「とらわれて夏」 [映画]
〔2013年/アメリカ〕
夫に去られ、深く傷ついたままのアデル(ケイト・ウィンス・レット)は、
もうじき中学生になる息子ヘンリーと2人暮らし。
辛い出来事が重なり、情緒は不安定気味だ。
ある日、アデルとヘンリーがスーパーに行った所、
腹から血をにじませている強面の男に脅され、
自宅に行くように命じられる。
その男はフランク(ジョシュ・ブローリン)と名乗り、
脱獄してきたばかりだと話す。
怯えるアデルとヘンリー。
「明日になったら必ず出てゆく。乱暴はしない」
フランクはそう言ったが、
翌日は列車の運休日。
フランクは出てゆく事ができず、
家や車の修理、料理などをしてくれ、
緊張の中にも、和んだ空気が流れだす。
さらにはヘンリーに野球を教える。
男っ気のなかった日常に、
久し振りに活気がよみがえり、
アデルはフランクに惹かれてゆく・・・。
5日間の愛の物語。
「マディソン郡の橋」の、
“脱獄囚バージョン子供付き”といった感じがしないでもない。
正直、出だしは少しイライラした。
スーパーでフランクに脅されたのは仕方ないとして、
刃物を持っているわけではないのだから、
助けを求めようと思えば出来るじゃないの、と。
まぁ、そこでそうしたら、
話は終ってしまうけれど(笑)。
で、自宅にフランクを連れ帰るアデルなんだけど、
彼がもう、完璧な男で。
(ルックス以外(笑))
もう、何でも出来るんだな、彼は。
煉瓦の崩れている所の修復や、
車の修理から、タイヤの交換といった、
女には難しいと思われる作業を、
実に手際よくこなしてゆく。
(私の家にも来てほしいわ(笑))
さらに凄いのが料理の腕前。
特に、おそらく多くの方が印象に残したであろう、
桃のパイの美味しそうな事ったら!
それも、適当に時間を飛ばして、
「はい、出来ました」というのではなく、
桃の皮むきから始まって、
パイ生地を作る工程から焼き上がりまで、
実に丁寧に見せてくれる。
ボールに入れた大量の切った桃を、
手でこねるシーンが、
この先の、アデルとフランクの関係を象徴しているようだ。
例えば、「ゴースト ニューヨークの幻」のろくろのシーンもそうだけれど、
男女がああいった、にちゃにちゃしたものをこねるのって、
何か官能的な気分にさせるものなのだと再確認。
アデルは次第にフランクに惹かれてゆくのだけれど、
それは、彼女の孤独がそうさせたのかもしれないし、
極限状態だからこそ生まれた愛だとも言える。
フランクがなぜ刑務所にいるのかが、
観ているこちらにも、少しずつ分かってきて、
彼ばかりが悪いんじゃないと、
同情できるような作りになっている。
そうでないと、観客も感情移入できないものね。
アデル役のケイト・ウィンスレットが、
母の顔と、女の顔の両方を見せる。
「息子の前で女を出し過ぎじゃない?」と思わせるシーンもあるけど、
恋に落ちた女はあんなものなのかも。
息子も、特に嫌悪を感じている様子もないし。
たった5日間の出来事が人生を変える。
ラストは感動的。
こういうオチって好きだな。
評価 ★★★☆☆
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