ。


そんな市川の姿が、
本物なのか、ポーズなのか、
見破ってやりたりと思う川津祐介の気持ちも、
分からなくはない。
あまりに聖人君子然としている人がいると、
人はそこまでストイックになれるものかと、
その人の本質を知りたくなる気持ちは、私にもある。


ただ、川津は川津で、市川を意識なんてせずに、
もっと超然と構えていればいいのにとも思ってしまう。
剣道部の主将にはなれなくとも、
剣道以外何も知らない市川より、
川津の方がずっと大人じゃないか。
私は川津の方がずっと魅力的だと思うのだけれど。


最後まで夢中になって観たけれど、
ラストが納得いかん。


と思っていたら、
原作が三島由紀夫だった。
なるほど。
別に三島に詳しいわけじゃないけど、
彼が作った話なら、このオチも有りそうだと、
今度は妙に納得してしまった(笑)。


市川雷蔵は時代劇もいいけど、
現代劇もめっちゃいい。
もっともっと長生きして、
色々なタイプの映画に出てほしかった。


評価 ★★★★☆

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