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「婦系図」 [映画]

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〔1942年/日本〕


チンピラのリキ(長谷川一夫)は、
学者・酒井俊蔵(古川緑波)の財布を掏ろうとして失敗、
そのまま酒井の家に連れて行かれる。


酒井や酒井の妻から大変に親切にされ、
そのまま酒井の温情で学校を出させてもらったリキは、
早瀬主税と名前を変え、立派に成長する。


早瀬は、酒井の家から独立するが、
以前からの知り合いだった、芸者のお蔦(山田五十鈴)と、
酒井に隠れて所帯を持つ。


お蔦は早瀬に惚れ抜いており、
隠れ妻の立場にも、不満を言わず、
夫に尽くす。

しかし、お蔦の存在を酒井に知られる事となり、
酒井は、夫婦別れを言い渡す。


苦しみ抜いた早瀬だが、
恩人の言いつけには背けず、
お蔦を湯島天神の境内に連れ出し、
別れを切り出す・・・。





3作観た「婦系図」。
どの作品にも、良い部分がある。


この作品では、
早瀬が酒井に拾われる場面がとても丁寧に描かれていて、
酒井に反抗できない早瀬の気持ちが、
とてもよく分かる。
酒井の妻がまた、とてもよく出来た女で、
スリをした早瀬にも、嫌な顔一つせず接してくれる。
あれでは早瀬も、酒井に恩を感じずにはいられまい。


その酒井を演じたのが、古川緑波というコメディアンだったせいか、
他の2本のような、
大声で相手を恫喝するタイプの先生ではなく、
早瀬とお蔦を別れさせる際も、
どこか笑ってしまうような、面白い物言いをするのだ。
私は、他人を力でねじ伏せるような男は大嫌いだが、
あれでは、嫌いになれないよ(笑)。


ただ、全体として、
ダイジェスト版のような印象は否めない。
どこかのサイトに、
この長谷川一夫版は、
本来3時間の長編であったはずが、
戦後編集され、100分になってしまったのだそうだ。


そのせいか、酒井の1人娘・妙子(高峰秀子)の、
縁談の話が出てこない。
あのエピソードは、
物語に膨らみを持たせるためにも、
サイドストーリーながら、
とても重要だと思うので、
ものすごく薄い物語になってしまっている。


妙子が、髪結いになったお蔦の家を
訪ねてきた時、
妙子の実の母・小芳(三益愛子)が応対するのは、
他の映画も同じなのだが、
妙子の髪を小芳が結ってやる場面があり、
泣かされる。
名乗れない母親だけれど、
娘の髪に触れた喜びは、無上であろうと。


親子にしても、恋愛にしても、
相手の髪に触れるって、
何か特別なものがある。
それって、どういう心理なんだろう。


評価 ★★★☆☆

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コメント 4

坊や

恥ずかしながら・・寝床に就くのが今は最高の幸せと思えるほど、時間に振り回され余裕が持てない情けない現状の自分です。
青山さまのブログを見て、見たい映画が溜まる一方です!
コメントも思うにままならず・・ 毎回必ず拝見させて頂いてますので、
今年もどうかよろしくお頼み申しあげます~~;
by 坊や (2013-01-04 20:39) 

青山実花

坊やさん
コメントありがとうございます。

そんなそんな、恥ずかしいなんて事ないですよ。
生きていれば、色々波もあります。
忙しい時やお疲れの時は、
眠るのが至福の時間でしょう。
お体の望むままにしてあげて下さい。

こんな私のブログが参考になるのかは分かりませんが、
映画は逃げませんので、
また、お時間ができたら、
ゆっくりご鑑賞なさって下さいね。
私も坊やさんのブログを楽しみにしています。
今年もよろしくお願いします。

by 青山実花 (2013-01-05 17:08) 

jane

長生きしてきたのですが、この名作も見ていないんです。タイトルは知っているのですがね。そのうち、見たい。
by jane (2013-01-05 22:41) 

青山実花

janeさん
コメントありがとうございます。

「婦系図」は、何度も映画化されていますが、
市川雷蔵版がDVD化されていて、
一番レンタルし易いように思います。
いつか機会がありましたら、
ぜひご覧になってみて下さいね。
by 青山実花 (2013-01-06 22:42) 

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