「東京の女」 [映画]
〔1933年/日本〕
岡田嘉子と江川宇礼雄は、仲の良い姉弟。
岡田は江川の学費を稼ぐため、
昼は会社でタイピストとして働き、
夜は大学教授の家で、翻訳の仕事をしている。
江川には可愛い恋人・田中絹代がいる。
田中には警察官の兄がいるが、
ある日、田中は、兄から岡田に関する噂を聞く。
岡田が夜、翻訳の仕事をしているというのは嘘で、
実はいかがわしい酒場で女給をしていると言うのだ。
驚いた田中は、その事を江川に告げる。
江川はそんな事を言いに来た田中に怒り、
彼女を追い返すが、
帰ってきた岡田に、噂は本当なのかと詰問する・・・。
小津安二郎監督のサイレント映画。
仲の良い姉が、
自分の為にいかがわしい商売に身を落とした
弟の苦悩が、
画面からも伝わってくるようなリアルな作り。
恋人が、その事を告げに来た時、
彼は大変に怒るけれど、
やっぱり心のどこかで、「もしや」という気持ちがあるのでしょうね。
でなければ、一笑に付して、
相手にしなければいいのだもの。
帰ってきた姉がそれを認めた時の、
弟は激昂し、
それでも姉は、
「そんな事はどうでもいい。あなたは勉強さえしていればそれでいい」と言う。
これはもう、どちらの気持ちも分かるだけに辛い。
ラストも、救いようがない暗さ。
評価 ★★★★☆
今年は小津安二郎監督の、
生誕110年、没後50年に当たる年で、
私も10月の終わり頃から、
監督の未見の作品を集中して観る事にした。
本作、「東京の女」で、
フィルムが現存する作品を全制覇できた。
今はちょっとした達成感を感じている。
どの作品も、外れという事がなく、
殆どはとても面白く観た。
自分の中で、
「小津監督の映画だからと、無意識に評価が高くなるのか?」
と自問した事もあったけど、
決してそうではないと、今はっきりと言える。
特に、サイレント時代の作品が素晴らしい。
映画がまだ音を持たなかった時代から、
あんなに凄い作品を数々生み出した監督の力って、
どれほど凄いんだろう。
登場人物たちは皆、生き生きとした表情で、
スクリーンの中を動き回る。
声は聞こえなくても、
その気持ちは十分に伝わるリアルな感じ。
サイレント映画は難しそうという思い込みはすっかり吹き飛んだ。
フィルムが見つからない作品が、
まだ17本もあるそうで、
それがとても残念。
ただ、今ある作品の中には、
どこかの倉庫からひょっこり見つかった物もあるそうなので、
今後も、そのような事があるかもしれない。
期待して待っていようと思う。
小津監督の記録として、
全54作品を記しておきます。
(※印は、フィルムが現存しない作品)
※1927年 懺悔の刃
※1928年 若人の夢
※1928年 女房紛失
※1928年 カボチヤ
※1928年 引越し夫婦
※1928年 肉体美
※1929年 宝の山
1929年 学生ロマンス 若き日
1929年 和製喧嘩友達
1929年 大学は出たけれど
※1929年 会社員生活
1929年 突貫小僧
※1930年 結婚学入門
1930年 朗かに歩め
1930年 落第はしたけれど
1930年 その夜の妻
※1930年 エロ神の怨霊
※1930年 足に触つた幸運
※1930年 お嬢さん
1931年 淑女と髯
※1931年 美人哀愁
1931年 東京の合唱
※1932年 春は御婦人から
1932年 大人の見る繪本 生れてはみたけれど
1932年 青春の夢いまいづこ
※1932年 また逢ふ日まで
1933年 東京の女
1933年 非常線の女
1933年 出来ごころ
1934年 母を恋はずや
1934年 浮草物語
※1935年 箱入娘
1935年 東京の宿
※1936年 大学よいとこ
1936年 鏡獅子
1936年 一人息子
1937年 淑女は何を忘れたか
1941年 戸田家の兄妹
1942年 父ありき
1947年 長屋紳士録
1948年 風の中の牝雞
1949年 晩春
1950年 宗方姉妹
1951年 麦秋
1952年 お茶漬の味
1953年 東京物語
1956年 早春
1957年 東京暮色
1958年 彼岸花
1959年 お早よう
1959年 浮草
1960年 秋日和
1961年 小早川家の秋
1962年 秋刀魚の味
今更ですがかみさんが「47RONIN」を観てきた第一声が「天狗が爬虫類系だった(@_@;)」でした^^;
天狗と紋付き袴の色と武士の髪型はさすがに違和感があったそうですが、ほぼ想定内だったようです=^_^=
by ニッキー (2013-12-17 22:09)
ニッキーさん
コメントありがとうございます。
奥様の仰りたい事、分かります!
あれは天狗じゃないですよ。
以下は私の持論ですが、
日本の昔話に出てくる天狗って、
白人さんが、何らかの理由で日本に流れ着いて、
人里離れた山奥で暮らしているのを見た日本人が、
そう呼んだんだと思うんです。
(高い鼻、赤い顔などの特徴からも、そう想像がつきます)
あんな爬虫類顔、おかしすぎです^^
想定内、確かにそうですね。
私も、「ま、こんなものだろうな~」と思いながら観ていました。
by 青山実花 (2013-12-19 21:58)