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「告発のとき」 [映画]

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〔2007年/アメリカ〕


退役軍人・トミー・リー・ジョーンズのもとに、
イラクから帰国したばかりの彼の息子が、
無許可離隊をして、戻ってこないとの連絡が入る。


そんなはずはないと、
軍の宿舎に赴いたジョーンズは、
持ち出しを禁止されている息子の私物の中から、
携帯電話を密かにポケットに入れ、
戦地で映した動画の復元を、
プロに依頼する。


その頃、基地近くの空き地で、
めった刺しにされた挙句、
バラバラにされ、無残に焼かれ、
動物に食われた息子が発見される。


ジョーンズは、
息子をこのような姿にした犯人を捜すべく、
軍周辺の調査を開始。
地元の女刑事・シャーリーズ・セロンも、
ジョーンズに協力的だったが、
事件現場が軍の管轄だった事から、
思うようには動けない。


ジョーンズは、
犯人を捜してゆくうちに、
戦地に赴いた息子や息子の戦友たちの、
心の闇に気付いてゆくことになる・・・。





息子を無残な形で失った父が、
懸命に犯人を捜す物語なのだけれど、
その過程で、
戦争が人の心に落とす暗い影に気付かされるという内容。


生まれた時から、
人殺しは最大のタブーと教わってきた人間が、
戦地に行ったからといって、
急にそのタブーが取り払われるわけはなく、
悩み苦しむというのは、
当然の事といえる。


そして逆に、
その苦しみに慣れてしまう者もいる。
人を殺した直後でも、
食事をし、
何事もなかったかのように振る舞える者も。


そのどちらも、
異常な状態といっていい。


トミー・リー・ジョーンズは、
自分も軍人だったという過去から、
軍人の気持ちは理解しているつもりだったけれど、
明らかに、時代は変わったのだと
痛感せざるを得ない。
今の若者に、
自分の感覚は通用しないと。


犯人捜しがテーマなように感じるけれど、
そうではなく、
これは、戦争場面はケータイの動画の中だけに描かれた、
反戦映画。


評価 ★★★☆☆

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「ウォーム・ボディーズ」 [映画]

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〔2013年/アメリカ〕


R(ニコラス・ホルト)はまだ年若いゾンビの男の子。
自分がなぜゾンビになったのか分からないし、
自分の名前も頭文字しか思い出せない。
彼は今、空港で多数のゾンビ仲間と暮らしている。


人間は自分たちを食らうゾンビを恐れ、
高い壁の向こうで暮らしており、
近づくゾンビを撃ち殺す為、
壁の前には、兵隊が配備されている。


ある日、仲間たちと食糧である人間を探しに行ったRは、
彼好みの人間の女の子・ジュリー(テリーサ・パーマー)に
一目惚れしてしまう。


ゾンビに囲まれ、危機に陥ったジュリーを助けたRは、
自分の寝床である、飛行機の中に彼女を連れてゆき、
彼女が喜びそうな事を色々してやる。


怯えて泣きじゃくっていたジュリーも、
優しいRに惹かれ、心を開いてゆく。


数日後、なんとか家に帰ったジュリーだが、
Rの事が忘れられない。
そしてRもまたジュリーが忘れられず、
人間の居住区に忍び込み、
ジュリーの家にやってくる・・・。





ゾンビの男の子と人間の女の子が恋に落ちるという、
とっても可愛い映画。
本来なら気持ちの悪いはずのゾンビを、
そんな風に描いた作品って、
私は今まで観た事が無かった気がする。


そもそも、ゾンビには、実は感情があったという設定が、
わたし的には新しい。
ゾンビといえば、
死んでるけど生きてる、生きてるけど死んでるって生き物で、
感情があるなんて、
考えた事もなかったから。


Rはジュリーと出会って、
忘れていた人間らしい感情を取り戻すんだけど、
ジュリーと出会わなかったゾンビたちも、
時期を同じくして、
なぜか人間に戻り始める。


でも、それって有り得る事かも。
この映画のゾンビは、
ウィルスでそうなったみたいな事を言っていたから、
病気だったものが治ったのだと考えると、
ちょっと納得がいく。


