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「無法松の一生」 [映画]

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〔1943年/日本〕

明治30年。
北九州小倉の人力車夫・無法松(阪東妻三郎)は、
喧嘩っ早い暴れん坊だが、
男気溢れる、憎めない人間。


ある日、彼は怪我をした小学生、敏雄(長門裕之)を
助けた事がきっかけで、
敏雄の両親・吉岡小太郎とよし子と懇意になる。


吉岡家に出入りするようになった無法松だが、
小太郎が急死、
以来、彼は、よし子と敏雄を支えるようになる。


よし子は、内気な敏雄を案じていたが、
敏雄は無法松の豪快な性格に触発され、
活発な青年へと成長してゆく。


進学の為、小倉を離れ、
下宿する事になった敏雄は、
夏休みに教師を伴って帰省。
無法松と3人で祭り見物に出かけた際、
本物の祇園太鼓を聞いてみたいという
敏雄と教師の願いから、
飛び入りで山車に乗り、
その腕前を披露するのであった・・・。





やっぱり「無法松の一生」はいい。
以前、三船敏郎版「無法松」のレビューを書いたけれど、
この、阪東妻三郎版は、
三船版の15年も前に作られた作品だ。


1943年といえば、
戦時中だというのに、
こんな映画が作られていた事に驚く。


ただ、その戦時中というのが災いして、
この映画は検閲により、
カットされたフィルムしか現存しないという事だ。


しかし、カットされているのに、
これだけ感動できるのだから、
この映画の凄さが分かる。
考えてみれば、テレビ放送される映画だって、
カットされているのだから、
それほど問題はないのかもしれない。


敏雄の運動会で、
自由参加の競技に無法松が飛び入る場面が、
最初のクライマックス場面で、
観ているこちらまで、本気で応援してしまう。


本気で無法松を応援する敏雄の姿に、
よし子は涙する。
「この子が我を忘れて、何かに夢中になったのは初めてだ」と。
それって、昨日レビューした、
「ベルヴィル・ランデブー」のおばあちゃんの気持ちと
通じるものがあって、
またまた共感してしまった。


内気な子供が、
何か夢中になれるものを見つける様子は本当にいい。
周囲の者は安心するし、
何より、その子供にとっても、
幸せな事だろうと思う。


そして、本当のクライマックスである、
祇園太鼓の乱れ打ちの場面。
この映画は、俳優を選ぶ。
男気溢れる俳優でないと、
まったく可笑しな作品になってしまう。
そういう意味で、阪妻はハマり役だ。
彼はまるで無法松そのもの。
太鼓を叩く、その力強さに見入ってしまう。


三國連太郎版、
勝新太郎版も観てみたいけど、
検索してもソフトは出てこない。
名画座にでもかかるのを待つしかないか。


評価 ★★★★★

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