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「父と暮せば」 [映画]

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〔2004年/日本〕


終戦から3年が経った広島。
被爆者の宮沢りえは、
図書館で働きながら、
質素に生きている。


宮沢の父・原田芳雄が、
ある日、突然現れる。
原田は原爆で死んだのだが、
宮沢が心配でならず、
幽霊となって出てきたのだ。


宮沢は、図書館の利用者・浅野忠信に恋をしている。
浅野も同じ気持ちでいる。
しかし宮沢は、
浅野のアプローチを
なぜか受け入れない。


原田はそんな宮沢が歯痒くてならない。
「幸せになってほしい」。
それだけが原田の願いなのに・・・。





私が宮沢りえの父だったら、
彼女を殴っていると思う。
いや、暴力は良くない、
良くないのは分かってる。
でも、これじゃあんまり・・・。


宮沢りえは、
原爆で、
家族や、友人が死んでいった中、
自分だけが幸せになるのは絶対ダメだと思っている。
いつも心にブレーキをかけている。


父を助けられなかった自分や、
親友の母から言われた本音が頭に残り、
生きている事の罪悪感に苛まれ、
苦しんでいる。


「なんでなんでなんで。
そんな考え方をしては絶対にいけない」。
私の心は、最後までこの言葉でいっぱい。
原田も言葉を尽くして、
宮沢を説得するのだけれど、
彼女は意外と頑固。


私は被爆者の方の苦しみや悲しみを、
本当の意味で理解できるわけではないけれど、
そんな、宮沢りえのような考えを
天国にいる沢山の方々は喜ぶはずはない、
それだけは分かる。
生き残った者が全員幸せになる事、
それが日本人に残された使命ではないか。


最初は、宮沢りえが、
被爆した事での、
健康面での不安や、
生まれてくる子供への影響を怖がっているのかと
思っていたのだけれど、


浅野忠信は、そんなこんなの全てを
2人で乗り越えてゆこうと言ってくれていると言う。
だったら、尚更!
あー、やっぱりビンタして、肩を揺さぶって、
目を覚まさせたい。


ネットで、多くの方のの感想を読ませていただくと、
全体の評価はかなり高いけれど、
中には、
戦争や原爆、そしてアメリカに言及されている方もおられる。
確かに日本人は大人しいというか、根に持たない。
この映画だって、
生き残った自分を責めても、
原爆を落とした側を責める言葉は一度もない、というか、
そんな事、思いも付かないようだ。


もう、難しい事はどうでもいい。
ただただ、親が我が子の幸せを願う。
それだけの視点で、私はこの映画を観た。


評価 ★★★★☆

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コメント 6

green_blue_sky

日本人らしい姿ですね。
宮沢さん、歳を重ねていくと、良い役を演じているので、この映画見たくなります。
原田さんが幽霊役とは(^_^;)
これも面白そう。
by green_blue_sky (2017-04-09 21:04) 

yonta

彼女の中では、3年経っても戦争は終わっていない。
ということなのでしょうね。
戦争や災害などで大勢の方が亡くなると、この宮沢りえのように
生き残ったことが申し訳ないと思ってしまう方が、
少なからずいらっしゃるようで、その気持ちもわかる気がします。

もちろん、青山さんのおっしゃるように、
そんなこと思ってはいけないし、
父親を含め、亡くなった方たちも幸せを願っているはず。
彼女にそれが伝わっているからこその、
罪悪感なのかもしれないですね。

3000℃の、音より速い爆風なんて、あんまりです。
主人公も、親友のお母さんも、幽霊になった父親も
誰も悪くないのに…

広島弁が温かくてかわいらしい響きなのが救いでした。
by yonta (2017-04-10 22:10) 

