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「クロワッサンで朝食を」 [映画]

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〔2013年/フランス〕


エストニアで暮らす中年女性・ライネ・マギは、
離婚を経験し、
介護していた母を亡くし、
抜け殻のような状態。


そんな時、パリで家政婦の仕事をしないかとの
誘いを受ける。
若い頃、フランス語を習ったマギにとって、
パリは憧れの場所。
心機一転出直すためにも、相応しい場所に思われた。


仕事場である、高級マンションに行ったマギを待っていたのは、
我儘で気難しく、口を開けば毒舌ばかりの
老女・ジャンヌ・モローだった。
モローは、家政婦など必要ないとわめき、
マギを追い出そうとする。


マギの雇い主は、
マンションの近くにあるカフェのオーナー・パトリック・ピノーだった。
ピノーは以前はモローの若い恋人であったが、
今は彼女を持て余し、
面倒をみてくれる人間を探していたのだ。


モローの心無い言葉に傷つき、
一度は辞めようと思ったマギだったが、
モローの孤独な心に気付き・・・。





もっとコメディっぽいのかと思っていたら、
意外に暗かった。
「最強のふたり」の女版を期待すると、
ちょっと当てが外れる。


主役の女2人の孤独が圧倒的で、
悲しくなってしまう。
私の席の隣の女性は、
2・3回笑っていたけれど、
私は笑えなくて。
これはもう感覚の問題だから、
仕方ないんだけど。


ライネ・マギは、
エストニアから出てきて、
簡単に「帰れ」と言われても、
なかなかそうは出来ないのが現状。
知り合いもいないパリ。
異国で頼れる人もいないというのは、
どんなにか不安だろう。


でも、彼女の方はまだいい。
ジャンヌ・モローの孤独は、もっととても辛そうだ。


セリフの内容から、
モローも若い頃は派手で、
男にも不自由しなかったようだけれど、
逆にそれが、今になって、
孤独感を増す原因にもなっているように見受けられる。
パトリック・ピノーだけは、何かと世話を焼いてくれるけれど、
それは、モローのお金でカフェを持てたからという、
恩が含まれている事は否めない。


モローの昔の友人たちを、
マギが内緒で家に呼ぶ場面があるけれど、
これも最悪の結果に終わる。
年を取ったからと言って、
皆が全てを許して和気藹々というようにはならない。


そんなモローだけど、
やっぱりフランスの女は違う、と思わせるのが、
そのファッション。
一日中、お家にいるだけなのに、
いつも綺麗な服を着て、
パールのネックレスや指輪は必須らしい。


いや、逆に、
見てくれなんてどうでもいいわ、というくらいの
お婆さんだったら、
彼女もこれほど苦しまなかったかもと思うと、
そのオシャレが、とても痛々しいものにも見えてくるから、
不思議なものだ。


評価 ★★★☆☆

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「スタンリーのお弁当箱」 [映画]

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〔2011年/インド〕


インドの小学生・スタンリーは、
いつもクラスのみんなを笑わせている、
明るい少年。


ある朝、スタンリーは顔にアザを作って登校してくる。
生徒から大人気の美人で英語のロージー先生から
理由を尋ねられた彼は、
街で喧嘩に巻き込まれたせいだと答える。


その後、お昼休みの度に、スタンリーはなぜか教室からいなくなり、
水道の水を飲んだり、
ぼんやり柵にもたれたりしている。
両親が所用で数日出掛けているので、
お弁当を持ってこられないと言う。


クラスメイトたちは、そんな彼を見かねて、
自分たちのお弁当を少しずつ分けてあげる事にする。
みんなで車座になって食べる、
美味しいお弁当と、楽しいひととき。


一方、教師の中にも自分の弁当を持ってこない者がいた。
国語のヴァルマー先生だ。
彼は、生徒の弁当を、
自分が食べる気満々で狙っているのだが、
スタンリーのせいで、それが叶わない。


