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「愛の砂丘」 [映画]

ainosakyu.jpg
〔1953年/日本〕


湘南の辻堂駅の近くに、
相沢聴一(滝沢修)と、歩(高島忠夫)父子が、
引っ越してくる。
聴一は体が弱く、
生活は、
サラリーマンの歩の稼ぎに頼っている。


一方、近所で暮らす田島家は、
主の要と、妻の秋子、
年頃の娘・薫(島崎雪子)、
就職活動真っ最中の息子・要一郎(和田孝)の
4人家族。


ある日、秋子に会った聴一は驚く。
2人は28年前、恋人同士で、
結婚の日取りまで決まっていたのに、
聴一の実家が破産したせいで、
泣く泣く別れた経緯があるのだ。


歩と薫は、いつしか親しくなり、
結婚を夢見るようになる。
秋子は、
かつて自分が味わった、
辛い思いを
子どもたちにさせたくないと願い、
2人の恋愛を喜ぶ。


聴一も、大変に喜んだが、
体の弱い自分がいては、
息子たちの邪魔になってしまう。
何とか2人を結ばせてやりたいと考えた聴一は・・・。





二重の意味で、
素晴らしい作品だった。
一つは映画として。
それから、私個人として。


まずは、映画。
心安らかな気持ちになる。
登場人物全員がいい人で、
人を傷つけたり、
嫌な気持ちにさせたりする人がいない。


互いが互いを思いやり、
みんなが親切で、優しい。
私は「綺麗事」など嫌いだけど、
これは「綺麗事」ではなく、「綺麗」。
だから感動する。


近所に引っ越してきた事がきっかけで、
知り合い、
愛し合うようになった歩と薫。
けれど、歩の家は、
決して裕福とは言えず、しかも病身の父がいる。


一方、薫の家の生活向きは、
豊かそうで、
さらに、エリートとの見合い話が
何件もあるらしい。
この、一見、不釣り合いな二人の恋愛は、
描き方によっては、
いくらでもドロドロしたものにできるだろう。
でも、そうはならない。


薫が母・秋子に、
歩との事を打ち明ける場面が大好き。
母は反対するどころか、
それはそれは嬉しそうに娘の話しを聞く。
あぁ、なんて聡明な母なんだ。


薫の弟・要一郎。
彼は、就職のことで頭がいっぱいだ。
ちょっと鬱々としている。
そして、試験に落ちてしまい、
母の優しさが申し訳なくて、
海岸で一人、泣いている。


そして、そこで、
聴一とバッタリ会う。
その時、なんと、聴一も泣いていた。
聴一は、病院の帰りで、
ついさっき、重い結核だと診断されたのだ。
息子の重荷にしかならない、
不甲斐ない自分に涙を流している。


家族を思いやるがゆえに、
二人の男が、海で共に泣く。
それだけ聞くと、女々しいようだけれど、
決してそのような事はない。
素晴らしい場面だった。
さらに、その後の聴一の決断に、
胸が締め付けられる。


次に、
個人的に、この映画を素晴らしいと思う理由は、


先日、書いたけれど、
私が以前住んでいた事のある、
辻堂が舞台になっているから。

https://aomikamica.blog.so-net.ne.jp/2019-03-24


辻堂の景色が何度も映る。
1953年頃の辻堂って、
こんなだったんだ、と、
目を凝らして観てしまう。


辻堂駅もバッチリ映る。
「つじどう」と書かれたホームの駅名表示板の所で、
薫たちが会話する。
昔の辻堂駅が見られるなんて、
本当に嬉しい。

tsujido.png


こちらは、現在の辻堂の駅名表示板

IMG_3327 - コピー.JPG



何度も出てくる海は、
江の島の位置や距離からいって、
辻堂海岸で撮影している事は間違いなく、
このような映画がある事に驚いたし、
記録として素晴らしい。


タイトルの「砂丘」が大袈裟過ぎるのが
ご愛敬だけど(笑)。


評価 ★★★★☆

nice!(153)  コメント(16) 
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コメント 16