まぁ、突っ込みどころは沢山あるけど、
可愛い~♪と思いながら見れば気楽。
Rの顔色が悪いからと、
ジュリーと友人が化粧を施す場面なんか笑えるし。


各場面でかかるロックがまた、
映像に合っていて楽しい。


評価 ★★★☆☆

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「凶悪」 [映画]

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〔2013年/日本〕


雑誌「明潮24」の記者・藤井(山田孝之)の所に、
死刑囚・須藤純次から手紙が届く。
そこには、
「自分にはまだ他にも余罪がある。
面会して、その事を話したい」と書かれており、
藤井は、刑務所に赴く。


須藤は、
「自分は世間に知られていない3件の殺人を犯している。
そして、それは全て“先生”(リリー・フランキー)と呼ばれる男が首謀者であり、
彼を許せない気持ちから、今回の告発に踏み切った」、と
藤井に強く訴える。


須藤の話に興味を持った藤井は、
上司に止められたにもかかわらず、
独自で調査を始める。


須藤の話す、
殺人現場や、被害者の家族、
そして、“先生”の周辺を当たってゆくうちに、
藤井は、須藤の言っている事は本当だという
確信を強めてゆく。


“先生”とは何者なのか。
藤井は“先生”を告発する事ができるのか・・・。





この映画は、
人を痛めつけたり、
汚いものは苦手という方には、
おすすめしない。
他人を、死ぬまで暴行し続ける場面は壮絶。


犯罪の場面を見たり、考えたりする時、
私が一番嫌い、というか、ゾッとするのは、
笑いながら人を痛めつける人の事。


リリー・フランキー演じる“先生”は、
まさしくそんな男で、
一見、ヘラヘラとして掴みどころがなく、
けれど、人を殺す場面になると、
実に楽しそうにそれをやってのけるという、
不気味な人間。


仲間が、殺そうとしている人間に激しい暴力を加えていると、
「僕にもやらせて、やらせて」とせがんだり、
ある意味、彼はまるで子供。
まだ善悪の判断が曖昧な子供が、
小動物をいたぶっているのと同じ感覚。
子供と違うのは、
そこに金が絡んでいるという事くらい。


そういう意味では、
リリー・フランキーは、
この役に最適かも(笑)。
いや、残忍な部分が、ではなく、
へラっとしたイメージや、
子供の部分を強く残しているっぽく見える所が。


これは実話だそうだ。
この世の中には、
人に知られていない殺人事件なんて
沢山あるんだろうなぁ、と、
これを観ているとつくづくそう感じる。


メインの話と並行して、
他人の知らない、藤井の私生活の、
めっちゃ重い事実も描かれる。
藤井は不器用で、
その事に対して、上手く立ち回る事ができない。
でも、あの問題は、
不器用を言い訳にしては駄目だと思う。
彼の態度や言葉一つで、
妻は救われるのに、それができない。
殺人事件とは別次元で、
それも大きな社会問題。


評価 ★★★☆☆

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「エリジウム」 [映画]

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〔2013年/アメリカ〕


2154年。
地球は環境汚染で荒廃し、
富裕層の人々は、
“エリジウム”と呼ばれるスペースコロニーに移住していた。


“エリジウム”では、
あらゆる病気が治療でき、
争いごともなく、清潔で、
気候も温暖。
理想郷ともいえる場所。


一方、地球に残っている貧困層は、
酷い暮らしに甘んじながらも、
上空に薄っすらと見える“エリジウム”を眺めながら、
溜息をつく日々。


そんな貧困層の1人・マット・デイモンは、
孤児で前科者。
今は、工場で働いている。


ある日、彼は、
工場で大量の照射線を浴びてしまい、
余命5日と診断されてしまう。


あらゆる病気が治る“エリジウム”に行けば助かる。
彼は“エリジウム”潜入に向けて動き出す・・・。





「またか・・・」という思い。
前にも書いたけど、
ここの所、映画の中での近未来は、
富裕層と貧困層が完全に分かれたものが、
本当に多い。


「TIME」、「トータル・リコール」、「ハンガーゲーム」、
そして、未見だけれど、
現在公開中の、
「アップサイドダウン」も、
そういった内容らしい。


そうなると、
自分は一体どちら側の人間なのかが気になるわ(笑)。
富裕層では絶対にないけれど、
貧困層というほどでもないしなぁ。
でも、“エリジウム”に行けるのは、
ほんの一握りのようだから、
やっぱり地球残留組だな(笑)。


