SSブログ

「かぞくのくに」 [映画]

kazokunokuni.jpg
〔2011年/日本〕


1970年前後の、北朝鮮への帰国事業により、
長男ソンホ(井浦新)を16歳で単身移住させた家族。


しかし、ソンホは今、
脳腫瘍を患っている。
彼(か)の国の医療技術では治療が難しく、
日本の病院で診察を受ける為、
ソンホは25年ぶりに帰国する。


ソンホとの再会を心待ちにしていた家族は歓喜し、
3ヶ月という期間限定の間、
充実した時を過ごそうと、
心を砕く。
しかし家の前には、北朝鮮から同行した男が、
常に監視をしている。


病院に行ったソンホは医師から、
「治療は不可能ではないが、3ヶ月では無理」だと言われてしまう。
そして、さらに残酷な通達が、
北朝鮮本国から送られてくる・・・。





見始めた時、
「こんな事って本当にあるのか」と、
疑うのとはまた違う、戸惑いの気持ちでいっぱいになった。
人は自分の理解の範疇を越えた事を見聞きすると、
無意識に、信じたくないという思いに捕らわれるようだ。


しかし、観終わって、色々調べるに、
これは実話だという。
監督のヤン・ヨンヒ氏は在日朝鮮人2世。
今までドキュメンタリー映画を手掛けてきたかたで、
ご自身の次兄の事を描いた作品であると。


まずは、何がショックって、
知らなかったとはいえ、
大切な息子を齢16歳で、
単身・北朝鮮に行かせてしまったという家族の苦しみ。


当時、北朝鮮は、
「この世の楽園」との噂され、
それを信じた一部の在日の方が、
「帰国事業」の話に乗り、
あの国に帰ったと言う。


映画「キューポラのある街」でも、
その事が描かれているし、
梁石日さんの小説、「血と骨」でも、
ラストに主人公が北朝鮮に行くので、
私も、その雰囲気は分からなくもない。


しかも、この映画の家族の父は、
朝鮮総連の重役で、
祖国が本当に「理想郷」だと信じていたのではないかと思われる。
現実を知っていたら、息子を送り出さないだろうし。


良かれと思ってした事が、
最悪の結果になる。
誰にでも、多少そういった経験はあると思うけど、
これは、最悪の中でも最悪すぎる。
両親の後悔の気持ちを思うと胸が苦しい。


ソンホが41歳という事に、
なんだか違和感を覚え、
「帰国事業」って、もっとずっと昔の事じゃないの?と思ったけれど、
どうやら「事業」は、50年代から80年代前半まで
続いていたらしい。
そうだとすると、辻褄も合う。


そして、
分かってはいたけれど、
彼(か)の国の、
国民に対する厳しい統制。


それはもう、命令という名の、
いじめというか、
国民を弄んでいるとしか思えないやり方。
そうやって、国民に恐怖の気持ちを植え付けようとする
作戦なのか。
もう何も言葉が出ない。


評価 ★★★★☆

nice!(41)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 41

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0