ストレスマックスに達した先生は、
「弁当を持ってこない者は、学校に来る資格はない!」と
スタンリーを怒鳴りつける。
傷ついた彼は、翌日から学校に来なくなってしまう。


実はスタンリーがお弁当を持ってこないのには、
重大な理由があったのだ・・・。





歌わない・踊らないインド映画という触れ込みらしい(笑)。
たしかに、登場人物たちは普通に会話して、歌はない。
挿入歌は多いけれど。


見どころは、生徒たちとヴァルマー先生との攻防。
この教師というのが、
理由は分からないけれど、
自分の弁当を持ってこず、
同僚の先生のお弁当を盗み食いするような、
最低のオッサン。


そして、
生徒の中でも金持ちっぽい、
比較的豪華な弁当を持ってきている子に目を付けるんだけど、
その子は、スタンリーにお弁当を分けてやりたい。


だから、仲良しグループ全員で、
ヴァルマー先生に見つからない場所で、お弁当を食べる。
すると、先生、
その場所を探し当てるのに必死(笑)。
大の大人が、
あんなにあからさまに人の(それも生徒の)食べ物を欲しがるって、
あんまり見た事のない光景なだけに、
笑えると同時に、なんだか見ているこちらの方が恥ずかしくて。


先生方や、生徒たちの持ってくる、
お弁当の中身がとっても興味深い。
それなりに豪華な人もいるけれど、
みんな結構質素で、
クラッカーのような物だけ、とか、
ナンのようなものだけ、とか、
そんな人も多い。
栄養のバランスとか、
そんな事は二の次のようだ。
日本は恵まれている。


生徒たちがみんな仲良しで、
ホッとできる。
ヴァルマー先生が嫌な奴で、
その上、生徒同士のいじめがあったりしたら、
観るのが辛くなってしまった事だろう。
先生一人が敵役だから、
この映画をコメディとして、安心して観る事ができる。


ところで。
ラスト近くで、
ロージー先生の新婚の夫というのが出てくるのだけれど、
その方というのがもう、有り得ないくらいのハンサムで!
セリフも何もない、ほんの数秒の出演なんだけど、
「何か喋らせてー」と心底願った(笑)。
こんな女、私だけかと思って、
念の為検索してみたら、
同じように思った方が何人もいらっしゃったようで、
嬉しかった次第。
(気が小さいので、仲間がいないと不安で(笑))
写真をアップしたいくらいだけれど、
それは探せなくて残念。


※その後、画像を発見しました。
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評価 ★★★☆☆

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「錆びたナイフ」 [映画]

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〔1958年/日本〕


西日本のある都市。
その町を牛耳る暴力団・勝又組の組長・勝又(杉浦直樹)が
殺人容疑で逮捕されたが、
市民は報復を恐れ、
証言に立つものは誰もいない。
それは日常茶飯事であり、
人々は怯えながらも、諦め顔だ。


そんな中、警察に、
「数年前に起こった西田市会議長の死は、
 自殺に見せかけた他殺だ」との、匿名の投書が届く。
そこには目撃者の3人、
橘(石原裕次郎)、寺田(小林旭)、島原(宍戸錠)の名前が記されており、
警察は色めき立つが、
島原は、なぜか電車から落ちて死亡する。


橘は、現在バーを経営しているが、
恋人を凌辱し自殺に追い込んだ男を刺した罪で、
刑務所に入っていた過去があった。


ある日、橘のバーに、
学生時代の友人と、その婚約者・啓子(北原三枝)がやって来る。
啓子こそ、亡くなった西田の娘であった。
また橘は、彼女の情報により、
恋人を凌辱した男は、
一人ではなかった事を知りショックを受ける。


さらに、寺田が勝又組と関わりを持ち始め、
怒りに燃える橘。
彼は勝又組を倒すべく、立ち上がる・・・。





なんだかすごい面子だよ。
殺人を目撃するのが、石原裕次郎と小林旭と宍戸錠って。
濃いわ(笑)。


この3人の芸能界でのランクというか、
そういった事を考えると、
お互いどういう気持ちで役を演じていたのだろうかと、
そんな事を考えながら観ていた。


石原裕次郎が日活の撮影所に初めてやって来た時、
その場にたまたま居合わせた宍戸錠と小林旭が、
石原の服装と振る舞いに仰天したというのは
よく聞く話だから、
2人は石原裕次郎より、芸能界では先輩という事になる。
(と思うんだけど、間違っていたらごめんなさい)


