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「これでいいのだ!! 映画★赤塚不二夫」 [映画]

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〔2010年/日本〕


1960年代初め。
雑誌社・小学館の入社式に、
自身が描き出したキャラクター「イヤミ」の扮装で現れた、
漫画家・赤塚不二夫(浅野忠信)。
彼は新入社員にイヤミのポーズを要求し、
全員で実行する。
たった一人、それができなかった初美(堀北真希)に、
無理矢理ポーズを取らせようと手を取るが、
逆に思い切り殴られる。


こんな出会いではあったが、
赤塚は初美が気に入り、
自分の担当編集者に指名する。
少女漫画の編集を夢見ていた初美にとってはショックだったが、
嫌々ながら、赤塚の仕事場に出入りする事になる。


当時の赤塚の人気は絶大で、
彼の連載、「おそ松くん」は少年サンデー誌において、
支持率1位を独走していた。


赤塚は初美に、
「バカになれ」と何度も何度も言う。
アシスタントたちと彼女を連れ、飲み歩く先でも、
裸になり、コスプレし、暴れまわり、
これ以上はないほど、羽目を外すのが日常だった。


そんな中、
ライバル誌である講談社の「少年マガジン」に、
「天才バカボン」の連載を始まり、
絶好調を極める赤塚。
しかし、最愛の母が亡くなり、
アシスタントが独立した頃から、
人気に翳りが見え始め・・・。





全盛期をリアルに体感していなくとも
漫画家・赤塚不二夫さんの天才ぶりは知っている。
その作品のキャラクターを一度も目にした事がない人など、
いないだろうとも思う。


そんな赤塚さんの人生を描いた本作。
やはり面白いのは、
「陽」の部分より、「陰」の部分だ。
赤塚さんが明るいのは、
作風から容易に想像がつくけれど、
スランプに陥った姿は、
なかなか想像しづらい。


以前、赤塚さんの、
「変態しながら生きてみないか」という本を読んだ事があるけれど、
(この本の「変態」とは、さなぎが成虫になるとか、そういった意味です)
戦中・戦後のご苦労は並大抵のものではなかったようだし、
実は物凄く色々な事を考えている人なのだと知った。


だからこそ、赤塚さんの、
「バカになれ。悩んだって良い事は一つも無い」というポリシーに
重みを感じる。
そうだ、悩んだってなるようにしかならない。


赤塚さんが、あれほどのマザコンとは知らなんだ(笑)。
映画の中で、彼の妻は、
「私は生涯、彼の中で2番目だから」と言う。
愛人でもいるのかと思いきや、
1番目とはお母さんの事で、
その愛しっぷりには、驚くものがある。


ちょっと脱線するけど、
私は最近、タモリさんがとっても好きで。
今までずっと、たけし派だったけれど、
最近、やっとタモリさんの魅力にも気付いたといった感じ。


そんなタモリさんも、赤塚さんが見い出し、
育てたのは有名な話。
youtubeで、あらためてタモリさんの赤塚さんへの弔辞を聞いてみると、
その出会いと、お付き合いの内容がよく分かる。
「全ての出来事存在をあるがままに前向きに肯定し受け入れる」人だったと、
タモリさんが言っている。
やっぱり赤塚さんって、凄い人だったんだ。


評価 ★★★☆☆

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「メランコリー・ベビー」 [映画]

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〔1979年/フランス〕


スイスのルガノ湖畔の大邸宅で暮らすジェーン・バーキン。
ある日、夫が自宅に、
仕事仲間のジャン・ルイ・トランティニャンを招待する。
夫とトランティニャンの会話中、
なぜか眠り込んでしまうバーキン。


夫はいつも仕事で忙しく、
数日間は帰って来ない。
バーキンはトランティニャンを訪ねるが、
そこで彼の友人・ジャン・リュック・ビドーと知り合う。


ビドーは失業中で、
どこか自嘲気味な所があったが、
バーキンはそんな彼とデートする。
また、レストランの若いウェイターを誘ったりもする。


夫が帰ってくるが、
バーキンが不在だった事に不満げだ。
バーキンは日々の空しさを訴えるが、
夫は全く理解できないようだ・・・。





ラスト近くのジェーン・バーキンと夫との会話に
驚いてしまう。


元々、翻訳家だったバーキンは、
「また仕事をしたい」と夫に訴えるのだけれど、
なんと彼は、
「そんなはした金の為にあくせくする事はない」と突き放す。
はした金て(笑)。


さらに夫は、
「それは貧しい人の仕事を奪う事になる」と。
なるほどー、
それは一理あるかもしれない・・・
って、感心してる場合じゃないけど(笑)、
大金持ちには大金持ちの感覚ってものがあるのだと、
ちょっと納得してしまった。


