「にんじん」 [映画]
〔1932年/日本〕
寄宿学校に入っている少年・フランソアは、
長期休みで家に帰れるというのに、
心は晴れない。
彼はなぜか、両親、兄、姉から疎まれ、
名前さえ呼んでもらえず、
その赤毛とそばかすから、「にんじん」とあだ名されていた。
特に母親は「にんじん」を嫌い、
虐待を繰り返す。
父親は、積極的な虐待はないが、
「にんじん」に全く関心のない、冷淡な男だった。
そんな中、新しい女中・アネットが住み込みで働くようになった。
彼女は一家の、
「にんじん」に対する不当な扱いに気付き、
何かと彼を庇うようになった。
そしてついに、
父親に、母親の「にんじん」に対する仕打ちを訴えた。
その訴えは、
わずかだが、父親の心に響き、
以来彼は、なんとなく「にんじん」を気にかけるようになった。
しかし、母親の虐待に耐えかねた「にんじん」は、
納屋のロープを自分の首にかけ・・・。
子供の頃、
気に入った本は、何度も繰り返し読んでいたけれど、
この「にんじん」は一度しか読んでいないのか、
途中でやめてしまったのか、
読み始めたのは確かに記憶にあるけれど、
ラストまでは覚えていない。
子供心にも、
悲惨すぎると思ったのだろうか。
本来、子供が一番頼りにするであろう家族から、
名前さえ呼んでもらえない少年。
さらに、「にんじん」自身の両親の呼び方にも驚く。
彼は父親を「ルピックさん」、母親を「奥さん」と呼び、
私はてっきり「にんじん」は、継子なのだと思ったくらい。
「にんじん」は、おそらく10歳くらいかと思われるけれど、
そんな年端もいかない子供の中に、
もう1人の自分がいて、
「死んじゃえよ、お前なんか必要のない人間だ、死んじゃえよ」と
繰り返し、囁きかける。
あんな幼い子供が自死を考える事自体が異常だが、
彼をそこまで追い詰める家族(特に母親)はもっと異常だ。
映画の最初、
「にんじん」はそれほど暗い少年ではない。
むしろ、剽軽な印象さえ受けるのだけれど、
そうでもしないと、
自分を守っていけないようにも見て取れて、
余計に辛くなる。
そんな彼が、
突然キレたように、
馬車を暴走させるシーンがある。
鬱屈したものが一気に溢れ出たかのような場面で、
どうにもやりきれない。
原作は120年も前に書かれた小説だけれど、
そんな頃から、いや、それ以前からずっと、
虐待という問題はあって、
そして、この先の未来もずっと続いていくのかと思うと、
気が滅入る。
しかしこの映画のラストは、
「にんじん」と父親の心のふれあいが描かれているのが救い。
評価 ★★★★☆
この題名を見たときに、これかな?って思ったのね。本のたたずまいは覚えているんだけど中身は……名前と虐められているくらいしか思い出さなかったわ。読んだけど記憶が抹殺されたか途中で止めたのかな(^_^;)
by Rchoose19 (2015-09-23 23:09)
Rchoose19さん
コメントありがとうございます。
なんだかこの本って、
学校で薦められたりなども、
あまりないですよね。
なんででしょう、
内容が悲惨すぎるのか、
実の母からの虐待という内容に、
子供には重すぎると判断されるのでしょうか。
by 青山実花 (2015-09-27 17:51)