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「一人息子」 [映画]

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〔1936年/日本〕


1920年代。
信州で暮らす飯田蝶子は、
勉強のできる一人息子がこのまま小学校だけで終えるのは惜しいと、
担任教師、笠智衆から言われ、
東京の学校に出す決心をする。


十数年後、
彼女は初めて東京で暮らす息子を訪ねる。
生活を切り詰め、学費を捻出してきた飯田は、
息子がどんなに立派な人間になったか期待していたが、
彼は夜間高校の教師になっており、
想像していた息子とのギャップにガッカリする。


しかも、息子は、いつの間にか結婚し、
子どもまで生れていたのだ。


飯田を精一杯もてなす息子夫婦だったが、
彼女の心は晴れず、
夜、息子の職業に関して、つい愚痴を言ってしまう。


ところが翌日、
隣に住む小学生が馬に蹴られるという事件が起き・・・。





小津安二郎監督の初のトーキー映画という事だ。


息子が夜間高校の教師となり、失望する母、という設定だが、
まず、なぜ教師という仕事にガッカリするのかを理解できなければ、
この映画は楽しめない気がする。


私は、「高校の先生の何が悪いの?」というクチなので、
なんだかよく分からない。
そんなに駄目か?
お給料は少ないかもしれぬが、
立派な職業じゃないか。


「低め安定」、「平凡」こそ、何よりと思っている私には、
この息子は最高に思えるのだが。


息子のお嫁さんというのがまた、
めちゃくちゃいい人なのだよ。
彼女は東京見物する姑の為に、自分の着物を売ってくる。
しかも夫に内緒で!
その金を夫にそっと差し出す姿に、
心を打たれるよ。


飯田が田舎に帰ったあとも、
「お母さん、喜んでくれたかしら」と本気で心配してるし。
こんないい嫁を選んだ息子を誇りに思わなくちゃ、
それこそバチが当たる。


そうそう、それより、笠智衆の方がショックだった。
彼は、信州にいる時、
大変に志高く、「私も東京で勉強するつもりです」と飯田に話し、
息子と同時期に上京する。


しかし、飯田が息子に伴われて彼の家に行くと、
以前あった、燃えるような熱意はすっかり失われ、
落ちぶれている。
私にはこちらの方が心配だったよ(笑)。


評価 ★★★☆☆

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