バーキンは、
「私はお料理も嫌いじゃない、家政婦さんと一緒に家事がしたい」
みたいな事も言うのだけれど、それも却下。
一体この夫は、妻に一日、何をしていろと言うんだろう。


そういえば、冒頭の、
夫とトランティニャンの会話の最中、
バーキンが眠り込んだのも、
夫が彼女の酒に睡眠薬を入れたからだった。
夫はバーキンに、
「お仕事の話なんか理解できない、無知で無垢なお人形」で
いてほしんだろうなぁ。


全体の流れは他愛なくて、
退屈なバーキンの時間つぶしを見せられるだけなんだけど、
そのバーキンがあまりに魅力的なものだから、
退屈はしない。
本当に、あんな可愛い女に生まれた自分を、
彼女自身はどう思っているのだろう。
夫がお人形にしておきたい気持ちも、
ちょっとは分かるわ(笑)。


全く必要のない入浴シーンなどが入る。
やっぱりバーキンを観る映画(笑)。


ただ、ラストはちょっと鮮烈。
ある意味、胸がスッとする。


評価 ★★★☆☆

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「県庁おもてなし課」 [映画]

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〔2013/日本〕


高知県の県庁に、
観光客誘致を目的とした、
「おもてなし課」が発足する。


課員の錦戸亮は、やる気いっぱいで、
まずは観光特使を立てようと、
人気作家・高良健吾に依頼する。


高良は快く引き受けてくれたが、
その後の課の有り方に呆れ、
苦言を呈してくる。
「君たちに足りないのは、民間感覚だ」と。


そして、仕事を成功させるために、
・外部からの若い女性を一人雇う事
・以前、職員だった船越英一郎に意見を聞くこと
という2点をヒントとして与える。


錦戸は、他の課でアルバイトをしていた堀北真希を仲間に加え、
彼女と二人で、
現在は民宿を経営している船越に会いに行く。


ところが、船越の家の前で、
娘の関めぐみから、
いきなりバケツの水をかけられる錦戸。
関は、県庁に相当の恨みがあるらしい・・・。





全体的に緩い感じだけど、
高知県の良さだけは伝わってきた。


私は四国には行った事がないのだけれど、
(四国だけでなく、北海道にも九州にも行っていないけど(笑))、
高知といって、すぐ頭に浮かぶのは、
坂本竜馬と鰹くらい。


けれど、この映画では、
高知県の良い所が余すことなく伝わってくる。
とにかく自然が豊かで美しく、
山の緑と川の透明感には、
目を見張るようだ。


いつも思うのだけれど、
観光誘致って、痛し痒しだよね。
その土地土地の、美しい自然を保つには、
人が入り込まないのがよりベストなんだろうけど、
それでは地域としての収入が得られない。


そこで船越英一郎が考えたのが、
「高知県レジャー施設計画」。
高知県全体をレジャー施設にしてしまうという案。


「なるべく今ある施設を利用する事」と彼は言うし、
私もそれは一番重要なんじゃないかと思う。
無理に公園なんか作らずに、
今の形のままで観光客を呼び込めるなら、
それに越したことはない。


錦戸くんと堀北真希のコンビが可愛い。
なんとなく、互いに惹かれ合いながらも、
お仕事仲間という姿勢を崩さない、その感じ。
特に堀北の、
アルバイトという微妙な立場での葛藤が、
よく伝わってくる。


「民間感覚」って言葉が、
ずっしりとくる。
たしかに利潤の追求のないお役所のお仕事は、
一般に比べたら、焦りも少ない。
だからこそ、「民間感覚」に鋭くなければならないのだけれど、
実際に働いていると、なかなか難しいのかもしれないな。


評価 ★★★☆☆

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「お嬢さん」 [映画]

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〔1961年/日本〕


大手企業の部長の娘・若尾文子は、
平凡な人生では飽き足りず、
冒険してみたいと考えている女子大生。


家には父の部下である、
川口浩や田宮二郎らがしょっちゅう遊びに来ていて、
皆、若尾に関心があったが、
若尾は川口にほのかな思いを寄せていた。


ある日、若尾が、親友の野添ひとみと東京駅に出向くと、
川口が、芸者らしい女と別れ話で揉めているらしい場面に遭遇する。
ショックを受けた若尾は、
自分の誕生パーティの席で、
その事を川口に問い詰めるが、
逆にデートの約束をさせられてしまう。


