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「至福のとき」 [映画]

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〔2001年/中国〕


中国、大連に住む失業中の中年男チャオ・ベンシャンは、
3度目の結婚をしたくて焦っている。
今回の見合い相手ドン・リーファンは、
太っていて、性格も悪いが、
文句を言ってはいられない。
ベンシャンは彼女のアパートに行く。


するとそこに、
リーファンの前夫が置いていった盲目の娘、ドン・ジエがいた。
ジエは、リーファンと彼女の息子に辛く当たられていたが、
いつか父親が迎えに来てくれる日を信じて耐えているのだ。


リーファンに、「旅館を経営している」と嘘をついていたベンシャンは、
「あなたの旅館でジエを働かせてやってほしい」とリーファンに頼まれ、
嫌われたくない一心で、安請け合いしてしまう。


ジエを預かったはいいが、
困り果てたベンシャンは、
廃屋になっている工場の隅っこに小さな部屋を設え、
「ここでマッサージの仕事をしろ」とジエに言う。


お客はベンシャンの友人たち。
ジエはマッサージが上手いと、皆喜ぶ。
金の無い彼らは、
紙をお札大に切って、それをジエに渡す。
別に騙すとか、そんな気持ちではなく、
それが彼らに出来る、精一杯の優しさなのだ。


しかし、そんな事が長く続くわけもなく、
少しずつ綻びが生じてくる。
ジエの運命はどうなるのか・・・。





チャン・イーモウ監督の、“幸せ三部作”の一つ。
「あの子を探して」はあまり好きではないが、
「初恋の来た道」は大好き。
そして、本作もとても良かった。


なによりも、盲目のドン・ジエに接する時の、
チャオ・ベンシャンが素晴らしい。
最初は、ドン・リーファンを逃したくない一心でした事だったが、
次第に彼は、ドン・ジエに対して、
本当の父親のような情が湧いてくる。
ベンシャンは、ジエがシャワーを浴びても、下着姿でいても、
邪な気持ちは全く抱かない、
ものすごく真っ当な男だ。


さらに良いのが、ベンシャンの友人たち。
彼らは、ベンシャンに頼まれ、
全くの損得無しで、彼に協力し、
マッサージの客に成りすます。
おじさんだけでなく、
一人、おばさんも混じっているのが、物凄く良い雰囲気。
もちろん彼らにも、邪な気持ちは全く無い。


これはある種のファンタジーなのだろう。
盲目の少女に対する、人々の優しさ、親切な心。
世の中の人みんながそんな風だったら、
まさしく、世界はタイトル通りの「至福」なのに。


こう書くと、とてもシリアスな内容かと思われそうであるが、
ジャンルはコメディだ。
結婚に必死になるベンシャンも、
太ったドン・リーファンも、
マッサージのベッドの作りまで、全てが可笑しくて楽しめる。


評価 ★★★★☆

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