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「波影」 [映画]

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〔1965年/日本〕


新文芸坐で観た。

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娼館を営む乙羽信子の家に、
ある日、親類の女、若尾文子がやって来る。
大抵の女が、金で売られてくるこの商売だが、
若尾は、自ら望んで働きたいとやって来たのだ。


借金もない上に、働き者の若尾は、
乙羽やその夫からの信頼も厚く、
他の娼妓からも好かれていた。


乙羽には、中村嘉葎雄と大空真弓の二人の子供がおり、
特に大空は、
優しく、気立てのよい若尾に惹かれ
夏休みには、若尾の故郷に付いてゆくくらい、
彼女を慕っていた。


中村は家業を激しく嫌い、
軍人になるのだと、入隊するが、
大怪我をし、足を引き摺るようになって帰ってくる。
その後は、乙羽との口争いが絶えず、
その度に、仲裁に入る若尾。
しかし中村は、思い余って自宅に火を付けてしまう。


女学校に通う大空は、教師になる事を夢見ており、
就職先もほぼ決まりかけていたが、
兄の放火事件により、
内定は取り消し、
さらに、家業の事まで知られてしまう。


大空が教師になる事は、
若尾を夢でもあったが、
それを絶たれた若尾の失望は大きかった。
娼館は立て直されたが・・・。





原作は水上勉の同名小説。
水上勉の小説は、
今数えただけで、17本が映画化されているが、
そのうちの3本を若尾さんが主演している。
地方の薄幸な女を描く事の多い水上文学と、
若尾さんのイメージが合っているのだろう。
他の2作、
「雁の寺」と「越前竹人形」は大傑作だと思う。


本作のストーリーは平凡だが、
若尾さんが実にいい。
一点の曇りもないような、真っ直ぐで明るい性格。
誰にでも分け隔てなく接するその姿は、
見習うものがある。


実は若尾さんは、中村嘉葎雄に惚れており、
戦争で心も体も傷ついて、
自暴自棄になっている彼を、
賢明に励ます。
母親の乙羽信子でさえ投げ出した彼を、
若尾さんは決して見離さない。


優しかった若尾さんを偲ぶ大空真弓が、
彼女を回想するという作り。


評価 ★★★☆☆

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◆ドラマティック・ノート◆ [本]


ドラマティック・ノート

ドラマティック・ノート

  • 作者: 森 瑶子
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1989/04
  • メディア: 単行本

森瑶子さんらしい短編集。
各小説のタイトルに、香水の名前が付けられ、
内容も、その香水が重要なアイテムとして使われている。


これが出版された1989年といえば、
まさしくバブルの真っ只中。
森さんの、その短い小説家としての人生は、
バブルと重なるところがあり、
勿論この本にも、
金持ちで、オシャレで、そしてどこか物憂げな女が、
出てくる。


香水の他にも、
ホテル・カフェバー・毛皮、そしてジゴロなどの
アイコンが満載。


私が気に入ったのは、
オチが面白かった、「アンフィニ」と、
妻が14歳の少女と夫との関係を疑う、「ニキ」。
(これは、私が森さんの小説の中で一番好きな、
 「浅水湾(リパルスベイ)の月」に通じる所があるので)


ここに出てくる香水の、全ての匂いをかいでみたくなる事必至。


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