SSブログ

「ルーム」 [映画]

room.jpg
〔2015年/アメリカ〕


今日、ジャック(ジェイコブ・トレンブレイ)は
5歳の誕生日を迎え、
ママのジョイ(ブリー・ラーソン)と一緒にケーキを作る。


そこへ「あいつ」がやって来る。
「あいつ」が来ると、
ママはジャックを狭いクローゼットに入れる。
「あいつ」は現実。
テレビの中の出来事はニセモノ。
ジャックにとっての本物は、
ママと、「あいつ」と、この狭い部屋にある物だけ。


ママは、17歳の時、
「あいつ」に、無理矢理ここに連れてこられた。
以来、7年もここにいる。
ジャックはその間に生まれた。
一度も外に出た事はないけど、
ママは「世界は広い」と言う。


ある日、ママが言った。
「あなたが死んだと言って、絨毯にくるむ。
 あいつは死体を捨てに行くはず。
 トラックがスピードを落したらすぐ飛び降りなさい」と。


怖い。
そんな事できない。
ジャックはベソをかくが、
ママはそれしか、ここから逃げる方法はないのだと言う・・・。





もしも自宅で観ていたら、
声をあげて泣いていたと思う。
劇場だから我慢したけど、
なんともショッキングで、
考えさせられる映画。
沢山の賞を取ったのも分かる気がする。


予告を観た時は、
狭い「部屋」から逃げ出す事がメインの、
サスペンスかと思っていたけれど、
そちらは割と早くに解決する。
そう、これは、
誘拐・監禁された被害者が、
解放されたあと、
どのような時間を経て、
社会に適合するのかに重きがおかれている。


最初は、生まれてから一度も、
土さえ踏んだことのない5歳の少年が
いきなり外に出てどうなるのかが気になったけど、
考えてみれば、
生まれてからの5年間なんて、
大人になれば、殆ど断片的にしか記憶はなく、
子供の適応能力を思えば、
「焦らないで。大丈夫」と声を掛けたくなった。


それより、少女の方の傷は深い。
17歳で、
親切心が仇になって誘拐され、
7年間の悪夢のような日々。
同級生たちから取り残された、空白の時間。
助かって嬉しいはずなのに、
苛立ち、感情のコントロールができない・・・。


現実にも似たような事件があるけど、
それは人を殺すのと同じか、それ以上に
おぞましく、気持ちの悪い、最悪の出来事だ。
この映画の少女に非は1%もない。
非はないのに、
苦しんで、
最愛の両親にまで当たってしまう辛さ。
やりきれない。


テレビのインタビュアーの女の、
無神経な発言に、
観ているこちらがキレそうになる。
あんたは女だろう、
大人の女だろう、
少女の言っている意味が分からないのか、
それとも、テレビ受けするために、
わざと挑発しているのか、と。


ラストは書かないけど、
「そうか、そうだよね」と思える終わり。
スクリーンの向こうに映画の世界があるなら、
一生、この親子を応援していきたいような気持ち。


評価 ★★★★★

nice!(67)  コメント(14)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 67

コメント 14

hatumi30331

ありがとう〜映画の解説。
観たい映画です!
大体分ったけど・・・・・
観たい!

私の仕事にも役立つからね。
必ず観るよ!^^
by hatumi30331 (2016-04-14 13:11) 

jane

そんな状況を作った加害者の心の底を覗いてみたい。
是非見たいと思います。
by jane (2016-04-14 13:45) 

向日葵

この映画があるのを知った時から、無性に見たい映画です。
いや、「見なくちゃいけない!」感じー!

今まで見た方からの悪評を聞かない。。
これも稀有な現象ですよね。

by 向日葵 (2016-04-15 00:28) 

きよたん

すぐそこにある自由な世界
なのに外に出れないなんて
脱出すろのも命がけだなんて
そしてその後も。。
無神経な人たちからの精神的暴力
心の傷からの解放はあるのか
見たい映画です。
ありがとうございます。


by きよたん (2016-04-15 09:32) 

薔薇少女

この映画、観たいけど・・・
若い時、どうしようもなく逃れることが出来ない恐怖を味わった事があります。
そんな時、命だけは助けてという気になりますが、
その後にやって来る不安と恐怖には生きる気力も薙いでしまいます。
by 薔薇少女 (2016-04-15 18:14) 

裏・市長

みんな大絶賛やな!。
・・・ひとりぐらい、いや、だがそれはどうだろうと
反対意見を述べてみたいけれど、
観もせずに批評するべきではないと思うのだ。

Amazonのレビューでもいつも思うのだけれど、
(またハナシが飛ぶよ…)
発売前で観てもないのに
「前作がよかったので期待をこめて☆5つ」とか、
自分が間違って買っておいて、
「私の機種では使えませんでした!最悪!☆1つ」とか。
作品、商品への感想ってムズカシイなぁ。

