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「猟銃」 [映画]

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〔1961年/日本〕


佐分利信と岡田茉莉子は結婚したばかりであったが、
年が離れすぎているせいか、
会話も趣味も噛み合わない、
なんだかギクシャクした夫婦。


佐分利は岡田のアルバムの中の美しい女・山本富士子に目を止め、
岡田に「これは誰だ?」と尋ねた。
それは自分の従姉だと説明する岡田。


同じ頃、山本の家では騒動が起きていた。
山本の夫・佐田啓二の昔の恋人・乙羽信子が
佐田との間にできた6歳の少女を連れて乗り込んで来、
その子を置いて帰ってしまったのだ。
それがきっかけで山本は佐田と離婚、
しかし少女は山本が育てる事になる。


傷心の山本に近付いた佐分利は、
岡田がありながら、山本に求愛、
山本もそれに応え、2人は不倫関係となる。
この事が岡田に知られた時は死ぬ時だ、と、
山本は考える。
しかし実は、岡田は2人の関係を付き合い当初から知る事になる。


それから8年。
山本は岡田にすまないと思いながらも、
佐分利との関係を続けていた。
2人は、岡田がその事を知っているとは
夢にも思っていなかった。


そんなある日、
山本はある事実を知り、
その場に倒れてしまうほどの衝撃を受ける・・・。





単純な不倫話のようで、
意外と深い女心を描いていると感じた。
原作は井上靖の短編だそうだ。
さすがに大作家は違う。


ある事実を知って、
山本富士子が倒れてしまう場面、
それを観た時、
二通りの解釈ができるけれど、
どちらなのだろうと考えた。


それが曖昧のまま終わってしまう映画もあるけれど、
これはラストに、
彼女の手紙により答えが明確になる。
観ているこちらは、
「うんうん、そっか、やっぱりそうだよね」という気持ちになる。


従妹の夫と不倫関係になって悩む山本。
悩むくらいなら、そんな事にならなければいいと思うけれど、
まぁ、文学や映画の不倫は、
それ自体が物語になるので、嫌悪感はない。
ただ、離婚直後の心の隙に付け入った、
佐分利信はどうしても好きになれなかった。


とはいえ、
本当の発端は、佐田啓二だけどね。
結婚前に子供なんて作らなければ、
山本と離婚する事にはならなかったし、
佐分利が入り込む隙もなかっただろうし。


山本が育てた少女が、
大変に美しく、心清らかに成長しているのが、
唯一の救い。


山本と岡田、そしてこの少女が、
トランプをする場面は結構な緊張感。
山本は、岡田は不倫に気付いていないと思っているけれど、
とっくにそれを知っている岡田は、
遠回しに当てこすりのような事を言い続ける。
ピンと糸を張ったような女同士のやり取り。


山本富士子さんは、
不倫していても絵になるねぇ(笑)。
ただ、この映画では、
落ち着いた魅力の山本さんより、
現代的なルックスの岡田さんの方が、
私の目には可愛く見えたけれど。


評価 ★★★☆☆

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月夜のうずのしゅげ

本年ものんびりさんのブログで
なつかしい映画に出会えそうなので
本当に楽しみです。
by 月夜のうずのしゅげ (2014-01-08 09:22) 

青山実花

月夜のうずのしゅげさん
コメントありがとうございます。

こんな与太ブログでも、
月夜のうずのしゅげさんのような方がおられるのは、
とても嬉しい気持ちになります。
私も月夜のうずのしゅげさんの深い洞察力をもった
映画の感想を楽しみにしています。
by 青山実花 (2014-01-08 13:51) 

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