「みんな元気」 [映画]
〔1990年/イタリア〕
シチリアに住むマルチェロ・マストロヤンニは、
イタリア国内の様々な場所に住む5人の子どもを
アポ無し訪問しようと考える。
まず最初に、ナポリに住む息子の家を訪ねるのだが、
息子は留守だ。
何度留守電にメッセージを入れても、
まるで返事がない。
旅行にでも行ったのだろうか。
諦めて、次の子どもの所へ行く。
ローマで議員秘書の息子をしている息子は、
忙しそうで、マストロヤンニの相手をしている時間は
無さそうだ。
フィレンツェでモデルの仕事をして
大活躍だというの娘は、
立派なマンションに住んでいるが、
なぜか、友人の赤ちゃんを預かっている。
ミラノで打楽器奏者として働いている息子は、
近々、演奏旅行に出ると言う。
しかし、息子の態度はどこか虚ろで、
真実を話しているのか、分からない。
トリノで家庭を築いている娘。
孫と会話したマストロヤンニは、
ある秘密を打ち明けられ、当惑する。
最後に、自分と子供たち全員で食事をしようと、
レストランを予約するが、
現れたのは2人だけ。
そしてそこで、マストロヤンニは、
驚くべき事実を知らされる・・・。
「ニュー・シネマ・パラダイス」の、
ジュゼッペ・トルナトーレ監督のロードムービー。
親が子どもたちを訪ね歩く物語というと、
以前、こちらで書いた「ハリーとトント」や、
名作「東京物語」、
そして、最近観たばかりの「東京家族」などが
思い出される。
と、そう思っていたら、
やはりこの映画、
監督が「東京物語」に影響を受け、
作られた作品なのだそうだ。
しかし、残酷さはこちらのほうが強い。
ジャケット写真とは全然違う。
親子でも他人でも、
できれば避けてほしいアポ無し訪問。
それを決行する老人。
ここからもう、内容は薄々想像がつく。
子どもは親の期待通りに育つとは限らない、
そんな当たり前の事実を、
目の前に突き付けられる。
マストロヤンニは、
子どもが幼い頃、
厳しく、期待をかけすぎていた様子がセリフで分かる。
だから、子供たちは本当の事が言えない。
子どもたちだって、
とりあえずは、自分の稼いだ金で生きている。
そう、めちゃくちゃ最悪の人生というわけではないだろうに、
それでも、父親の前で取り繕う。
「育てたように、子は育つ」という言葉を、
どこかで聞いた事があるけれど、
こんな風に取り繕わなければならない関係になってしまった事が、
悲しい。
「身の丈に合った生活でいいんだよ」と、
教えてやる事も大切だと、強く感じる。
邦題がめっちゃ皮肉。
主人公は、残りの人生を、
シチリアで静かに過ごすのが一番だと、
悲しいけど、そう思う。
評価 ★★★☆☆
「テッド」 [映画]
〔2012年/アメリカ〕
1985年。
友だちのいない孤独な少年ジョンは、
両親から、クリスマスプレゼントに、
縫いぐるみのクマをプレゼントされる。
ジョンはクマに“テッド”と名付け、
生涯の親友である事を願う。
その思いが強過ぎたのか、
テッドに魂が宿り、動き出す。
テッドは一躍有名になり、
一時はテレビでレポートされたりもするが、
騒ぎもおさまり、
その後は、ジョンと成長してゆく。
27年後。
35歳になったジョン(マーク・ウォールバーグ)は、相変わらずテッドと仲良し。
可愛いクマだったテッドも、中身はすっかりオッサンと化し、
麻薬を覚え、女が大好き。
そんなジョンにも4年も付き合っている恋人ローリー(ミラ・クニス)がいる。
女心が今一つ分からないジョンは、
ローリーとの、次の段階に踏み出せずにいる。
ローリーは、自分とジョンとの間に、
何かと割り込んでくるテッドに我慢ができず、
「テッドと自分のどちらを取るのか」と、ジョンに迫り、
テッドは一人暮らしをする事になる。
しかし、幼い頃からの縁は、そう簡単に切れるはずはなく、
テッドの呼び出しに応じてしまうジョン。
その事で、ローリーとの仲は決裂寸前。
さらにそこに、テッドが誘拐されるという事件が起こり・・・。
これは笑った。
縫いぐるみのクマちゃんが主人公というと、
可愛いファンタジーを思い浮かべるけれど、
このテッドは不良中年そのもの(笑)。
どこの場面というより、
全体に小ネタが満載で、
(それも私が好きな系の(笑))
何から書いていいのか分からないくらい。
大麻を吸ったり、
コカインで鼻のあたりに白い粉を付けたり、
デリヘル嬢を呼んだり・・・って、
