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「ラスト、コーション」 [映画]

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〔2007年/中国〕


1938年。
日本軍の侵攻により、
中国本土から香港に渡った女子大生・タン・ウェイ。
香港大学に入った彼女は、
同じ大学のワン・リーホンに誘われるまま、
演劇部に入部する。


リーホンは、強い反日感情を持った学生で、
演劇を通して、その主張を訴え、
客からの受けも良かった。


ある日リーホンは、演劇部の仲間数人を集め、
日本側のスパイ・トニー・レオンの暗殺計画を持ち掛ける。
リーホンに密かな思いを抱いていたウェイは彼の計画に乗り、
人妻だと偽り、まずレオンの妻に接近する。


しかし、上手くいきかけていた計画が、
レオンの上海転勤により頓挫し、
結局、仲間たちは散り散りになる。


4年後。
上海でレジスタント活動をしているリーホンと
久し振りに再会したウェイは、
彼からまた、レオンの暗殺を持ち掛けられる。


彼女はまた、人妻に成りすまし、
レオンと再会。
異様に用心深いレオンだったが、
ウェイを心を許し始めた彼は、
次第に彼女にのめり込んでゆく・・・。






特にポリシーも無かった女子大生が、
仄かに思いを寄せる学生に誘われるがまま、
暗殺計画に加わり、
深みにハマってゆくという物語は、
考えてみれば、単純な話ではあるんだけど、
それをとても面白く、深く魅せるのは、
さすがアン・リー監督。


物語は2つの章で成り立っている。
前半は、大学の演劇部の部員たちが、
リーダーのワン・リーホンの強い主張により、
トニー・レオンの暗殺計画に、
流されるように乗ってゆく様子。


ただ、若いだけに、
このノリがちょっと怖い。
「アマチュア」の彼らの計画は稚拙で、
学生演劇の延長にしか見えず、
しかし、変な所で力が入ったりする。


ターゲットのトニー・レオンを
タン・ウェイの体を餌に、誘い込もうとする彼ら。
しかし、人妻設定のウェイが生娘では不自然という事で、
演劇部の部員の1人・クー・ユールンと
性行為の実践(練習?)をさせられる。


ユールンは仲間内で1人だけ女を知っているという理由で
選ばれたわけだけど、
なんか凄い役得じゃない?(笑)。
他の学生は不満に思わなかったのか?
しかも結局レオンの暗殺は叶わず、
ウェイの努力は無駄だったわけで、
ユールン1人がいい思いして終わったってわけだ(笑)。


そして4年後。
ここからが本編といえる。


計画を再開したウェイは、
レオンと情交するわけだけど、
この映画は、2人の激しい性描写が特色の1つ。
ただ、その激しさは、
両者の不安や、
世の中の情勢の不安定さを表しているように思えて、
決して無駄だとは感じなかった。


もしも、2人がベッドに倒れ込んで、
次の場面は朝、みたいな演出だったら、
全く平凡な映画として、
何の感動も得られなかったに違いない。
明日が分からないから激しく燃える・・・
その感じが大変強く観る者に訴えかけてくる。


ウェイの感情の動きに溜息が出る。
それは理屈じゃない。
彼女がレオンにした、ある行為。
分かる、とっても。


このタン・ウェイという女優さんの、
体を張った演技が凄い。
公開当時27歳。
今の日本に、27歳前後の人気女優さんは、
山ほどいる。
誰か1人でもこんな演技を見せてくれたら、と思うけど、
やっぱり土壌も風土も違うから、
無理なのかもしれないなぁ。


評価 ★★★★☆

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inuneko

脚本にうっかり「車に飛び込んで逃げる」と書いたらこうなるんか!wとビックリした覚えがあります。
当時は、昔の人は…という感想でしたが、今も反日教育されてる若者がデモしたりモノを壊したりしてるとこみると同様の悲劇が現実で繰り返される土壌は準備万端過ぎて…今見ると現実からの干渉ノイズが多くてつらくなりそうな気がします。
by inuneko (2014-06-01 16:29) 

青山実花

inunekoさん
コメントありがとうございます。

トニー・レオンの車への飛び乗りは、
プールに飛び込んでいるみたいでしたね。
演じる方も大変そうです。

本当にそうですね。
1930代の出来事が、
いまだに若者の教育に使われていて、
反日感情が起こる。
私にしたら、しつこい!と思ってしまうのですが、
それでは駄目なんでしょうか。


by 青山実花 (2014-06-10 13:41) 

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