「変態家族 兄貴の嫁さん」 [映画]
〔1984年/日本〕
間宮周吉(大杉漣)の長男・幸一(下元史朗)が結婚し、
お嫁さんの百合子(風かおる)が同居する事になった。
周吉も、長女の秋子(山地美貴)も、次男の和夫(首藤啓)も
二階の新婚夫婦が気になって仕方がない。
周吉は、行きつけのスナックのママが
亡くなった妻に似ていると言ってきかない。
秋子は、平凡な一生を送るなど我慢がならないと、
OLを辞め、ソープランドで働き始める。
幸一が家に帰らなくなった。
どうやらスナックのママと出来上がってしまったらしい。
健気に幸一を待つ百合子。
和夫が万引きで捕まり、
百合子が身柄を引き取りに行く。
そんな風に、間宮家の日常は過ぎてゆく・・・。
昨日に引き続きポルノ。
今日は日本の。
これは絶対いつか観たいと思っていたので、
どうせならポルノ繋がりで、
連続して観ちゃえ、って(笑)
言い訳するわけではないけれど、
これをポルノという目では全く見られない。
というのもこれは、この作品の監督・周防正行さんが敬愛する
小津安二郎監督の映画をポルノの視点から描いたという事で、
有名な作品。
これを観るのは、小津映画を全制覇してから、
と決めていたので、
それが叶った今、やっと臨む事ができた。
周防監督は、その後、「Shall we ダンス?」などを作る名監督となったし、
草刈民代さんの旦那様としても知られている。
「おくりびと」の滝田洋二郎監督もそうだけれど、
無名時代、ポルノ映画で修行された監督さんは
意外と多いらしい。
大杉漣が、小津映画になくてはならない、
笠智衆さんになり切っていて、
可笑しいやら切ないやら。
全体のセリフ回しも、小津映画そのもの。
上手く言えないけど、
あの独特の、細切れの会話が
完全に再現されている。
秋子の、結婚適齢期の揺れる女心も、
小津作品によく出てくるパターン。
ただ、平凡でいたくないという理由だけで、
ソープランドで働くのには笑っちゃうけど。
公開当時、これを劇場に観にいった人って、
そんな事を知って行ったんだろうか。
ただのポルノ目的の人が大多数だったんじゃないかと
想像するんだけど(笑)
そういった方々は、ちょっと物足りなく思ったんじゃないのかなぁ(笑)
タイトルのような「変態」な場面は無いと言っていい。
例えば、
秋子のソープランドでの一番最初の客が、
偶然にも幸一なんだけど(笑)、
「会社、辞めたのか?」
「うん」
みたいな会話だけで、何もせずに帰ってゆく。
「変態」なポルノだったら、兄と妹で交わっても不思議はないのに。
(わたし的には、ホッとしたけど)
大杉が女と交わる場面も、一度もない。
「嫁に手を出す舅」という設定かと思っていたけれど、
そういった事もなく終わった(笑)
小津映画を、
性的な面から描いたらこうなる、って、
表してくれたような映画。
特別面白いものではないけど、
小津映画の、特に後期の作品を何本かでも観た事のある方なら、
楽しめる気がする。
評価 ★★★☆☆
ロマンポルノは「ベッドシーンがあれば
あとは監督の自由」という制作姿勢により
作家性の強い作品が沢山作られたんですよね。
私は石井隆監督や黒澤清監督の作品を観に行った記憶があります。
石井監督のは、重かった、です。
by nikopon (2014-03-26 23:41)
nikoponさん
コメントありがとうございます。
私も聞いた事があります。
にっかつのポルノは
とりあえず、何分おきかにベッドシーンを入れれば、
それ以外の制約はない、と。
きっと勉強中の監督さんにとっては、
良い修行の場となったのでしょうね。
それから偶然なのですが、
お名前のあがった石井隆さんは、
私が直近で観たポルノ「ラブホテル」で脚本を書かれていました。
監督さんは相米慎二さんなのですが、
これがもう、大変に素晴らしく、
ポルノにしておくには勿体ない作品だと思いました。
隠れた名作が他にも沢山ありそうですね。
by 青山実花 (2014-03-27 16:56)
劇場に観に行った方は、多分大多数がポルノ目的だったのでは
ないかと(笑)。周防監督も今ほど有名ではなかったでしょうし・・
この映画もずっと気になっていて、未見のままです。
だいぶ前に、「バウンス ko GALS」を観に行った時、
女性は私だけで、周りはサラリーマン風の男性ばかりで
すごく異様な雰囲気で(異様なのは私の方だったのかも)^_^;
みなさん、コギャル目的だったのかしら・・・
よくできた青春映画だと思っているのですが。
ジャンルやタイトルじゃなく、内容が良ければ
映画やドラマはなんでも観たい!ですよね(^^)
by yonta* (2014-03-29 12:31)
yonta*さん
コメントありがとうございます。
はい、私もそう思います(笑)。
小津映画のパロディだと知らない方は、
「何だこれは?」と思ったのではないでしょうか。
私もこの作品は、yonta*さんにもぜひ観ていただきたいなぁと
思いました。
小津監督がお好きなら、きっと楽しめます。
勉強不足の私は、
「バウンス ko GALS」という映画は初めて知りました。
調べてみますと、90年代後半のコギャルを主人公にした
お話しのようですね。
そんなに男性ばかりとは・・・
まったく皆さん、何を観にいってるんだか(笑)。
ただ、映画としてもとても良いようですね。
どのサイトも、めっちゃ評価が高いです。
今、気になって仕方がありません。
ご紹介していただいた直後に観るのは、
なんだか申し訳ないような気がするのですが、
すぐにでも観てみたい気分です。
そうなんです。
ポルノでもホラーでも、
自分が気になって「観たい!」と思えば、
ジャンルなんて関係ないのですよね。
食わず嫌いをしていたら、名作を逃してしまいそうですし。
by 青山実花 (2014-03-29 22:34)