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「ケイン号の叛乱」 [映画]

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〔1954年/アメリカ〕


1943年。
大学を卒業したロバート・フランシスは、
海軍少尉候補生として軍隊に入り、
駆逐艦・ケイン号に配属され、乗り込む。


艦長・トム・タリーはアバウトな人間で、
艦内は、軍隊にしては自由な空気が流れていたが、
真面目なフランシスは、
その雰囲気に馴染めずにした。


ほどなくして、人事異動により艦長が交代する。
新しい艦長・ハンフリー・ボガートは、
キッチリとした態度の、
規律を重視する人間で、
フランシスは安堵する。


ところが、ボガートの性格に、
何か違和感を感じ始める艦員たち。
シャツをズボンに入れる事に異様に拘り、
食べ物の数をチェックし、
緊張すると、手の中で金属製の球を、
カチャカチャさせないといられない。


挙句に、ボガートは、
自分のミスを部下のせいだと報告し、
信頼は失墜する。
艦員の一人・フレッド・マクマレイは、
ボガートを偏執狂(パラノイア)だと断言する。


嵐の夜、
ついにボガートはパニックに陥る。
転覆しそうな戦艦で、的確な指示ができないのだ。
副艦長のヴァン・ジョンソンは、
その場でボガートを解任・自分が指揮を執る。


ところが、その行動が問題となり、
フランシス・マクマレイ・ジョンソンの3人は、
軍法会議にかけられる事になってしまう・・・。





何が正常で、何が異常か、
その線引きが難しいのが、
心の病気であろうが、
この映画に限らず、ハンフリー・ボガートのような上司は、
どこにでもいそうだ。
サラリーマンに置き換えて観ても、
面白いと思う。


ボガートの異常性を、観客に知らしめる一番の場面は、
「苺事件」。
ボガートは深夜に、上官たちをキッチンに集合させ、
「デザートの苺の数が減っている。
冷蔵庫の合鍵を持っている艦員がいるはずだ。
調査して、朝までに報告しろ」と厳命する。


上手い演出だ。
大の男が、それも駆逐艦の艦長が、苺て(笑)。
(他のどんな食べ物より、苺の持つイメージと艦長との落差が絶妙だと思った)
あまりの馬鹿馬鹿しさに、
顔を見合わせる艦員たち。


けれど、ボガートの言い訳も、
それなりに筋は通っている。
「艦船において、食べ物の盗難は命に係わる」と。
そう言われてしまうと、何も言い返せない。
やっぱり線引きが難しい。


軍法会議の場面でも、
最初は、「ボガートの何が悪いのか」という空気になっている。
艦長として、艦員に厳しいのは当たり前だ、と。
ロバート・フランシスたちは、
裁判で負ければ、絞首刑になってしまう。
軍隊は、それほど厳しく、
また、艦長は絶対なのだと実感。


映画の冒頭で、
「このような事件が、アメリカ海軍で起こった事はありません」との、
断り書きが出る。


それを見た時は、
「何もそんな体裁を繕わなくたって」と可笑しく思ったが、
観ているうちに考えが変わった。
国を守るはずの軍隊の内部で、
このような事が事実としてあるんだと、
観る者に思わせるのは、
やはりマズいのでしょうね。


別に狙ったわけではないけれど、
この間の「アフリカの女王」に続いて、
ハンフリー・ボガートのイメージでない役柄を見た。


世間では「カサブランカ」の彼だけが、
すっかり定着してしまっているようだけれど、
調べると、本当に色々な役を演じているのね。
他の作品を観ないなんて、
なんだか勿体ないような気になってきた(笑)。


評価 ★★★★☆

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