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「コミック雑誌なんかいらない!」 [映画]

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〔1985年/日本〕


「キネカ大森 名画座2本立て Vol.021」で観た。
今週の出し物、
「コミック雑誌なんかいらない!」と
「水のないプール」は、
チラシにもあるように ↓ 、
女優・片桐はいりさんが、
初めて出演した映画と、
初めてもぎった映画なのだそうだ。


そういうイベントの一環なのでしょうか、
なんと、チケット売り場では、
片桐さんご本人が、
普通に映画館の館員さんのように、
働いておられて、ビックリ!


生で見る片桐さんは、
映画のイメージよりずっと素敵で、
それに、何かとても、
“真っ当な人”という印象を受けた。
凛としていて、想像以上に細くて綺麗。
とても嬉しい気持ちになれた一日でした。

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木滑(内田裕也)は、激しい突撃取材が人気の芸能レポーター。
今日の彼のターゲットは女優の桃井かおり。
彼女の熱愛発覚により、
なにかコメントを取ろうと、成田空港まで追いかけるが、
完全無視される。


神田正輝との結婚を間近に控えた松田聖子の自宅前に張り込み、
門扉の脇の電柱に登って、
警察に捕まったりもする。


彼の狙いは芸能人だけではない。
“ロス疑惑”の三浦和義氏の経営するバーに、
開店前だというのに無理矢理入って行き、
三浦氏から、酒を浴びせられる。


山口組と一和会の抗争では神戸に乗り込み、
ピリピリした空気の中、強面のヤクザたちにもマイクを向けるという、
命知らずな事までやってみせる。


しかし、そんな無理な取材には苦情も多く、
テレビ局は彼を、夜の風俗産業のレポーターに格下げしてしまう。


そんな中、木滑は、近所の老人が金の先物取り引きで、
2,000万円の虎の子を支払ったと聞く。
不審に思い、その会社を独自に調べ始める木滑。
テレビ局で取り上げて欲しいと懇願するも認められず、
しかし、彼の勘は当たり、
自殺者まで出すほどの社会問題に発展してゆく・・・。





なんて面白いんだろう。
何度も笑った。
何が私の心をそんなに刺激したのか分からないけれど、
とにかく面白かった。


実在の人物・事件を内田裕也がレポートしてゆくという流れは、
確かに映画としての態をなしてはいないのかもしれないし、
その内田裕也のセリフは棒読みで、
なんだか素人くさい。
でも、ターゲットにマイクを向ける彼の言葉と行動がいちいち可笑しくて、
クスクス笑ってしまう。


ターゲットになった人々の個性も映し出される。
言葉が上手くない木滑に対して、
例えば、三浦和義氏の饒舌な事ったら。
次々と口から言葉が飛び出して止まらない。
三浦氏の事件は、「劇場型犯罪」と言われたそうだけれど、
本人のキャラを見ると、
そう言われるのも分かる気がする。
おそらく三浦氏には、ある種のスター性があるのだろうと思う。


外出先から車で帰った松田聖子は、
大勢のレポーターに囲まれるが、
マネージャーに抱きかかえられながらも、
絶対に笑顔を絶やさない。
流石、大物アイドル。
その時、内田裕也は彼女に向かって、
「生まれ変わっても神田さんと一緒になりますか?」と
何度も浴びせるように聞く。
もちろん聖子さんは無視だけれど。


ラブホテルで殺された女子中学生の葬儀に
突撃した場面も強烈だった。
泣いている母親に、
「お嬢さんが売春していた事は有名だったそうですね」と、
傷口に塩を塗り込むような物言いでマイクを向け、
遺族からつまみ出される。
大変に不謹慎な場面なのだが、
人々の覗きの欲求を満たしてやっていると言わんばかりの
彼は、その姿勢を変える事はない。


内田裕也の表情があまり変わらないので、
彼が何をもってして、
レポーターの仕事に体を張っているのかが、
よく分からない。
仕事が好きそうにも見えないし、
正義の味方でもないし、
人気者になりたいという感じでもないし、
他人を覗き見たいという欲望もなさそうだ。


だからといって、
嫌々やっているというのとも違う。


彼には、
感情がまるで無いようにも見える。
「仕事だから」
ただそれだけ。
だから、彼の行動に対する解釈は、
観る者によって、大きく変わる気がする。


1985年の大きな出来事は、
この映画を見れば、大体分かるような感じ。
豊田商事の会長刺殺事件の場面では、
ビートたけしが、舎弟を連れて、
会長の部屋に押し入る役を演じている。
その場面だけは、体が震えそうな衝撃を感じた。


評価 ★★★★☆

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