「螢川」 [映画]
〔1987年/日本〕
昭和37年、富山。
中学3年生の水島竜夫(坂詰貴之)は、
幼馴染・辻沢英子(沢田玉恵)に、
仄かな恋心を抱いていたが、
自分の気持ちを持て余し、
悶々とした日々を送っていた。
竜夫の父(三國連太郎)は、
元は羽振りのいい実業家だったが、
今は家まで借金取りがやって来るくらい落ちぶれている。
人は、そんな父を、
運に見放されたのだと噂している。
竜夫は幼い頃、父から、
「4月に大雪が降った年は、川の上流に蛍の大群がやって来る。
それを一緒に見た男女は、結ばれる運命となる」という伝説を聞かされ、
それがいつまでも心に残っていた。
そして、その年の4月、
富山は大雪に見舞われた。
夏になったら、英子を誘って蛍を見にいきたいと、
密かに思う竜夫だったが、
父が脳溢血で倒れてしまい・・・。
宮本輝の“川三部作”の1本。
ちなみに、あとの2本は、
「泥の河」と「道頓堀川」だそうだ。
「道頓堀川」は観ていないので分からないけれど、
この「螢川」と「泥の河」だったら、
私は圧倒的に「泥の河」の方が好き。
この映画も悪くはないのだけれど、
主人公の中学生の男女が、
あまりに素人っぽすぎて、
セリフは棒読み、動きもぎこちなく、
感情移入がしにくい。
そこがいいという意見も多いようだけれど、
そんな2人が、
性の目覚めを仄めかすようなシーンを演じるのが、
私には生々しく感じられて、恥ずかしくて見ていられない。
近所の中学生の生活を見せつけられているようだ(笑)。
そんな風にしかこの映画を観られない私の心が
汚れてるんだろうけどさ。
私は宮本輝という人の事はよく知らないのだけれど、
「泥の河」も、この「螢川」も、
少年の両親の結婚のいきさつや、
子供好きで、男気ある父の性格が似ているような気がした。
ご自身の人生を投影された部分があるのだろうか。
竜夫が父の前妻と会い、
また別れるシーンが良い。
前妻は、
竜夫の父が、母と一緒になる為に捨てられたのだが、
母や竜夫を恨む様子はなく、
逆に、竜夫に何らかの感情を抱いているようだ。
子供のない彼女にとって、
それは、愛であり、悲しみであり、
なにか、言葉では表せない深い思いがあって、
見ているこちらも、
やるせなくてたまらなかった。
ラストの蛍の大群のシーンは、
合成らしいけれど、
雰囲気はよく出ている。
あそこまで凄くなくてもいいけど、
蛍の大群が出る場所があるなら、
私も見てみたい。
評価 ★★★☆☆