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「続・名もなく貧しく美しく 父と子」 [映画]

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〔1967年/日本〕


片山道夫(小林桂樹)・秋子(高峰秀子)の
一人息子・一郎(北大路欣也)は、
有名大学を優秀な成績で卒業するも、
父親が聾唖者であるという理由で、
大企業に就職できない。
また、恋人・夕子(大空眞弓)は
道夫が聾唖者であると知った途端、一方的に別れを告げてくる。


自暴自棄になり、仕事を辞め、祖母に金をせびるようになった一郎は、
ある日、道夫と飲みに行ったキャバレーで、
ホステスが道夫を小馬鹿にした事に腹を立て、
店の中で大暴れしてしまう。


すると、同じ店にいた、
インテリア会社の社長・堺新太郎(加東大介)が、
なぜか一郎に目を付け、
自分の会社で働かないかと申し出てくる。


思っていなかった好条件。
一郎も、そして道夫も祖母も有頂天になるが、
ある日、堺の家に招待された一郎は、
堺の娘・美世(内藤洋子)が聾唖者で、
堺が、一郎と美世の結婚を考えている事を知る。


実は、美世には深く愛し合った、
同じ聾唖者の青年・南条(田村亮)がいるのだが、
遺伝を心配した堺が、
強引に2人を別れさせようとしていたのだ・・・。





先日書いた、「名もなく貧しく美しく」の続編。
作られたのは6年後のようだけれど、
映画の中の時間は、
10年以上が経過している。


子供だった一郎が、
大学を優秀な成績で卒業するまでに育ったことが
感慨無量。
子供が立派に成長する様子を見るのは大好き。


しかし、この映画は、
そんなのんきな事は言っていられない。
先日も書いたけれど、
相変わらず、世間は聾唖者に差別的で、
それは、障害のある方に、
多少の配慮をするようになった現在と比べても、
あからさまに酷い。


もちろん、モラルが今とは全然違うのでしょうし、
そこをどうこう言える事ではないけれど。


後半は、一郎が、
自分を見込んで採用してくれたと思っていた会社の社長が、
実は、聾唖者の娘・美世との結婚を画策していた事から発する
出来事に終始する。


美世は恋人の南条に、
「そんなに遺伝が心配なら、子供を作らなければいい」と言うのだけれど、
南条は、
「子供のいない夫婦なんて、常識はずれだ」
みたいな事を言う。


隔世の感ありだなぁ。
実は私も、
美世と同じ事を思ったのだけれど、
それは60年代では通用しなかったのか。
現代の夫婦の中には、
健康上、特に問題はなくても、
子供を作らないと決めている人たちも沢山いるのに。


前作で、道夫と秋子がしたように、
美世と南条が、随分離れた場所で、
手話で会話する場面があった。
声が届かなくても会話ができる・・・
それって本当に凄い事だ。


この映画のクライマックスは、
一郎と道夫が、初めて対峙する場面だろう。
今までこの2人は、
大きな衝突をする事もなく、ずっと生きてきた。
けれど、初めて2人の感情が爆発する。
本来は喧嘩など、しないで済むならしない方がいいんだろうけど、
私には、この衝突がとても良い事だと感じられた。
初めてぶつかって、
本音を言って、
長年心に溜まっていたものを全部出す、
そんな事も、時に必要なのではないかと。


オリジナルほどのインパクトはないけれど、
また違った味わいのある1本。


評価 ★★★☆☆

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