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「早春」 [映画]

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〔1956年/日本〕


池部良と淡島千景は結婚8年目の夫婦。
幼い息子を病気で亡くして以来、
2人だけの生活。


池部は、同じ通勤電車に乗る仲間とつるんでは、
様々な遊びやイベントに興じている。
次の予定は江の島でのハイキングだ。


ハイキングの際、池部は、
仲間の1人、岸恵子と急速に親しくなる。
その後も岸は、積極的に池部を誘い、
ついに2人は一線を越えてしまう。


池部の初めての外泊を不審に思う淡島。
ハンカチには口紅が付いていた。
おかしいと直感した彼女は、
その後も池部を観察する。


一方、2人の関係は仲間内に知られる事となり、
呼び出された岸は、皆から吊るし上げを食ってしまう・・・。





小津安二郎監督が描く不倫。
据え膳食っちゃう池部良さん(笑)。
「あーあ」と思ったけれど、
あの場合、男だったら仕方ないかなぁとも思ってしまう。


だって、岸恵子は大変に積極的で、
最初の頃の誘いは全て岸から。
彼を呼び出すのも、
キスするために、体を寄せるのも。


あれを拒める男は少ないんじゃないのかなぁ。
(分からないけど(笑))
しかも、あんなに魅力的な岸からの誘惑じゃ。


この映画の場合、
私は最後まで、淡島千景の方に肩入れして観ていた。
映画の中の不倫は、
必ずしも、浮気された側にばかり味方するわけじゃないけど、
この作品の場合は、
積極的すぎる岸に、無意識に反感を覚えるのかもしれない。
池部の方が積極的だったら、
また印象は変わっていたかもしれないな。


仲間たちが岸を吊し上げる場面を見ながら、
「本当は羨ましいんじゃないの?」と思ったら、
案の定、彼女が泣いて帰ったあと、
「でも・・・羨ましいよな」みたいな声が上がって、可笑しかった。
他人の不道徳を責める気持ちと、
「あいつ、上手い事やったな」という気持ちが、
同時に存在するのは、
何ら矛盾しないと私は思う。
それが人間だものね。


池部が、戦友たちとの宴会の後、
酔った仲間を突然、家に連れ帰るシーン。
彼らの不作法な態度に、
淡島は大変に不機嫌になって、
「あんなのが兵隊だから、日本は負けたのよ!」というセリフに、
ハッとするやら、可笑しいやら。
怒ってる時に、
全く関係のない事を持ち出すって事、
たまにあるもの。
今はそんな事、関係ないじゃんと思っても、
言わずにいられないような時。
みんな同じだなぁと(笑)。


144分のとても長い映画で、
観る前は、どうかなぁと思っていたけれど、
この長さが良かった。
登場人物の気持ちの描かれ方が、とても丁寧。


それに、不倫を扱ってはいるけれど、
そればかりではなく、
様々なお話しが盛り込まれている。
面白かった。


評価 ★★★★☆

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yonta*

今年は、小津安二郎生誕110周年、亡くなって50年ということで、
小津監督の映画を観よう!と思っていたのに、
あっという間に11月になってしまいました^_^;

ちょうど10年前に、サイレント作品はそこそこ観たのですが、
有名なものが、ほぼ未見なもので・・・
青山さんの感想を参考にさせていただいて、
来年勝手に111周年できたらな、と思っています(笑)。

小津さんの描く不倫、こちらもおもしろそうですね。
by yonta* (2013-11-03 21:13) 

青山実花

yonta*さん
コメントありがとうございます。

そうなんですよね、
今年は小津監督の記念の年だというのに、
もう残り2ヶ月足らずで。
私も今頃になって、せっせと観ているような次第なんです^^;

私の感想なんて、
まったく当てにも、参考にもならなくて、
申し訳ないような気持ちですが、
せめてタイトルだけでもお知らせできればと思っています。
yonta*さんが観られたら、
もっとちゃんとした感慨を得られるのではないでしょうか。
10年前という事は、100周年の時ですね。
今年よりずっと盛り上がっていたのでしょうか。
111周年もいいですね♪
1並びなんて気持ちいい^^

私はサイレント期の方がまだまだなので、
追々観ていこうと思っています。
この「早春」はなかなか面白かったです。
ぜひご覧になってみて下さいね。

by 青山実花 (2013-11-04 08:44) 

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