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◆血脈 上中下◆ [本]


血脈〈上〉

血脈〈上〉

  • 作者: 佐藤 愛子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2001/01
  • メディア: 単行本



血脈〈中〉

血脈〈中〉

  • 作者: 佐藤 愛子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2001/02
  • メディア: 単行本



血脈〈下〉

血脈〈下〉

  • 作者: 佐藤 愛子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2001/03
  • メディア: 単行本


佐藤さんの本はかなり読んでいると思うのだけれど、
この「血脈」は、なかなか手が出ないまま、
出版されて10年以上も経ってしまった。


なにせ長い(笑)。
650ページ以上の本が3巻。
この本に取り掛かる時は、
ゆっくりと、次のかたの予約を気にせずに読みたかった。
そして、それは結果的の正解だった。
3冊読むのに2か月かかった。
本は2~3冊並行して読む事も多いけれど、
これは途中で違う本を交えたくなかった。
少しでも間が空いてしまったら、
そのままになってしまいそうな気がして、
じっくり、けれど一気にいきたかった。


物語は、
佐藤さんの父である、小説家・佐藤紅緑が、
まだ佐藤さんの母・シナと出会う前から始まる。
紅緑には妻も子も、愛人までいたが、
シナに激しく恋した彼は、
シナに全パワーを傾ける。


世間ではシナを、妻子ある紅緑を奪った悪い女のように
言っているけれど、
シナは生涯、紅緑を愛した事はなく、
しかし、紅緑の人並み外れた「荒ぶる血」に、
押し流されるように、運命を共にする。


紅緑の4人の息子は、
長男で、後に詩人になるサトウハチローを筆頭に、
それはそれは、
ここでは書き切れないような、
放蕩の限りを尽くす。


佐藤愛子さんは、よくエッセイの中で、
ご自分の一族を「荒ぶる血」、
そして、自分の異母兄の行状を、
「不良」と書いておられるが、
「不良」というその語感から、
私は、ちょっとヤンチャな男の子くらいにしか思っていなかった。
けれど、実際はそんなものではなく、
その壮絶とも言える「不良」っぷりに驚いてしまう。


あとがきで、佐藤さんは、
「暴露小説を書くな」とお叱りを受けるのではないかと恐れたそうだ。
確かに、
サトウハチローなどは、
「小さい秋みつけた」の歌詞や、
詩集「おかあさん」の内容から、
大変に優しく、思慮深い人と思いがちで、
ファンも多い。
現実の彼とのギャップには驚く人も多いだろう。


佐藤さんが生まれる前や、
幼い頃のお話しは、
どこか手探りな感じがあるが、
佐藤さんの二度目の結婚から、
元夫の借金を返すあたりになると、
文章がエキサイトしているように感じられる(笑)。
佐藤さんの小説を読んだかたなら、
その理由もお分かりでしょう(笑)。
あの一連の出来事は、
きっと今でも、佐藤さんの心を奮い立たせるのに
十分な経験だったに違いない。


あまりに長くて、
ここで細かなエピソードを一つ一つあげる事は難しいが、
今まで佐藤さんが書かれていた、
家族についての断片が、
一つにまとまって、
「なるほど、そういう事だったのね」と、
ものすごく腑に落ちる内容。
濃い2か月であった。

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