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「アクトレス 女たちの舞台」 [映画]

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〔2014年/フランス〕


女優として大御所の域に達しているマリア・エンダース(ジュリエット・ビノシュ)は、
彼女を有名にした舞台、「マローヤのヘビ」の作者である
ヴィルヘルム・メルヒオールの死を、
列車の中で聞かされ、衝撃を受ける。


新進気鋭の演出家・クラウスから、
「マローヤのヘビ」のリメイク版に出演してほしいとの
オファーを受けたマリアだったが、
その役は、若かりし頃に演じたシグリット役ではなく、
シグリットに追いつめられ、自死する中年女・ヘレナの役だった。


シグリット役は、
現在ハリウッドで大人気の若手女優ジョアンナ(クロエ・グレース・モレッツ)が
決定していると聞かされ、
面白くない気持ちのマリア。


しかし、自分がシグリットを演じるのは、
年齢的も、どう考えても無理。
ヘレナ役を受け入れた彼女は、
マネージャーのヴァレンティン(クリステン・スチュワート)を相手に、
芝居の稽古に没頭するが・・・。





ベテラン女優・ジュリエット・ビノシュと、
若手女優・クリステン・スチュワート+クロエ・グレース・モレッツ。


単純に計算すれば3人なんだけど、
この顔ぶれに、
5人分にも6人分にも感じられる凄さ。


特に私はヴァレンティン役のクリステン・スチュワートの演技が好き。
彼女を観ていると、「滅私奉公」という言葉が浮かんでくる(笑)。
大女優・マリアのマネージャーとして、
己を捨て、マリアに尽くし、
疲れ果ててしまうヴァレンティン。


マリアは、難しい女だけれど、
でも、よくデフォルメされて描かれるような女優というほどではないと
私には感じられた。
「ま、こんなもんでしょ」って。
それでも、彼女に仕える事の大変さ。
若さを失い、うろたえる大女優の葛藤など、
若いヴァレンティンに理解できるはずもなく、
けれど、それを受け止め、宥めなくてはならない辛さ。
芸能の世界って、本当に一般とは違うと痛感する。


そのマリア。
自分がかつて演じた舞台のリメイクに出演するけれど、
その役は、過去の自分が演じた役ではない。
観ているこちらにしたら、
「それは当然でしょ」と思うけれど、
それは一般人の感覚か。
こう書いてはなんだけど、
日本で言えば、中年の女優が
セーラー服を着て、女学生を演じるようなものよ。
そういう事をすると、かえって老いが目立つと思うんだけど。


そのマリアが、
クロエ・グレース・モレッツ演じるジョアンナを
ネットで画像や動画を検索するのが可笑しい。
昔だったら、せいぜいビデオで演技をチェックするか、
さらに昔だったら、タレント名鑑(笑)を見るくらいだっただろうに、
本当に便利な世の中になったものだ。
ネットの弊害も色々言われているけれど、
ネット無しの生活になんか、戻れるわけないわね。


で、ジョアンナ。
彼女は若手でありながら、
やっている事は、もういっぱしの大女優のようだ。
男と浮名を流し、パパラッチと揉め事を起こし、
その動画がアップされる。


パパラッチに追いかけられるジョアンナと同席していた時の
マリアの表情が興味深かった。
殆ど言葉を発せず、
かといって、咎めるのとも違う、
なんとも不思議な表情のマリア。
あの時彼女は、ジョアンナの事をどう思っていたのだろう。


それにしても、すごいなぁ、パパラッチ。
ジョアンナの不倫を嗅ぎつければ、
どこからともなく湧いて出てくる。
まぁ、行き過ぎた報道や、
家族を撮るのは絶対ダメだと思うけど、
ある意味、必要悪。
彼らのおかげで、私はスターのゴシップ記事を楽しめるわけだし、
スターの方だって、追いかけられるのが分かっていても尚、
有名になりたかったわけだから、
どっちもどっちという所。


ラストに、マリアがジョアンナに放つ一言。
女優って怖いけど、
あれはある意味、
一般人でも、年下の者が年上の者を小馬鹿にする時に、
口にしてしまう言葉なのだとも思う。
それはもう、仕方がないんじゃなかろうかと、
冷静に観てしまった。


評価 ★★★☆☆

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don

ミュージックエア(ケーブルテレビ)のシネマタイムで、
最近紹介されて、思わず見入ってしまった作品です。
見に行こうかなとも思いましたが、近所のイオンはやってない。
さすが早いですね。
by don (2015-11-01 20:32) 

青山実花

donさん
コメントありがとうございます

公開劇場数が意外と少ないようですね。
外国から沢山の映画が入ってくる上に、
邦画も色々作られているのに、
スクリーンの数は限られているので、
どうしても、派手な映画が主流になってしまうのでしょうか。
もう少し、なんとかなればいいのですが・・・。
by 青山実花 (2015-11-02 22:27) 

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