「大菩薩峠 完結篇」 [映画]
〔1959年/日本〕
二部の終わりで悪徳旗本・神尾主膳(山形勲)に雇われた、
机竜之介(片岡千恵蔵)は、
あてがわれた荒屋敷に身を潜め、
命令を待っていた。
竜之介が神尾の手下になった事を聞きつけた、
宇津木兵馬(中村錦之助)は、
神尾の屋敷に赴くが、
理由もなく投獄されてしまう。
神尾が竜之介をそこまで大事にするのには、
やはり理由があった。
一方的に憎しみを抱く、勤番支配・駒井能登守を命を奪うには、
竜之介の剣の力が必要不可欠だと判断したのだ。
また神尾は、地元の大金持ちの娘・お銀(喜多川千鶴)と、
なんとか一緒になるため、
彼女を呼び寄せ、襲いかかろうとするが、
寸での所で、竜之介が彼女を守る。
その後、神尾に殺されかかった竜之介とお銀は、
大菩薩峠も近い村で、
見知らぬ家に逗留するが、
奇しくもそこは、竜之介の前妻・お浜の実家であった。
集中豪雨の日、
竜之介は、「子供の泣き声がする」と乱心し、外へ飛び出す。
決壊寸前の笛吹川の橋の上で、
竜之介は、ひたすら子供の名前を絶叫し続ける。
子供はすぐ近くで、元気に育っている事も知らずに・・・。
やはり、市川雷蔵版よりは、
作りが丁寧で、分かりやすい。
私が書いた粗筋は、ほんの一部で、
本当はもっと色々複雑で、
兵馬の恋愛なんかも描かれているのだけれど。
こちらでも、竜之介が、
子供を思う気持ちは同じ。
濁流に流されながら、
子供の名前を叫び続ける彼の声は、
天にまで響くようだけれど、
それは、ただの咆哮にしか聞こえない。
子供の母にした仕打ちを考えれば、
そうなっても仕方のない結末。
竜之介も最後まで、お浜の幻影に悩まされる。
竜之介が濁流に押し流される状況が、
市川版とは少し違っている。
市川版では、川が決壊し、
家ごと流されるのだが、
こちらでは、渡っていた橋が壊れる。
映画としては、市川版の方が、
面白い演出だとは思うが、
原作はどうなんだろう。
竜之介のいる家だけが流されるのは不自然なので、
片岡版の方が、より近いのかなぁと、思っているのだけれど分からない。
劇中、ずっと出ている、
“ムク”という犬が、お利口で驚いてしまう。
神尾が芸人たちのショーを鑑賞中、
無体な事を言いだして、
舞台はめちゃくちゃ、
劇場はお騒ぎになるのだが、
そこに“ムク”が吠え立てながら乱入してきたときは、
爆笑してしまった。
評価 ★★★☆☆
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