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「みなさん、さようなら」 [映画]

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〔2013年/日本〕


マンモス団地に住む濱田岳は、
小学校の終わりに、
「僕は一生団地の中だけで生きてゆく」と決める。


小学校時代の友達107人は、全員、団地の子で、
団地の中には、あらゆる小売店があり、
別に困る事はない。
就職だって団地の中のケーキ屋さんと決めているし、
ここから一歩も出なくても、
絶対生活していける。
濱田はそう言う。


濱田は中学には通わず、
自宅で大変に規則正しい生活を送る。
朝起きて、独学で勉強して、
空手の練習をして、
夜は、団地のパトロール。
全てが欠かせない日課だ。


初体験も、恋も、団地の中で済ませる。
相手はどちらも、小学校時代の同級生。
時には、ヤンキーと一緒に、
他の地区のヤンキーとの喧嘩の助太刀までする。
濱田の空手は結構強い。
彼が師と仰ぐのは、大山倍達。
指一本で猛牛を倒したという、
伝説の空手家だ。


年月が経つにつれ、
団地の友人は減っていく。
家族で引っ越したり、
進学や就職で出て行ったり。
それでも彼は、団地から出ない。
そこには大きな理由があって・・・。





途中で、腕時計を見てしまった。
いや、つまらないとか、飽きたとか、
そんなんではなく、
私の心にズーーーんときて、
辛すぎて、辛さから逃れたくて、
早く終わってほしいと、ちょっと思っちゃって。
ズーーーんときたのは、
心だけでなく、胃にもだったようで、
ちょっと吐き気まで覚えてしまった。
少なくとも、私には、心身に変調を起こさせるくらいの
映画だった事は間違いない。


私は、濱田岳が、団地から出ない理由を、
彼なりの拘りというか、
勝手に自分の流儀を通しているものだと最初は思っていた。


でも違ってた。
そこには、めっちゃ重い理由があったんだ。
それはある意味、
小学校時代の仲間全員が、
分け合うべき痛みで、
だから小学校時代の仲間は、
団地から出ない彼を奇異の目で見たりはしないし、
母も強く優しく、彼の人生を認めている。


同窓会が団地内の集会所であった時も、
もっとちゃんとした場所で開催されない事に、
誰も文句は言わない。
ヤンキー同士の決闘だって、
わざわざ団地内の広場に、相手を呼ぶ。
みんな濱田に合わせてくれる。


しかし団地は、
お決まりのコースを辿るように、
少しずつ寂れてゆく。
空き室が目立つようになり、
外国人居住者が増えてくる。


そして、新たに、
濱田が子供の頃には考えられなかったような問題が、
起こってくる。
濱田は、問題解決の為に懸命になるのだけれど、
そこの場面もまた、大変に辛くて、
ますます落ち込んで、胃が痛くなる。
何でそんなに影響受けてんだ、私は。


濱田岳はとても好きな俳優。
この映画の彼は、
団地から出ないという事以外は、
とても真っ当で、常識ある人間だと思う。
奇異に見える行動も、
その理由が分かれば、変だとは思わない。


すごく重くて、
でも、濱田の演技のおかげで、
ちょっとコミカルで。
本当に観て良かった。


評価 ★★★★★

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