「東京の合唱(コーラス)」 [映画]
〔1931年/日本〕
ある大学の体育の授業。
教師は1人張り切っているが、
生徒たちはやる気なし。
隙あらば楽しようと狙っている。
学生・岡田時彦もその1人・・・。
それから数年後、
岡田は所帯を持ち、
3人の子供に恵まれ、
保険会社に勤務し、
平凡だが幸せに暮らしている。
最近、長男がさかんに自転車をねだってくる。
近所で持っていないのは自分だけだと。
ボーナスの支給日、
岡田と妻は、長男の願いを叶えてやる事にする。
ところが、会社で同僚が理不尽な理由で解雇され、
同情した岡田は社長に猛抗議。
すると、岡田まで解雇されてしまう。
世の中は大不況。
次の勤め先など見つかるわけもなく、
子供の自転車を買ってる場合じゃない。
さらに折悪く娘が入院し、
岡田も妻も、暗澹たる気持ちになる・・・。
小津安二郎監督のサイレント映画。
1930年の頃の、
日本人の生活や、世相が分かって、
大変に興味深い。
悲哀の中にも、コミカルな面があって、
楽しめる。
同僚の解雇を抗議して、
自分までクビになってしまう岡田時彦に、
「あー、なんて事を・・・」という気持ちになる。
会社が理不尽な事には、
他の社員も憤慨しているけれど、
先頭に立って抗議に行った岡田だけが、
辞めさせられたという形だ。
彼には、妻と3人の子供がいる。
私が女だからかもしれないが、
ここはやっぱり堪えてほしかったなぁ。
正義感より何より、
彼の最優先事項は、子供にご飯を食べさせる事だろうに。
彼は長男と約束した自転車が買えずに、
代わりにキックボード様の物を買ってくる。
その時の長男の、泣きわめく様子ったら。
サイレント映画なのに、その声が聞こえるようだった(笑)。
そりゃあ、長男の気持ちは分かるよね。
その日一日、気が遠くなるほど父を待ちわびて、
友達には、自転車を買ってもらえると自慢したんだもの。
キックボードを買ってこられた日には、
そのショックは大き過ぎるというもんだ。
その後の岡田の職探しの様子が辛い。
なまじ学歴があるせいで、
なかなか採用されないと彼は言う。
当時はそんなものだったのだろうか。
仕事を欲しているのに中々見つからない人を見るのは、
本当に切なく、悲しいものだ。
「なんとかなんとか、この人が採用されますように」と、
願わずにはいられない。
その後、冒頭に書いた、
体育の教師とバッタリ再会する岡田。
観ているこちらは、
「先生、なんとかしてあげて」と本気で思った。
その後、面白い展開になるのだけれど。
観終わって知ったのだけれど、
岡田の長女を演じていた、
5歳くらいの可愛い女の子は、
高峰秀子だそうでビックリ。
評価 ★★★☆☆
2013-10-26 12:00
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コメント(2)
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無声映画時代の小津は、才気がみなぎっているという感じがします。
ほのぼのとしたコメディタッチの持ち味も
この頃すでに完成されていたようですね。
by cafelamama (2013-10-27 07:03)
cafelamamaさん
コメントありがとうございます。
映画黎明期で
力が入っていたのでしょうね^^
そんな中でも、ほのぼのとした雰囲気があって
素敵ですね^^
by 青山実花 (2019-12-28 23:18)