下品な事、この上ない(笑)。
可笑しいのは、
テッドが普通に人々の中に存在して、
スーパーのレジ打ちに雇われたりしちゃうところ。
同僚のレジ打ちのおねーさんに目を付けて、
倉庫で関係しちゃう場面まである。
これじゃ、R15なはずだわ(笑)。
何より、一番気に入ったのは、
この作品が、映画への愛情でいっぱいな所。
テッドとジョンは自堕落な生活の中で、
DVDばかり観ているようなんだけれど、
そのせいで、映画のタイトルがセリフの中にめっちゃ出てくる。
特にジョンは、「フラッシュ・ゴードン」に
特別な思いを寄せているらしくて、
テッドの家で行われたパーティで、
「フラッシュ・ゴードン」の主役の俳優さんが来ていると知って、
もう、居ても立ってもいられず、
ローリーに内緒で行ってしまう。
あぁ、分かるよ、その気持ち。
憧れの映画スターが、
親友のおうちに来たりしたら、
私だったら、全ての約束を反故にして、
駆け付けてしまうよ。
残念なのは、私は「フラッシュ・ゴードン」を未見な事。
失敗作と言われているらしいけど、
絶対近々観なければ、と心に誓う。
名脇役・トム・スケリットの名前が、
なぜか何度も出てきて、
最後に本人が出演したのが、とても嬉しかった。
私は一時彼にハマって、
出演作を連続して観た事があったから。
渋くて、大好きだった。
こんなクマちゃんが実在したら面白いのに。
続編ができるといいなぁ。
評価 ★★★★☆
「LOOPER ルーパー」 [映画]
〔2012年/アメリカ〕
2044年。
この時代、まだタイムマシンは開発されていなかったが、
その30年後には完成しているらしく、
未来から、殺したい人間が送られてきては、
この時代で始末されていた。
始末する人間は“ルーパー”と呼ばれ、
未来から人間が現れた瞬間、
撃ち殺す事になっており、
その仕事は正確だ。
腕利きの“ルーパー”ジョゼフ・ゴードン・レヴィットは、
今日も、送られてきた人間を始末すべく、
準備して待つが、
やって来たのは、なんと30年後の自分。
ほんの一瞬、銃撃をためらった隙に、
未来の自分に逃げられてしまったレヴィットは、
必死に彼を探す。
任務を遂行できない者は、
組織に殺されてしまうのだ。
やっと見つけた未来の自分だったが、
彼がこの時代にやってきたのには、
理由があった・・・。
劇場で、ずいぶん前から宣伝されていた、この映画。
予告から察するに、
ジョゼフ・ゴードン・レヴィットの未来の姿が
ブルース・ウィルスらしく、
「そ、それってどうなのよ」と思いながら(笑)、
ちょっと楽しみにしていた。
観終わってから調べたら、
レヴィットがウィリスのお姿に近付くべく、
特殊メイクを施したとか。
特殊メイクというと、
モンスターとか、極端に太った人とか、
そういったものを思い出すけど、
実在する人間の顔に近付けるなんてのもあるんだなと、
ちょっと感心。
レヴィットが少しずつ年を重ねてゆく過程を、
早送りで表す場面では、
髪が減ってゆくというのが、なんとも可笑しい。
ほんの一瞬の場面なんだけど、
コメディじゃないのに、笑かしてどうすんだって感じで。
基本はSFなんだけど、
途中からオカルトっぽくなって、
ちょっと混乱した。
5歳くらいの男の子が、
とんでもない力を発揮するんだけど、
それが怖くて。
それからタイムトリップに付き物の、
パラドックスにも混乱する。
未来の自分を殺しても、
今の自分には影響はないけど、
でも、今から30年は確実に生きる自分が消えるって、
どうなのよ、とか、
考え出すと、もう駄目。
私の能力では限界があるわ(笑)。
評価 ★★★☆☆
「ベスト・キッド4」 [映画]
〔1994年/アメリカ〕
戦友の未亡人から家に招かれたノリユキ・パット・モリタは、
事故で両親を亡くし、
心を閉ざしてしまったヒラリー・スワンクを預かる事になる。
スワンクは、学校の屋上で内緒で飼っている鷹だけが、
唯一の友人であり、慰めでもあった。
学校では、特定の生徒たちで構成された
自警団が幅をきかせており、
スワンクはリーダー格の男子から目を付けられてしまう。
しかし彼女の心は、
心優しい男子・クリス・コンラッドに向けられ、
2人は互いに惹かれあってゆく。
ある出来事から、スワンクの抜群の運動神経を見抜いたモリタは、
彼女に空手を教える事になる。
自警団から嫌がらせをされ、
停学になってしまったスワンクを、
