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「震える舌」 [映画]

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〔1980年/日本〕


渡瀬恒彦・十朱幸代夫妻は、
ある日、幼い娘の異変に気付く。
激しい痙攣を起こし、舌を噛み、
口の中は血だらけなのに、口が開けられないと言う。


驚いた両親は、救急車で病院に駆け込む。
当初は心因性のものと考えられていたが、
大学病院で詳しい検査をすると、
娘は破傷風に罹患している事が分かる。


すぐに入院するが、
刺激は厳禁。
少しの音や光にも反応し、
何度も激しく痙攣する娘。
成すすべもない両親。


医師たちは懸命に治療にあたるが、
事態は好転しない。
さらに両親までもが、
睡眠不足と疲れ、心労から、
精神の均衡が危うくなってくる。


家族に再び笑顔が戻る日はくるのか・・・。





噂に聞いていたようなホラーな印象は、
私はそれほど受けなかった。
「エクソシスト」なんかを見慣れているせいかもしれないけれど。
それより、もしかしたら、
まだ医学が発達していない時代に、
破傷風の患者を見た人が驚いて、
「悪魔に取り憑かれた」と、
思ってしまうこともあっただろうなと感じる。


なにせ、痙攣が激しく、
背中を強く反らせるせいで、
背骨が折れてしまう事さえあるという。
自らの力で背骨が折れるって、
どんなに怖ろしい事か。
実は今これを書いている事さえ怖ろしい。


興味深いセリフがあった。
「まだ地球に酸素も無かった時代から、
 破傷風菌は存在していて、
 今は地中や水中に隠れている」と。
(破傷風菌は、酸素には滅法弱いそうだ)
病原菌って、生物の歴史より古いんだと初めて知り、
そうなるともう、SFの世界だと、ちょっと脅威に思う。


渡瀬恒彦が、瀕死の娘に向かって、
「助けてやれなくてごめん。
 俺はもう、子どもは作らない。
 生涯、お前だけを愛して生きてゆく」というセリフに、
涙が出たな。
もしかしたら、それは一時の感情で、
この先、生きていれば、
また子どもを欲しくなる日が来るかもしれないけれど、
その時の、その感情に嘘はないだろうと。


娘に噛まれた指から、
自分も破傷風菌が入ったのではと思い込む両親。
唾液から感染するなど有り得ないと、
いくら説明されても、その考えに固執してゆく。
家族が病気になるって、どれだけ辛い事だろう。
娘役の女の子の迫真の演技も凄かった。


評価 ★★★☆☆

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