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「アルバート氏の人生」 [映画]

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〔2011年/アイルランド〕


19世紀のアイルランド。
ダブリンのホテルで、長年住み込みでウェイターとして働く
アルバート・ノッブス氏(グレン・クローズ)には、
重大な秘密があった。


実はアルバートは、男装した女性なのだ。
悲しい過去を抱えたアルバートは、
独り孤独に生きてゆく道を選んだが、
この時代、女が身を立てる事は考えられず、
男として生きるほかなかった。
彼女は自分の為に、
コツコツと金を貯め、
それを床下に隠す事が楽しみだった。


ある日、ホテルのマダムは、改装工事にやってきた、
塗装職人ヒューバートを、
一晩アルバートの部屋に泊めるよう、
アルバートに命じる。
断り切れず受け入れたアルバートだが、
ヒューバートに女だという事を見破られてしまう。


何としても周囲に秘密を知られてはならない。
アルバートはヒューバートに、
絶対、この事を漏らしてくれるなと懇願。
するとヒューバートも、
ある秘密を打ち明けてきて、
2人は親しくなってゆく。


一方、アルバートの同僚でウェイトレスのヘレン(ミア・ワシコウスカ)は、
最近、ボイラーマンとしてホテルに雇われたジョー・マッキンス(アーロン・ジョンソン)と
恋に落ちる。
ジョーは野卑な男だったが、
恋に夢中のヘレンは、それには気付かない。


ヒューバートの生き方に触発されたアルバートは、
以前から好意を抱いていたヘレンをデートに誘うが、
それを知ったジョーは、
「アルバートをその気にさせて、金品を貢がせろ」と
ヘレンに命令。
ヘレンは彼の言いなりになり、
アルバートとの逢瀬を重ね・・・。





時間的にちょうど合うのがこの映画しかなく、
なんとなく観たのだけれど、
(ごめんなさい)
とても良かった。
本当に映画って、観てみないと分からない。


元々は舞台劇だったものを、
映画化した作品らしい。
今まで、グレン・クローズは、
好きでも嫌いでもなかったけれど、
なんだか見直した気分。
この役で、去年のアカデミー賞主演女優賞に
ノミネートされている。
なぜか今頃になって、日本に入ってきたようだけれど、
たとえ遅くても、公開されて良かった。


貧困と辛い過去から、
男として生きる道を選んだアルバートの、
孤独な人生が心に染みる。
何の楽しみもなく、
唯一の生き甲斐は、小金を貯める事だけ。


仕事を終え、一人で部屋に戻ってから、
もらったチップを丁寧に床下にしまい、
ノートに合計額を記す彼女。
私が彼女の立場だったら、と想像すると、
分かる、とっても。
一人ぼっちで、頼る人もなく、
性別まで嘘を吐いて仕事をしているのだもの、
最後はお金だけが頼りなのでしょうね。
そういった細かさは、
さすが、外見は男性だけど、女性っぽさ溢れる場面。


スクリーンを眺めながら、
「神様、どうか彼女のお金が何者かに盗まれたり、
 騙し取られたり、
 ホテルが火事になったりしませんように」と、
祈るような気持ちでいたよ。


アルバートの孤独な感じに対して、
ヒューバートの潔い、男前な感じがまたいい。
彼は自分のしたいように生きている。
アルバートがそんな彼に影響されるのは当然だ。
彼も秘密を抱えているけれど、
でも、とても幸せそうなのだ。


ヘレンを演じたミア・ワシコウスカの、
可憐な、そして若さゆえの我儘な感じがいい。
彼女は、大人から見ると絶対付き合ってはいけない
タイプの男と恋に落ちる。


でも、たとえ、ジョーと知り合っていなくても、
アルバートの気持ちを受け入れたかは疑問。
アルバートを女だと思ってはいなくても、
あまりにも年が違いすぎる。
アルバートが彼女に付き纏いすぎると、
若い娘がお爺さんからストーカーされているという
図になりそうだ。


そんなこんなで、彼女のラストはとても悲しかった。
アルバート、可哀相だよ・・・。


評価 ★★★★☆

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