モリタは人里離れた寺院に連れてゆき、
そこで空手の特訓をする。
素直で明るい少女に戻ったスワンク。
コンラッドからプロムに誘われ、
初めてドレスアップして出掛けるが、
また自警団から嫌がらせを受け、
立ち向かう事になる・・・。
シリーズ4作目。
シリーズが進むにつれ、
どんどん評価が落ちていっているようであるが(笑)、
これはそんなに駄目とは思わなかった。
3作目までの主人公、ラルフ・マッチオは出てこずに、
今度は女の子が空手を教わるというのが、
気分も変わって、とてもいい。
その空手の練習のというのが、
車のワックスがけというのは、
まるで変っていないけれど(笑)。
その女の子・ヒラリー・スワンクが、
まだ若くて可愛い。
特徴ある口元は、このころから。
それに彼女って、思いの外グラマーなのね。
男っぽい印象しかなかったから、
なんだか意外な気がして、羨ましかった(笑)。
忘れてるだけかもしれないけど。
ノリユキ・パット・モリタとの関係も、
本当の祖父と孫娘みたいでいい感じ。
モリタは、スワンクに内緒で、
プロム用のドレスを買いに行くシーンがある。
慣れないブティックで、
店のマダムに、スワンクの特徴を説明する、
しどろもどろな感じが、とても可愛かった。
モリタがスワンクを連れてゆく寺院の、
日系人のお坊さんたちが有り得なくて(笑)。
ダンスしたり、ボーリングしたり。
彼らが念じると、
ガーターでもストライクが出るらしい(笑)。
誰でも修行すればそうなれるかも。
評価 ★★★☆☆
「オールド・ルーキー」 [映画]
〔2002年/アメリカ〕
幼い頃から、父の転勤でアメリカ中を渡り歩いたジム・モリス。
ジムは野球が大好きだったが、
今度の転勤先のテキサス州の田舎町は、
フットボールが盛んで、野球をする者は殆どいなかった。
35歳になったジム(デニス・クエイド)。
今は、高校教師となり、
生徒に化学を教えながら、
学校の弱小野球チームの監督をしている。
美しい妻と、可愛い子供にも恵まれ、
それなりに幸せだ。
学生時代、一度はメジャーリーグに指名されたが、
肩の故障で夢破れ、
プロ入りは諦めたのだ。
しかし、今でも、その気になれば150キロ以上の
剛速球を投げられる自信はある。
学校のチームは、万年最下位に甘んじていたが、
ジムの指導でめきめきと力を付けてゆき、
ついに、念願だった地区優勝を果たす。
生徒たちは言った。
今度は先生が夢を叶える番だと・・・。
35歳にしてメジャーリーグの選手になった、
元教師・ジム・モリスの実話だそうだ。
ディズニーが制作したようで、
子供から大人まで楽しめる。
まず、冒頭からワクワクする。
ジムが住む、テキサスの町というのが、
実はとても野球に縁が深い場所という事が、
ちょっとしたお伽話のような形で描かれる。
次に、ジムの子供時代に入るんだけれど、
ここはとても辛い場面。
ジムの父親は、転勤で塞ぐジムの心を完全無視の、
冷めたい男だ。
あぁ、でも、大人になった私には理解できる。
このお父さんの気持ちも。
お父さんだって、本当は辛いんだよね。
息子が、その土地のリトルリーグで活躍していて、
引っ越しをとても悲しく思っているのは、
分かりすぎるくらい分かっている。
でも、仕事だから、
自分が働かなくちゃどうにもならないから、
分かっていても、気付かないフリしてるんだよね、きっと。
おそらく性格的に、優しい言葉をかけられないのだろうし、
父とはそういうものだという時代の人というのもあるだろうし、
そもそも、どんな言葉を尽くしても、
現実は変わらないと考えているのかもしれないし。
・・・と、勝手に父の気持ちを推測してみた。
もしかして、本当にただ単に冷淡な人だったのかもしれないけど(笑)。
高校の弱小チームが勝ち上がっていく様子が、
またいい。
思わず、「よっしゃ!」とか独り言が出ちゃったよ(笑)。
スポーツは苦手だけど、スポーツ映画は大好き。
野球は、ドラマがあっていい。
そして、いよいよプロテスト。
35歳で150キロを出す男に、
スカウトたちは驚く。
みんなの、目が点になる様子が可笑しくてたまらないし、
自分の事のように、誇らしいような気持ちになる。
なかなかいい映画だった。
みんながみんな、彼のようになれるわけじゃないけど、
こういう人もいるんだ、って思えるだけで、
励みになりそうな気がする。
評価 ★★★★☆