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「女殺し油地獄」 [映画]

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〔1957年/日本〕


大阪・天満の油屋・河内屋の息子・与兵衛(中村扇雀)は、
手の付けられない放蕩者。


彼は遊女・小菊に入れあげ、
いずれは河内屋の嫁にしたいと夢見ているが、
小菊に、その気があるのかないのか、
いいようにあしらわれている。


父・徳兵衛(中村鴈治郎)は、
与兵衛の実父が死んだあと、
婿入りした男で、
そのせいか、両親とも与兵衛に気を遣い、
家の中は与兵衛の持ち込むゴタゴタで、
いつも揉めている。


そんな与兵衛に、
河内屋の向かいの油屋・豊島屋の女房・お吉(新珠三千代)だけは、
時に優しく、時に厳しく、彼を諭し、
与兵衛もお吉には頭が上がらない。


与兵衛の作った借金の返済日が明日に迫った。
ところが彼の押した印鑑は偽造品。
当時、謀判は縛り首の重罪。
困り果てた与兵衛だが、
勘当された彼は、
もう実家へは帰れない。


考えた末、お吉に借金を頼みに行くが、
中々金を出さないお吉にカッとなった彼は・・・。





今年の5月に、
五社英雄監督の、「女殺油地獄」を観た時、
「中村鴈治郎版が観たい」と書いたけれども、
ソフト化もされていないようで、
その願いが叶うかどうか、分からなかった。


なので、今回、名画座にかかったのが嬉しくて、
しかも、運よく日曜日の上映だったので、
雨の中、ウキウキと出掛けて行った。


そして結論。
本当に、観て良かった。
五社版が、近松門左衛門の原作とは、
大きくかけ離れているらしいと書いたけれども、
それは本当だったようで、
お吉も、小菊も、
キャラや設定が全然違うじゃないか。


五社版を信じて、
知ったかぶって、誰かとこの物語について話したりしたら、
大恥をかくところであった(笑)。


だって、変だと思ったんだよね。
与兵衛とお吉が一線を越えるって設定が。
お吉は、
身持ちの固い、とても利口な女のはずなのに、
そこだけ取って付けたような設定で、
すんごく不自然だと思ったから。


本作でお吉を演じる新珠三千代さんは、
そんな利口なおかみさんの役がピッタリだった。
凛としていて、清潔で、
夫の焼きもちも上手くあしらう、
本当に素敵な女性。


さらに、与兵衛の両親の、
くどくどとした長い愚痴にも、辛抱強く付き合ってくれる、
姉御肌な所もある。
私の近所にもいてほしいくらい(笑)。


父も母も、与兵衛がああなったのは自分のせいだと言うけれど、
結局は彼を甘やかしている。
そして、そんなシリアスになりそうな場面が、
なんだか笑えてしまうという演出も上手い。


中村鴈治郎さんと中村扇雀さんが、
似ているなぁと思ったら、
実の親子なのね。
実の親子が、
映画の中で、義理の親子を演じる。
中々面白い趣向だった。


良い映画を観た日は一日、
心が軽い。


評価 ★★★★☆

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さきしなのてるりん

歌舞伎で題名とさわりだけはよく見るのに、しっかり見たことがない。名作見たいものです。
by さきしなのてるりん (2014-10-07 11:52) 

青山実花

さきしなのてるりんさん
コメントありがとうございます。

題名や粗筋は知っているけれど、
観たり読んだりはした事がない・・・
本当、そんな作品が多すぎて、
そう考えると、人生短すぎです。
1つでも沢山の作品に触れてゆきたいものですね。
by 青山実花 (2014-10-09 19:20) 

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