「残菊物語」

〔1956年/日本〕


尾上菊之助（長谷川一夫）は、
歌舞伎の名門・五代目菊五郎の養子として舞台に立ち、
自分の人気に酔っていたが、
その演技は下手で、
人々は彼を、陰で「大根」と言い、笑っている。


そんな噂を薄々感じている菊之助は、
弟の乳母・お徳（淡島千景）に、
正直な意見を聞かせてほしいと迫り、
お徳は、
「あなたの演技は、心に応えるものがない」と、
言いにくそうに言った。


その日から菊之助は、
遊びをスッパリ止め、
芸の勉強に精進する。
そして同時に、
お徳と親しく話をするうちに、
恋心を抱くようになる。


ところが、そんな2人の急接近を危惧した、
菊之助の母親は、
菊之助に内緒でお徳に暇を出してしまう。


怒った菊之助は、
家を飛び出し、大阪歌舞伎の舞台に立つようになる。
1年後、お徳も大阪にやって来て、
夫婦として一緒に暮らすようになるが、
東京での名声は大阪では通用せず、
菊之助の生活は次第に荒み、
お徳に辛く当たるようになる・・・。





やっぱり素晴らしい「残菊物語」。


以前に、1939年版を観た時も
なんて面白いんだと、感動したものだけれど、
17年後に撮られた、このリメイク版も、
全く劣っていない。


特に本作では、
淡島千景さんの演技が素晴らし過ぎて、
涙なくしては観られなかった。


淡島さん演じるお徳は、
身分違いの菊之助を、
全身で愛し抜いていて、
どんなに彼が身を落しても、
決して咎めたり、文句を言ったりはせず、
全ては、「芸の肥やし」だと達観しているようだ。


淡島さんは、
男を立てる演技がめっちゃ上手い。
押し付けがましくなく、
さりげなく、
実は力強く、
男を盛り立てる。
本当にいい女だと思う。


淡島さんと一緒にいるときの長谷川一夫さんは、
まるで子供。
「お徳、お徳」と頼り切ったような様子は、
妻というより、母親と一緒にいるようだ。
そんな男を、
可愛いと思うか、ウザいと思うかは、
映画の出来次第なんだろうけれど、
私は圧倒的に可愛い、と思ってしまった(笑)。


菊之助の荒んだ感じは、
1939年版の方が顕著だった気がする。
本作の菊之助が、
一度だけお徳を殴るシーンがあるけれど、
なりゆきで手が当たったといった感じ。
だからといって、
長谷川さんのイメージではそれで十分で、
物足りないといった感じではない。


「残菊物語」は、
あと1本、市川猿之助さんと岡田茉莉子さんで作られている。
いつか絶対、観てみたい。


評価　★★★★☆

コメント 4

39年版のほうをラピュタで観やした。
あくまで個人的な感想でやすが、もったりしていて退屈しやした。
あと、尽くすばかりの女というのが理解ができないでやす。
by ぼんぼちぼちぼち (2016-03-24 11:07) 

おはようございます！。

なりゆきで手が当たってしまった・・・。
その演出エエなぁ。
あ・・・叩くつもりじゃなかったのよ・・・、
っちゅーような。

ウチの父親は暴力的な人種だったので、
どんな事があっても、女子供には手を上げちゃあ
ダメよね・・・と思って育ったものだ。

頭を噛まれたこともあったが、じつと耐えたものである・・・。
逆ギレて頭を噛む女っちゅーのもどうよ？とは思うが（笑）。


市川猿之助さん版の「残菊物語」、
またしてもDVD出てないじゃん！。
なぜにそれほどまでに険しい道をキミはゆくのか？、
そんなにしてまで～。

しかし寒い！なに？！この寒さ！。
お風邪など召しませんように・・・。
by 裏・市長 (2016-03-25 08:55) 

ぼんぼちぼちぼちさん
コメントありがとうございます。

合いませんかぁ。
残念です～。
by 青山実花 (2016-03-25 15:29) 

裏・市長さん
コメントありがとうございます。

そうなんです。
やはり長谷川一夫さんのイメージがあるのでしょうか。
女に手をあげるなどの演出は、
駄目だったのかもしれません。

裏・市長さんは偉いですね。
家族からの影響を受けて、
同じ事をしてしまう男性も多いというのに。

え！頭を噛まれた！？
恋人からですか？
こめんなさい、笑う所ではないですよね、
でも笑っちゃいます＾＾
それでじっと耐えていたと！？
頭って噛めるんですか？
それってむしろ仲がいいと言えるのでは？
すみません、色々絵が浮かんでしまいます＾＾；

あはは～、
険しい道ですかね。
こんなにもリメイクされるから、
全部観たくなっちゃうんですよ。
長谷川一夫さんと市川猿之助さんとでは
どう違うんだろうと気になって。
必ずビデオを探し出して観てみます！（きっぱり！(笑)）

また寒さがぶり返しましたね。
裏・市長さんこそお気を付けて。
by 青山実花 (2016-03-25 15:42)