「インテリア」 [映画]
〔1978年/アメリカ〕
ロングアイランドの大きな海辺の家。
富豪のアーサー(E・G・マーシャル)は、
インテリアデザイナーの妻・イブ(ジェラルディン・ペイジ)と共に、
3人の娘を育ててきた。
アーサーは以前から、
イブの強い美意識による無言の支配を息苦しく感じ、
老境に差し掛かった今、別居を提案する。
イブはショックを受けるが、
彼はそれを、「試験的」なものと位置付け、実行する。
長女・レナータ(ダイアン・キートン)は詩人で、
それなりに売れていたが、
作家志望の夫は中々芽が出ず、夫婦の雰囲気は悪い。
次女・ジョーイ(メアリー・ベス・ハード)は、
アーサーが一番目をかけていた娘で、
今は作家となり、夫とマンハッタンで暮らしている。
三女・フリン(クリスティン・グリフィス)は女優だが、
他人が思うほど役には恵まれず、
テレビ女優の立場に甘んじている。
イブはアーサーに去られて以来、
精神が不安定となり、
ガス自殺をはかるが未遂に終わる。
ある日アーサーは娘たちに、
中年女性・パール(モーリン・ステイプルトン)を紹介する。
芸術を解さず、
ガサツで太ったパールの出現に、
娘たちはショックを隠し切れない・・・。
ウディ・アレン監督の、
初のシリアスドラマ。
良かった、とても。
落ち着いていて、深い。
完璧な妻であり、母であるイブが、
完璧さゆえ、夫から疎まれてしまうという矛盾。
彼女にとって青天の霹靂ともいえる、
夫からの別居宣言はどれほどショックなものだっただろう。
けれど、イブを煙たく思う気持ちも、
分からなくはないという場面もちゃんと用意されている。
彼女は次女ジョーイのマンションを訪ねては、
勝手に買ってきた高価な花瓶を置いたり、
ソファーの交換や、床の張り替えなど、
過去に何度も口を出している事がセリフから分かる。
自分のセンスに対する強い自信は結構だけれど、
これが自分の母だったらと思うと、
やっぱりウザいと感じてしまうだろう。
イブは夫の「試験別居」という言葉に、
一縷の望みを託しているように見えた。
「試験が終わったら夫は帰ってくる」、というような。
でも、こちらからすると、
どう見ても夫は別れたがっている。
別居に、試験も本番もありはしない。
案の定、アーサーは、
すぐに新しい女パールを連れてくるわけだけれど、
彼女がまた、イブとは正反対の、
インテリな家風には合わない女で。
でも性悪というわけではなく、
イブとの生活に疲れたアーサーが求めたのは、
こういう女なんですよという、
演出なのだろうと思う。
そして、自宅で開かれた家族だけの結婚パーティ。
もちろん、イブだけ呼ばれていない。
これ、イブの立場だったら、
どれほど辛い事かと想像する。
アーサーが再婚するだけでも辛いのに、
娘たちまでがパールを嫌いながらも、
パーティをボイコットするわけでもなく、
それぞれの連れ合いと、とりあえず出席している。
自分だけ蚊帳の外。
なんで、なんで、なんで・・・って、
きっと私だったら思うだろう。
圧倒的な孤独感・・・。
少し前の私だったら理解できなかったかもしれない、
登場人物たちそれぞれの葛藤が心にしみる。
評価 ★★★★☆
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