でも、この映画の中で、
小林旭は完全に石原裕次郎の舎弟扱いで、
石原のバーで働かせてもらっている感じ、
しかも、変な女と付き合っていることを、
石原から厳しく叱責されたりしている。


自分よりあとから入った石原が主役で、
二番手に甘んじている小林は、
どんな気持ちだったのかと。
まぁ、実力の世界だから、
仕方ないのは分かっていたんだろうけど。


もっとも、この映画の原作者は石原慎太郎。
そりゃあ、裕次郎が主役だよね。


石原慎太郎の作品って、
女の子を凌辱するとか、
そういった内容のものが多い気がするのは、
私の気のせいか。
それだけはどうしても好きになれない。


映画は、裏社会の組織と対峙する、
孤独な男の物語。
暴力団組織の裏には、
さらにもっと大物がいる。
単純な話だから、
観ていればそれが誰かはすぐ分かるんだけれど(笑)。


評価 ★★★☆☆

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「大いなる西部」 [映画]

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〔1958年/アメリカ〕


東部から恋人・パット・テリル(キャロル・ベイカー)に会いにやって来た、
ジェームズ・マッケイ(グレゴリー・ペック)は、
パットの家に向かう途中、
土地の荒くれ者たちから嫌がらせに遭う。


彼らはテリル家と長年の確執を抱える、
ハナシー家の息子たちだった。
両家は放牧牛の水飲み場「ビッグマディ」の権利争いで、
対立しているのだ。


ジェームズはパットと婚約するが、
パットの父・ヘンリー・テリルの考えに違和感を覚えた。
彼は争いを好み、
やられたらやり返すという方法で、
いつも相手を威嚇しているようだった。


父の考えに従うパットにも、
気持ちが冷めたジェームズは、
婚約を解消し、
「ビッグマディ」を買い取ろうと思い立つ。


「ビックマディ」の持ち主は、
地元の女性教師・ジュリー(ジーン・シモンズ)で、
彼女は両家の争いに、ほとほと嫌気が差していた。
どちらの家にも平等に水を与えると言う
ジェームズの考えに賛同したジュリーは、
彼に「ビッグマディ」を売る事を決める。


しかし、それを知ったハナシー家は、
ジェームズをテリル家側の人間だ思い、
水が完全にテリル家のものになると勘違いしてしまう。
ハナシー家の長男は、
ジュリーを誘拐し・・・。





大変に見応えのある西部劇。


善人だけの人間も、
悪人だけの人間もおらず、
勧善懲悪でもない。


そして、完全なる味方もいないけれど、
完全なる敵もいないという事を教えてくれる。
ハナシー家の主人だって、
最初は敵だと思っていたのが、
大変に男気のある人物というのが、
だんだん分かって来る。


グレゴリー・ペックが紳士で、
決して力で相手を捻じ伏せようとしない男を、
カッコよく演じている。
カッコよすぎて、
胡散臭いという感想を持つ方もいるようだが(笑)。


彼のような中立の人間がいなければ、
水飲み場問題は解決しないわけだから、
このキャラは絶対必要だろう。
簡単に買収されたり、
どちらかに極端に肩入れするような人間だったら、
この話は成立しない。


パットに惚れていて、
ジェームズに敵意を剥き出しにする牧童主を、
チャールトン・ヘストンが演じている。


グレゴリー・ペックとチャールトン・ヘストンって、
同じ映画に出る年代なんだと、ちょっと意外だった。
なんとなく、ペックの方がずっと年上のような
イメージがあったから。


