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「クロイツェル・ソナタ 愛と官能の二重奏」 [映画]

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〔2006年/スイス〕


乗り継ぎの飛行機の遅れで、
空港で足止めされた老人は、
手持ちぶさたな時間を埋めるように、
同じく飛行機を待つ若い男・ジョルジョ・パソッティに話し掛ける。


どこか暗い陰のあるジョルジョが、
自分の人生を語り出した。
自分は妻を殺した犯罪者なのだと・・・。


金持ちの母親に支配されるように生きてきたジョルジョは、
母が大株主である銀行に就職する。
順調な人生だったが、
ある日、彼は、広場でピアノを弾いていた、
ヴァネッサ・インコントラーダを見て、
一目で恋に落ちる。


温かい家庭を熱望していたジョルジョは、
知り合って一週間でヴァネッサにプロポーズ、
母親の猛反対を押し切って結婚する。


しかし、銀行家と音楽家の組み合わせは所詮は水と油、
最初から喧嘩が絶えない2人。
ジョルジョは、ヴァネッサの音楽に対する気持ちが理解できず、
彼女の交友関係にも、
入り切れずにいる。
それでも、3人の子供に恵まれ、
傍目には幸せそうに見える家族。


ある夜、
ヴァイオリニストの男と二重奏を奏でていたヴァネッサを見て、
ジョルジョの中で何かが弾け・・・。





今月は「アンナ・カレーニナ」を4本も観てしまったけれど、
この映画も、「アンナ~」と同じ、
トルストイが原作なのだそうだ。
別に狙ったわけじゃないけど、
勝手に一人でトルストイ月間(笑)。


原作は1899年出版だそうだけれど、
これは現代が舞台。
「アンナ~」もそうだけれど、
トルストイは、男女のドロドロを描くのが好きなのか?
・・・って、んなわけないか。
私じゃないんだから(笑)。


映画として、とても面白かった。
お金はあるけれど、
家族に恵まれなかった男が、
本物の家庭を築こうとするけれど、
結局は叶わなず、破滅に向かう。


そもそも、相手の事を何も知らないうちに結婚を決めるってのが
やっぱり駄目だったのかもしれない。
もちろん、それで上手くいっている夫婦も沢山いるけれど、
彼らの場合、境遇が違い過ぎる。
恋愛期間があれば、
そういった諸々の事が分かった上で結論が出せるのに。
ジョルジョは、ヴァネッサの友達にも会った事がないのだから、
やっぱり無理がある。


この映画のテーマは嫉妬。
ジョルジョの側からだけの、強烈な。
嫉妬するというのは、
それだけ、相手への執着があるという事。
ジョルジョは、自分に理解できない、
芸術の世界そのものにも、苛立っているようだ。


逆に、ヴァネッサは、
ジョルジョの銀行の仕事には、
まるで関心を示さないのが、
対照的で面白い。
飼い猫と野良猫の差と考えたら分かり易い。


ジョルジョは母を嫌っているようだけれど、
母がそれほど悪い人間だとは、私には思えなかった。
ヴァネッサとの結婚だって、
最初は反対したけれど、
結婚式の日には、
家宝のネックレスをヴァネッサに付けてあげたりしている。
とても良い場面だと思ったな。


ジョルジョにだって、
「寒いから、コートを着なさい」とか、
とっても気遣っているのよ。
それでも、上手くいかない。
人間って難しいね。


評価 ★★★★☆

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