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「炎上」 [映画]

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〔1958年/日本〕


父を亡くした溝口吾市(市川雷蔵)は、
京都の驟閣寺を訪れた。
田舎の住職だった父は日頃から、
驟閣寺ほど美しい寺はないと言っており、
自分亡き後は、
友人で驟閣寺の住職である田山(中村鴈治郎)の元で、
吾市に寺の修行をさせようと考えたのだ。


しかし吾市はひどい吃音に悩まされており、
激しい劣等感に苛まれていた。
周囲の者も、
お経が読めるのかと彼をからかい、
吾市の性格は内向的になるばかり。


田山の厚意で大学に通うようになった吾市は、
そこで脚をひどく引き摺る学友・戸苅(仲代達矢)と
口をきくようになる。
障害を持ちながらも、
強く超然とし、女さえ引っ掛ける戸苅に、
吾市は圧倒される。


吾市は美しい驟閣寺に、
穢れた者を近づけたくはなかったが、
戦争が終わり、
沢山の米兵たちが、
娼婦を伴って寺を見学に来、
また、その拝観料を計算し、
外に愛人を囲う田山にも、
激しい嫌悪感を覚える。


思い悩んだ彼が選んだ手段、
それは、驟閣寺に火を放つ事であった・・・。





三島由紀夫原作、「金閣寺」の映画化。
実際に起こった、金閣寺放火事件をモチーフにしており、
調べてみると、
事実に近い描かれ方をしているように思えた。


暗く、陰鬱な話で、
落ち込んでいる時に観たら、
ますます変になりそうだ。
吃音のせいなのか、
持って生まれた要素もあるのか、
吾市の性格は屈折しており、
見ていて辛い。


人々は吾市の吃音を笑う。
それは時代のせいだろうか。
それとも、冗談半分に、
からかいの言葉を口にするのは、
いつの時代も変わらないのだろうか。
人の身体的な悩みは、
他人には理解しにくい。
見ただけでは分からない場合もあるし、
気にしていないように見えて、
当人は大変に苦しんでいる場合もある。
軽々しい事を言ってはいけないと強く感じる。


本来、地味な顔立ちの市川雷蔵が、
役にピッタリで、怖いようだった。
学友の仲代達矢のギラギラした感じと対照的で、
上手いキャスティングだと思ったな。


人々から尊敬される住職が、
実は俗人だったといえば、
若尾文子さんの傑作映画、「雁の寺」を思い出すし、
実際、よく似ている。
あちらも、同じように、
寺の小僧が苦しむ話だった。
女を寺に引き入れないだけ、
こちらの住職の方がマシだけれど。


評価 ★★★☆☆

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