ヘストンから売られた喧嘩も、
ペックは決して買おうとはしない。
2人が初めて対決したのは、
誰も見ていない平原。
ペックなどすぐに倒せると思っていたヘストンは、
彼の強さに驚く。


そしてヘストンは変わってゆく。
力で争うだけが能ではないと悟ったみたいだった。
そんな所も、
ただ単純に争うだけの西部劇とは違う、
良い場面。


監督は、「ローマの休日」の、
ウィリアム・ワイラー。


評価 ★★★★☆

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◆刑務所なう。◆ [本]


刑務所なう。

刑務所なう。

  • 作者: 堀江 貴文
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2012/03/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


堀江貴文氏が逮捕された時の事は
よく覚えている。


当時高校生だった、
知り合いの男子、
少なくとも3人が、めちゃくちゃ怒ったのが
すんごく印象的だったのだ。


これは直接聞いたわけではないけれど、
1人の子などは、
「不当逮捕だ!」と叫んでいたようで、
堀江氏が高校生にそこまで人気があったのかと、
ちょっと驚いたりもした。


受験を控えていた彼らにとって、
「東大」、
「起業家としての成功」などのアイコンは、
大変に魅力的だったのだろう。


で、この本。
堀江氏の獄中日記。


読んでいて、まずお腹が空いてくる。
なぜかって、
彼は毎日の日記の中に、
3食のメニューを必ず書き記しているのよ(笑)。


それがもう、
普段私が食べているものよりも、
ずっと質が良くて(笑)。
例えば、ある日の献立、
朝食・・・麦飯・味噌汁・金平レンコン・味付け海苔・
昼食・・・麦飯・魚のムニエル・ハムのミルク煮・ほうれん草ごま辛子和え
夕食・・・小豆ご飯・メンチカツ・茎にんにくとツナ炒め・にら卵とじ


上記のメンチカツなど、堀江氏絶賛(笑)。
なんでも、彼が収監された長野刑務所というのは、
全国でも1・2を争う、お食事の美味しい刑務所なのだとか。
刑務所に、そんな差があるとは知らなかった。
万が一、今後私が刑務所に入るような事態になった時は、
ぜひとも、長野に入れてほしいものだわ(笑)。


しかも、朝からきちんと食べているのに、
収監されて半年で、20キロも体重が落ちたそうだ。
やっぱり規則正しい生活がいいのだろうか。
あと、ジャンクフードを食べないからとか?
腸の調子も大変に良くなったようだ(笑)。


そして笑ったのが、
刑務所の中でも、
ダサい格好をしていると笑われるそうで、
スタッフが差し入れた、
ラクダ色の下着は二度とやめてくれと、
キレ気味だったというエピソード(笑)。
オシャレな人は、カラーコンタクトを付けているそうだ。


映画やテレビなども結構観られるらしくて、
その辺の話題も多い。
実際は辛い事も沢山あるだろうけれど、
そういった事はあまり書かれていないので、
規則正しい生活とか、
ダイエットとか、
映画の話題だけを読むと、
刑務所も悪くないかも、と思ってしまう(笑)。
(んな訳ないのは分かってるけど)


収監されたばかりの頃は、
落ち込む様子も見せていたけれど、
基本的にとても前向き。
落ち込み期が過ぎると、
仕事がしたくて堪らないようだ。


私の堀江氏の好き度は、10中6・7くらいだけど、
やっぱり、世に出てくる人はパワーが違うのねと、
そのあたりには感心する。


獄中日記の合間に、
時事問題への感想や、
スタッフ日記が挟まれる。
これも中々面白い。


深いものを期待するとガッカリするけど、
堀江氏の頭の中を覗くにはいい本かも。
ただ、普通の人はこうはいかないでしょうね。
優秀であろうスタッフが定期的に面会に来てくれるし、
著名人の面会も多い。
(2ちゃんねるの主催者・ひろゆき氏なども、
面会に行っては、堀江氏をからかっているようだ。
そのあたりは笑えるけど)
もし私が収監されたりしたら、
周囲の人は呆れかえって、
誰一人、来てくれない気がするわ(笑)。

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