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「乳母車」 [映画]

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〔1956年/日本〕


鎌倉在住の女子大生・芦川いずみは、
自分の父・宇野重吉に愛人がいる事を知り大変なショックを受ける。
母・山根寿子に告げるが、
彼女はとっくにそれを知っており、
相手の住所まで突き止めており、さらに驚く。


母は、
「事を荒立てては自分が損をする。
 宇野を責めれば、それで彼は罪が晴れたような錯覚を起こすだろう。
 黙っていれば、いつまでも罪悪感に苦しむはずだ」
みたいな事を言い、芦川は何も答えられない。


芦川は、誰にも内緒で、
九品仏にある妾宅を訪ねた。
なんとその家には、
愛人・新珠三千代だけでなく、
彼女と父の間に生まれた、
生後六ヶ月のまり子がおり、
芦川の衝撃はさらに深まる。
しかし、新珠は想像していたのとは違い、
聡明で、明るく、
愛人という立場を除けば、
真っ当な常識人で、
芦川は戸惑う。


新珠は、親や親戚縁者から、
父との事が原因で絶縁されていたが、
弟・石原裕次郎だけは彼女の味方だった。


石原がまり子を乳母車に乗せ、
神社の境内で昼寝をしている場に遭遇した芦川は、
衝動的に、乳母車ごとまり子をさらってしまう。


目覚めた石原裕次郎は驚愕し、
周辺を探し回るが、
芦川の仕業だと知って激怒。
しかし芦川は、妹とのふれあいにより、
この子をなんとか幸せにしなければとの思いを深くする・・・。





石坂洋二郎の同名小説の映画化。
石原裕次郎が全面に出ているけれど、
主役は芦川いずみ。


考えさせられる話ではあるけれど、
登場人物たちが全員良い人すぎて、
リアリティに欠けるかなぁ。


特に宇野重吉。
宇野の、枯れたイメージのせいか、
不倫をして子供までなす男には
どうしても見えない。
これがギラギラした脂ぎったおっさんだったら、
映画の印象は相当変わったであろう。


そのせいか芦川は、
父の不倫は、母の冷たさも一因かもと思い始める。
確かに母は打算的な面があるけれども、
母を責めるのは可哀相かも。
逆に母の冷たさは、
いつも煮え切らず、感情を露わにしない宇野に、
物足りなさを感じての事かもしれないじゃないか。


そう考えると、男女の関係は合わせ鏡。
結局は似たもの同士で、
嫌なら別れるしかない。


新珠三千代もいい人すぎて、
近くにいたら友達になりたいくらいだけれども(笑)、
あんな聖女が不倫というのも解せない。
つまりは、宇野との恋愛は純粋だと
描きたいのであろうか。
彼女がどうしようもない自堕落な女だったら、
芦川だって宇野を思い切り責める事ができただろうに。


芦川の親子と、石原の姉弟の5人が集まって、
話し合いをする場面があるのだけれど、
この問題に結論なんか出るはずもない。
何より、すでに一つの生命が誕生してしまっている事実は
大変に重く、
消せる事ではない。


石原・芦川の爽やか青春コンビと、
親の不倫という重いテーマが合わないのかもしれないな。


まぁ、いいや。
本作は、石原裕次郎の3作目か4作目らしいのだけれど、
とにかく、若くてカッコよくて。
(そこかよ(笑))
ルックスだけじゃなくて、
なんだろう、滲み出るような、
闊達で、奔放な、その様子。
生まれながらの自由人という感じ。
石原裕次郎がスーパースター扱いされる理由が、
今までなんだかよく分からなかったけれど、
これを観て納得。


それから、彼が赤ちゃんをあやしている姿に胸ときめく。
イケメンと赤ちゃんの組み合わせって、
何でこんなに女心を刺激するんだろう(笑)。


評価 ★★★☆☆

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