デートの日、
川口は、ガールフレンドには不自由していないと若尾に話し、
若尾の目の前で10代の女の子をナンパし、
消えてしまう。
またまたショックを受ける若尾。


それでも、逢瀬を重ねるうちに愛し合うようになった若尾と川口は、
結婚する事を決める。
両親も大賛成で、とんとん拍子に話は決まる。


しかし、川口のガールフレンドの1人・仁木多鶴子だけは、
川口に強く執着しており・・・。





三島由紀夫が原作のラブコメディ。
三島がこんな軽いタッチの小説を書いていたのが意外。
「黒蜥蜴」とか、「金閣寺」とか、
そんなのばかりだと思っていたわ(笑)。


「私は平凡な人生なって真っ平」みたいな事を言う割に、
タイトル通りの、“お嬢さん”から一歩も出ていない若尾さん。
本気で冒険心のある女だったら、
親の家から、親の金で、大学なんて行っていないであろう(笑)。


若尾さんの妄想癖がすごくて、
その度に、バックは妄想用のセットになる(笑)。
妄想好きの私としては、嬉しい限り。


お話が停滞しないのがいい。
例えば、浩様との結婚話も、
もっとモタつくのかと思っていたら、
意外なほどスンナリと決まって、
次の場面は新婚旅行、みたいな(笑)。


野添ひとみの存在も大きい。
若尾の親友の彼女は、
心理学の本や、女性週刊誌から仕入れたネタから、
男女の心の機微を語ろうとする。
立場的には、若尾さんの引き立て役なんだろうけど、
彼女のポンポンとした、弾むようなセリフに笑ってしまう。


耳年増な割に、経験の少ない野添さんは、
若尾さんと浩様がキスしたと聞けば、
「キスしたの!? 2回も!?」と驚いたり、
新婚旅行の先にまで電話してきて、
「どうだった?」と尋ねたり。
すごい好奇心だわ(笑)。
実は彼女は田宮二郎に思いを寄せていて、
若尾さんの体験を踏襲して、
自分も田宮をゲットしようと狙っているのよ(笑)。


浩様と野添さんが結婚したのは、
1960年とあるから、
この映画では、すでに夫婦だったという事になる。
浩様が若尾さんといちゃいちゃする様子を見て、
野添さんはどんな気持ちだったのだろう。
お仕事だから仕方ないって感じ?(笑)
  

まぁ、私にしてみたら、
実生活にせよ、映画の中にせよ、
浩様と結婚できるなんて、羨ましい限りなんだけど(笑)。


評価 ★★★☆☆

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「わたしの可愛い人 シェリ」 [映画]

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〔2009年/イギリス〕


20世紀はじめのパリ。
ベル・エポックと呼ばれるこの短い期間、
高級娼婦たちは高い地位を誇り、
蓄財し、
優雅に暮らしていた。


その中の一人レア(ミシェル・ファイファー)は、
昔の仲間ブルー(キャシー・ベイツ)から、
19歳の息子シェリ(ルパート・フレンド)を預かる。
ブルーは放蕩息子のシェリを持て余していたのだ。


すぐ終わると思われたレアとシェリの関係だったが、
同棲は6年間も続いた。
親子ほどの年の差とはいえ、
互いの存在が居心地良く、
離れがたい関係になっていたのだ。


ところがシェリに縁談話が持ち上がる。
相手は19歳。
レアの衝撃は計り知れなかったが、
その気持ちを押し殺し、シェリを祝福する。


レアはプライドの高さから、
「新しい恋人と旅に出る」とブルーに言い残し、
姿を消す。
新婚旅行から帰ったシェリは、
レアの不在を知りショックを受ける・・・。





「同じ日に死にたいと思うほど、あなたを愛してきたわ」


これはレアがシェリに、
ラスト近くで言うセリフなのだけれど、
うわーって感じで、
思わず、普段はしないメモまでしちゃったよ(笑)。


同じ立場になった事はないけれど、
言いたい事はとってもよく分かる。
親子ほど年が違うとはいえ、
6年間も一緒にいた男女は、
そう簡単に「はい、さようなら」なんて、
できるわけがないものね。
まして2人は、喧嘩して別れるわけじゃないし。


シェリの結婚式の最中、
レアは自宅で声を押し殺して泣いている。
号泣でないのが、
逆になんとも切ない。
けれど、他人の前に出ると、
そんな様子はおくびにも出さないレアのプライドが、
またいい。


レアはとても美しいけれど、
それは、「その年にしては」ってだけで、
19歳の花嫁には絶対に勝てない。
放蕩者のシェリは、
別に若い女を求めているわけではないけれど、
(逆に、自分が女をリードするのは面倒臭そう)
レアとの関係は、
永遠に続けられるものでもないしね。


レアとブルーの関係がまた微妙で。
ブルーはレアに息子を預けるくらいの仲なのに、
それでいて、レアを憎んでいるような様子も見せる。
「私は全てを手に入れた。あと持っていないのは孫だけ」
みたいな事を言う。
そ、それだけは、
レアがどんなに頑張っても、どうしようもできない事じゃないか。
なんでそんな意地悪を言うかな。
女同士って、時に本当に残酷。


評価 ★★★☆☆

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