しかし青山さん、うまい事書きよるなぁ・・・。
ラストも巧妙に、しかし絶妙にボカしながら導いてるなぁ・・・。

ボクもこの映画、観てからアラ探しして批評するわ。
願う事はただひとつ。
「あいつ」はちゃんと裁かれるべきだ。裁いてくれ。

最近、トシのせいか涙もろくてかなわんのよ。
地震の報道でも、被災者に向けて
「大変ですね!」なんて聞きながら、
年寄りが毛布にくるまって泣いてる姿なんか
放送する必要があるのだろうか。

もっと有効に電波を使えないのだろうか?。

揺れた、崩れた時の映像を繰り返し流すより、
被災者が必要としている情報を、
災害伝言ダイヤルの番号を映すとか、
困った時にはここに連絡を・・・とか。

なんか、被災者を晒し物にしているように感じてしまう。

と、テレビに向かってヘリクツをこねているのも
トシのせいです。ヘンクツジジイに王手!。
by 裏・市長 (2016-04-16 10:03) 

青山実花

hatumi30331さん
コメントありがとうございます

こんな与太ブログを参考にしてくださって、
お礼まで言われてしまうとは、
申し訳ないような気持ちなのですが、
面白かったので、
観て下さると嬉しいです。
お仕事の役にたつなら、尚更です^^

by 青山実花 (2016-04-17 21:45) 

青山実花

janeさん
コメントありがとうございます

全く同感です。
被害者の心のケアは当然として、
このような事件を起こす犯人の心理を
知りたいと思いますね。
まぁ、異常な人間には違いないのでしょうが。
by 青山実花 (2016-04-17 21:47) 

青山実花

向日葵さん
コメントありがとうございます

本当に、最近はおかしな事件が多く、
こういった映画を観て、
事件を未然に防いだり、
被害者の方の心に寄り添ったり、
言ってはいけない事を知ったりと、
学ぶ事は沢山あると思います。

お時間がありましたら、
ご覧になってみて下さいね。

by 青山実花 (2016-04-17 21:50) 

青山実花

きよたんさん
コメントありがとうございます

そうなんです、
少女が監禁されているのは天窓のある納屋のような家で、
壁一枚向こうは普通の世界なのに、
でも脱出できないもどかしさ。
ジャックが初めて外に出た時は、
私の頬にも、スッと風を感じた気がしました。
きよたんさんもぜひご覧になってみてくださいね。

by 青山実花 (2016-04-17 21:54) 

青山実花

薔薇少女さん
コメントありがとうございます

お若い時に、
なにか辛い体験をなさったのですね。
「命だけは」って分かります。
人間、極限状態に置かれると、
本能的にそう思うしかなくなってしまうのでしょうね。
そういった事件が永遠に無くなる日が来るといいのにと
いつも思っています・・・。
by 青山実花 (2016-04-17 21:56) 

青山実花

裏・市長さん
コメントありがとうございます

>「前作がよかったので期待をこめて☆5つ」

うわー、これは最悪ですね。
観てもいない、知りもしないのに採点するって、
私には絶対できません。
私が普段違和感を感じるのは、
例えば、
「○○という漫画を、××という俳優で映画化した。ムカつく」
と言う人が、
○○という漫画を読んでいないという事実。
○○という漫画に何の思い入れもないのに、
なぜ怒っているのか、不思議な人だなぁ、と。

被災地の報道は辛いですね。
裏・市長さんは、年のせいではなく、
お優しいから泣けてくるのではないでしょうか。

たしかにああいった状況の時は、
カメラを拒否するような気力もなくしてしまって、
晒し者のように映されるだけになっているのが
イヤですね。
もう少し、なんとかなればいいのですが。

by 青山実花 (2016-04-17 23:01) 

yonta*

気になっていたし、☆5つだし(笑)、観ました(^^)

よく一気に引き込まれた、と言いますが、
すうっと吸い込まれたという感じがしました。
冒頭から、狭い中ふたりで体を動かし、ビタミン剤を
飲ませる姿に、なんてしっかりした良いママなんだろうと
すっかりジョイの味方に。
それと、女性の警察官が素晴らしくて、拍手したいくらいでした。
あのインタビュアーのことも捕まえてくれないかしら。

親子でやっと逃げ出すことができたのに、
手放しで幸せになれない。
そういうもどかしい大人たちの心を救ってくれるのは、
ジャックの言葉だったり、行動だったりで。
やっぱり子どもって、すごいですね。

ラストも好きです。
素敵ないいシーンだと思いました。
by yonta* (2016-04-24 08:19) 

青山実花

yonta*さん
コメントありがとうございます

生まれた自分の子供の父親が誰であろうが、
その子を単体として愛するのか、
忌まわしい子供として憎むのか、
それは本当に女性によっても違いますし、
状況によっても変わってくるのでしょうけれど、
ジョイがジャックを愛せる女の子で本当に良かったと
思いました。

婦警さん、良かったですね。
もし男性の警察官だけだったら、
ジャックは状況を上手く説明できないまま、
施設送りになっていたかも・・・と思うとゾッとします。

あのインタビュアーも、
他のマスコミも、
本当に好奇心だけで騒ぎ立てて、ウンザリでしたね。
自分を気を付けないとなぁ。

ラスト、私も大好きです。
頑張ってね、と声を掛けたくなりました。

by 青山実花 (2016-04-29 16:22) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0