「イン・ディス・ワールド」 [映画]
〔2002年/イギリス〕
パキスタンの難民キャンプで暮らす、孤児ジャマール。
「この地にいても未来はない」と言う伯父の考えから、
ジャマールは従兄のエナヤットと2人、
ロンドンへ旅立つ事になった。
しかし、費用の高い空路は使えない。
陸路を行くしか選択肢がなかったが、
それは時に、死も免れない危険な旅でもあった。
怪しげなエージェントに金を払い、
彼らは出発した。
しかし、バスで検問にあい、
国境まで戻されてしまう。
エナヤットが隠し持っていた金を使い、
もう一度、ロンドン行に挑戦した2人。
色々あったが、今度はトルコまで辿り着いた。
貨物のコンテナに隠れ、
船に積まれた。
ここを乗り切ればイタリアだ。
しかし、思いもかけない過酷な運命が、
彼らを待ち受けていた・・・。
パキスタンからロンドンまで、
陸路を行くのは、
死を覚悟する事、との説明に、
最初はピンとこなかった、
平和ボケした自分が嫌になる。
観ているうちに、
その理由がハッキリ分かってくる。
亡命するというのが、
どれほど過酷で難しい事かが。
考えてみれば、
これが北朝鮮からの亡命者に置き換えれば、
すぐ理解できる事なのに。
もしくは、
映画で何度も観ている、
南米からアメリカへの密入国などを思い出しても。
映画は、フィクションのような、
ドキュメンタリーのような、
どちらともつかない感じで進んでゆく。
なので余計にリアル。
この映画の監督は、
不法入国しようとして、
コンテナの中で58人もの中国人が死亡した事件に
衝撃を受けて、この映画を作ったそうだ。
なるほど、リアルなのは、
実話の部分も多いからなのか。
さらに、主役を演じた少年は、
この映画の為に取得したイギリスのビザで、
本当にイギリスに定住してしまったそうだ。
ただ、18歳の誕生日の前日までには、
パキスタンに戻らねばならぬと、
最後にテロップが流れていた。
この地球上の人間は、
基本的に、生まれた国で運命が決まる、
生まれた国から逃れるのは容易ではないと、
痛感させられた映画。
評価 ★★★☆☆