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「DEAR WENDY ディア・ウェンディ」 [映画]

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〔2005年/デンマーク〕


アメリカの炭鉱町。
この町の殆どの男が炭鉱で働く中、
小柄で腕力の無い少年・ジェイミー・ベルは、
近所の商店の店員になる。


この町で炭鉱以外の仕事は負け犬と同じ。
ベルはどこか鬱屈した気持ちを抱えている。


ある日、ベルは黒人家政婦の孫・ダンソ・ゴードンの誕生祝いに、
玩具の拳銃を買う。
しかし、ゴードンが嫌いなベルは、拳銃をプレゼントするのを止め、
嫌がらせのように本を贈る。


ところが、玩具だと思っていたその拳銃が、
実は本物な事を、友人・マーク・ウェバーから指摘される。
急に、自分に力が付いたような錯覚に陥ったベルは、
銃に「ウェンディ」という名前を付け、愛おしく思うようになる。


そして、ウェバーをはじめ、
町の「負け犬」と呼ばれる少年たちと、
秘密グループ“ダンディーズ”を結成、
全員が銃を持ち、炭鉱の地下で練習に明け暮れる。
しかし、それはあくまでも遊びであり、
「人を殺してはならない」という、
自分たちで決めたルールは絶対に守っていた。


ある日、ダンディーズにゴードンが加入する。
不良がかった彼は銃の扱いに慣れ、
ダンディーズのメンバーを魅了してゆく・・・。





アメリカが舞台なのに、
デンマークの映画というのが面白いなと思ったら、
「ドッグヴィル」のラース・フォン・トリアー監督が脚本を手掛けたという事だ。


拳銃を手にした途端、
何か不思議な自信が体にみなぎるような感覚に襲われる、
ジェイミー・ベルの気持ちが、
とても上手く表現されていて、
なんとなく分かる、という思いに駆られる。


もちろん私は本物の拳銃を手にした事はないけれど、
「もしここに拳銃があったら」と妄想した事が、
一度も無いとは言えない。
今すぐは使わなくとも、
持っていれば、いざという時に役立つかもと思ったりもする。
「いざという時」ってどんな時なのか、
そんな時が実際やって来るのか、
それは自分でも分からないけれども。


ベルたち、ダンディーズのメンバーは、
不良ではないし、
むしろ、他の少年達より大人しめな面子と言っていい。
だから、銃を手にした途端、
「強盗しようぜ」みたいな流れにはならず、
「僕らは平和のために、この銃を所持するんだ」と言う。


けれど、観ているこちらにしたら、
彼らは一所懸命に、その言葉を自分に言い聞かせているように感じられる。
一度手にした銃はもう、
静かに眠ってはいない。
早く火を噴きたくて、ウズウズしているようだ。


ダンソ・ゴードンがダンディーズに加わり、
初めてウェンディを触った場面は、
変な言い方だけれど、
とても色っぽく、不思議な気持ちにさせられた。


ゴードンは、銃の扱いに慣れているらしく、
「ふーん」といった感じで、
ウェンディの弾を入れる所(名称が分からない)を開けたり回したり、
臆する様子はまるでない。


その場面を、ベルは、
「ウェンディが喜んでいるように見えた」と表現する。
女の子が、女扱いになれた男の子と接して、
喜んでいるような、そんな感じ。
私から見ても、
ウェンディは、ゴードンの手の中で輝きが増したような気がしたもの。


ラストはちょっとショック。


評価 ★★★☆☆