でも、“エリジウム”ってそんなにいい場所なのか?
この世の楽園か?
治安がいい事だけは素晴らしいけど、
それ以外は、そう羨ましいとも思わない。
まぁ、観客にそう感じさせるように、
作られているんだろうけど。


あらゆる病気が、
医療ポッドに横たわるだけで治るんだけど、
じゃあ、ここにおける死は、
事故による即死か、
老衰しかないという事?
だって、手榴弾で顔が半分以上、
ぐちゃぐちゃになっても、
このポッドに入ると、
何事も無かったように治るのよ。


じゃあじゃあ、
たとえば、加齢による認知症などの、
脳や精神の病気も治せるって事?
いくら長生きしたって、
そのような症状が表れたら、
自分が辛いもん・・・
・・・・・・って、
そんな事、ここで聞いたって、
分からないけどさ(笑)。


マット・デイモンが“エリジウム”に行くのに、
頭蓋骨に直接、何かの装置を取り付ける。
他の映画でも、
そういった場面を観た事はあるけど、
その度に、「どひゃ~!」と思う(笑)。


ジョディ・フォスターが、
“エリジウム”の高官役を、
全く可愛げのない形相で演じておった(笑)。
大好きな女優さんだけど、
この役は好かん。


評価 ★★★☆☆

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「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」 [映画]

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〔2009年/日本〕


高校を中退し、
ニート歴8年の小池徹平は、
母の死をきっかけに就活。
不採用の連続であったが、
やっと小さなIT会社に合格する。


意気込んで出社した初日。
しかし、そこで働く面々は曲者揃いで、
会社の雰囲気は最悪。


大声で怒鳴るだけで責任感のないリーダー・品川祐、
品川の腰巾着でガンダムおたくの池田鉄洋、
情緒不安定な中村靖日、
社長の愛人と噂される、意地悪な経理のおばさん・千葉雅子。
唯一、真っ当そうなのは田辺誠一のみ。


品川と池田の嫌がらせや、
有り得ない残業時間に仕事量。
それらに耐えながら、
懸命に自力でプログラムを完成させた小池。


そんな彼が認められ、
次のプロジェクト限定でリーダーを任される事になる。
当然、品川はおもしろくないが、
田辺の機転で乗り越える。


その後も、派遣会社からやって来たマイコや、
早稲田卒で何かを企む田中圭などが入社、
その度に小池は振り回され・・・。





始まってから20分くらいまで、
何度も途中で観るのをやめようと思った。


仕事をしていれば、
辛い事が沢山あるのは分かってるけど、
とにかく品川祐の物言いが神経に触って。
彼は普通の話ができない男で、
会話はすべて罵声。
あんなんで、自分は楽しいんだろうか。


それ以外の面子は、
まぁ、変人ばかりではあるけれど、
耐えられないというほどではない。
慣れてしまえば、
その変人っぷりを楽しむ事もできそう。


田辺誠一の人柄に救われる。
彼は、何度も何度も小池を助けてくれる。
なんでそんな人格者が、
こんな会社にいるのかと、
小池も、観ている側も思うのだけれど、
彼には彼の事情があるようで。


お話しが進むにつれ、
小池も、そしてみんなも、
段々変わってきて、
面白くなってゆく。
現実はそんなに甘くはないんだけど、
でも、映画くらい夢を見ていたい。
途中でやめなくて良かった。


「ブラック会社」の定義はよく分からないけど、
ネットで皆さまの感想を読んでみると、
こんなもんでしょ、という意見が散見される。
仕事をするってのは、大変な事だ。


もともとは、
2ちゃんねるのスレッドだったらしい。
「電車男」と同じ。
読んだ事はないのだけれど。


評価 ★★★☆☆

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