きよたん

昔の辻堂駅が見られるなんて
やはり映画は貴重
青山さんの思い入れのある辻堂なので
ひとしおですね

by きよたん (2019-03-28 17:11) 

kinkin

辻堂は自分にとっても、馴染みがある駅ですね。
by kinkin (2019-03-28 17:43) 

Flatfield

辻堂だけにしょうなん(そうなん)ですかー。
しょうなんですねー。\(^▽^)/
by Flatfield (2019-03-28 21:47) 

英ちゃん

1953年頃の辻堂か~
貴重な資料にもなるね。
by 英ちゃん (2019-03-28 23:58) 

あおたけ

ゆかりのある辻堂が舞台の作品なのですね(^^)
むかしの駅名標は味があってシブいなぁ。。。
左が茅ケ崎方向ということは、
この駅名標の背景のあたりが
いまのテラモですね(笑)
by あおたけ (2019-03-29 06:50) 

さくら君

先日、江ノ島水族館に行った流れでちょうどこの界隈をフラフラしておりました。今は建物だらけですが昔はこんなだったんですね~(^^)
by さくら君 (2019-03-29 11:04) 

Ginger

漢字の「綺麗」、素敵です♡
by Ginger (2019-03-29 12:06) 

裏・市長

すごいな。
ちがさき→つじどう→ふじさわ→たかだし…、
と書いてある、駅名カンバン。
で、現在のカンバン。

半世紀前、確実にここでこの人々が、
撮影して、この作品がつくられた・・・。
そう思うと感慨深いなぁ・・・。

タイトルはある程度、「盛って」おかないと。
誰も観に行かんがな。

「砂粒」より「砂場」、
「砂場」より「砂丘」やろ?。

ただの市長より「裏」をつけることで、
いかがわしさと、いやらしさが倍増するやろ?。
人生、そんなもんや。

by 裏・市長 (2019-04-02 01:02) 

青山実花

きよたんさん
コメントありがとうございます。

映画は、撮っているその時は、
それほど何とも思わないのでしょうけれど、
あとになると、本当に貴重な記録になりますね。

辻堂が見られて嬉しかったです^^

by 青山実花 (2019-04-13 19:29) 

青山実花

kinkinさん
コメントありがとうございます。

もしかしたら、毎日ご通勤で、
通過されていたのでしょうか^^

by 青山実花 (2019-04-13 19:29) 

青山実花

Flatfieldさん
コメントありがとうございます。

しょうなんです^^
辻堂はとってもいい所です^^

by 青山実花 (2019-04-13 19:29) 

青山実花

英ちゃんさん
コメントありがとうございます。

自分が生まれる前の映像に知っている街が出ると、
きょろきょろしちゃいますね^^

by 青山実花 (2019-04-13 19:30) 

青山実花

あおたけさん
コメントありがとうございます。

ほんと、こう駅名標は、
撤去せずに、そのまま残してほしかったです。

私も、「あ、向こうがテラモだ!」と思いながら
観ていました。
今や、辻堂は、
テラモ抜きでは語れませんね^^

by 青山実花 (2019-04-13 19:30) 

青山実花

さくら君さん
コメントありがとうございます。

辻堂は今でものんきな街ですが、
昔はもっともっとのんきだったのでしょうね^^
建物も、今よりずっと少なかったのだろうと想像します^^

by 青山実花 (2019-04-13 19:30) 

青山実花

Gingerさん
コメントありがとうございます。

「綺麗」って、綺麗な文字ですよね^^

by 青山実花 (2019-04-13 19:31) 

青山実花

裏・市長さん
コメントありがとうございます。

昔のカンバンと今のカンバンを比べると、
隔世の感がありますね。

86歳の裏・市長さんが、
このころ、辻堂に住んでおられたら、
この映画にエキストラで出演できたのに、と思うと、
残念でなりません。


裏・市長さん、
いくら何でも「砂丘」では規模が小さすぎて、
辻堂の凄さが伝わってきませんわ。
ここはやはり、「砂漠」とタイトルしていただかないと。
「辻堂砂漠」といえば、
サハラ砂漠より大きい事で有名なんですから。

by 青山実花 (2019-04-13 19:31) 

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