「君と歩く世界」 [映画]
〔2012年/フランス〕
離婚し、5歳の息子を引き取ったアリ(マティアス・スーナーツ)は、
金も殆どないまま、
姉夫婦の家に転がり込む。
粗野で、力だけが自慢の彼が就いた仕事は、
ナイトクラブの用心棒だ。
そのナイトクラブで、
彼は客の女・ステファニー(マリオン・コティヤール)と知り合う。
彼女は水族館に勤務し、
シャチのショーの指揮を生業としていた。
ある日、ステファニーが立つ、
ショーの舞台が崩壊、
プールに投げ出された彼女は、
両足を膝から切断するという大怪我を負ってしまう。
生きる希望を無くし、
死まで考えるステファニー。
体と心の傷が多少癒えてきた頃、
ふとアリに電話したステファニーは、
久し振りに海に行く。
アリに抱きかかえられ、
水に入った彼女は、
文字通り、「水を得た魚」のように、
泳ぎを満喫する。
アリはアリで、
私生活が全て順調というわけではなかった。
彼が新たに就いた仕事のせいで、
姉に多大な迷惑を掛けてしまったのだ・・・。
昨年、サメに襲われて片腕を無くした、
13歳の少女の物語、
「ソウル・サーファー」を観ていたので、
こちらもそういったお話かと思っていたが、
違っていた。
「ソウル~」の女の子はまだ幼く、
両親の庇護のもと、
自分とサーフィンの事だけ考えていればいいのに対して、
こちらは大人の物語。
しがらみもあるし、
自分の生活もある、
「人生、やり直せない事はない」とはよく聞くけれど、
やり直せない事だってあるんだと、
分かってくる年齢でもある。
ステファニーの怪我は、
物語の全てではなく、
意外なくらい淡々と描かれている。
そもそも、この物語の主人公は彼女ではなく、
アリのようだ。
彼の人生のエピソードの方に、
より多くの時間が割かれている。
アリとステファニーの関係も、
友人でもなく、恋人でもなく、
微妙でニュートラル。
ステファニーは、
両足を失った自分が、
まだ“機能”しているのか分からないと言い、
アリと関係してそれを確かめる。
“機能”している事が分かった後は、
ケータイで彼を呼び出しては、
何度もベッドを共にする。
それは互いに割り切った関係だったはずなのに、
アリが他の女と親しくした途端、
ステファニーに湧いてくる不思議な感情。
同じ経験があるわけじゃないけど、
その気持ちは分かるなぁ。
人間の感情はそう単純じゃない。
恋人じゃないと分かっていても、
何度も関係した相手を、
無意識にも束縛したくなるのは、
自然な事なんじゃないのかな。
大人な、いい映画だった。
邦題が甘すぎて、
ちょっといただけないけど。
評価 ★★★★☆
コメント 0