裏・市長

宮沢りえが原爆を落とした訳じゃないのに、
自分を抑えつけて生きておる。
でも、こうしないといられないのよ。
すべてに申し訳なくて。

戦争で亡くなった人は気の毒。

でも、生き残ったほうも
「自分は助かったバンザイ!」
ではなく、「生き残ってしまった」という
罪悪感を抱き続けた人も多かったろうな。

日本人って真面目なのよ、基本的に。
勝負に勝っても、
喜びを表現しない事が美徳とされる。

あれって、おっかしいよな。
同じスポーツでも野球でホームラン打ったら、
球場大盛りあがり選手は両手をあげて
笑顔でベースに戻って来る。

でも、相撲取りが小さくガッツポーズをしただけで、
問題視されてヘタしたらバツをくらっちゃう。

やっぱりアレよ。
思ってるだけじゃダメなんよ。
言葉で伝えなきゃ伝わらないこともあんのよ。

皆が皆、テレパシーを会得してないのよ。
もっともボクはあの砂の嵐に普段は隠された
バベルの塔に赴き、バビル2世より
直接指導を受けた身なので、
ある程度の能力は持っているけれど。

最近、トシのせいかテレパシー能力も
衰えてきて、なんだか面倒くさいので
言葉で伝えるようにしています。

最近も言いましたけど。

天丼屋さんでも忘れずに言いました。
「大盛りで!」と。
これ言い忘れると普通盛りが出て来るの。
当たり前だけど。

言い忘れたと気付いた時の残念無念感。
だっておんなじ値段だぜ?値段変わらないんだぜ?!。
大盛りだろうよ!。


by 裏・市長 (2017-04-11 01:46) 

青山実花

green_blue_skyさん
コメントありがとうございます

日本人らしく、
相手を責めず、自分を責める・・・。
とてもいい映画でした。

最近の宮沢りえさん、いいですよね^^

by 青山実花 (2017-04-11 17:21) 

青山実花

yontaさん
コメントありがとうございます

確かに、東北の震災のような場合でも、
ご自身が生きている事自体に、
罪悪感を持ってしまうという、
心の後遺症のようなものがあると聞きますね。
心って、そう簡単なものではないのですよね。

なんか、上手い事が書けなくてごめんなさい。
本当はもっと丁寧な返信をしたいのですが、
実はこのレビュー、
1年以上も前に書いたもので、
ずっと下書きに入っていたのを、
やっと蔵出ししたのです。
ブログも、あまり溜め込むと駄目ですね。

確かに皆さん、広島弁でしたね。
宮沢りえさんが役にピッタリだったことを思い出します。

by 青山実花 (2017-04-11 17:21) 

青山実花

裏・市長さん
コメントありがとうございます

そうなんです、
宮沢さんは何も悪くないのに、
自分が生きている、という理由だけで、
罪悪感を持っているんです。

しかも、アメリカが悪い、
原爆が悪い、なんて全くこれっぽっちも思っていない様子。
日本人って凄いな、と思います。
もし日本人が、
「原爆の爆風で、全身火傷をした少年像」などを
全国に建てるような国民性だったら、
今ほど、国の発展はなかったように思います。


たしかに、心にずっと辛い事を
溜め込んでいると、
一気に爆発する事ってありますね。
もしくは、「もういいや」と
勝手に自己完結して、諦めて、
無言で立ち去るか。

そう、人って、
テレパシーは持っていないんです。

私の女ともだちは、
片思いしていた頃、
二者択一で迷った時は、
必ず、「彼が好きそうな方」、「彼と同じ方」を
選ぶようにしていたそうなんですが、
彼とお付き合いするようになって、
彼に聞いたら、
全然気付かなかった、と言われたそうです(笑)。

彼は彼で、
自分の気持ちに気付いていなかった女ともだちを、
「鈍いなぁ」と思ったんですって(笑)。


知り合いの男女でさえ、そうなんですから、
今まで3回しか行った事のない天丼屋さんが、
裏・市長さんが大盛りを食べたがっているなんて、
分かるわけがありませんわね。

もうこれからは言い忘れる事はありませんわね。
ぜひ毎回、大盛りを頼んで、
満腹になって下さいね。

by 青山実花 (2017-04-11 17:21) 

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