「メランコリア」 [映画]
〔2011年/デンマーク・スウェーデン・フランス・ドイツ・イタリア〕
曲がりくねった山道を走る、リムジン。
その道に不似合いな長い車体は、
案の定、曲がりきれず、ハンドルを何度も切り返し、
運転手は悪戦苦闘。
乗っているのは、ウェディングドレスを着たキルスティン・ダンストと、
タキシードを着た花婿・アレクサンダー・スカルスゴール。
そんなこんなで会場に2時間遅れで到着した2人は、
待ちくたびれた招待客たちと披露宴を開始するが、
最初は幸せそうに見えたダンストの様子が何かおかしい。
情緒不安定な彼女は、
その事をスカルスゴールに隠したまま今日の日を迎えたのだ。
式の途中、一人外に出たり、
仕舞いには、ドレスのままで新入社員の若者と性交したり、
その奇妙な行動は周囲の者を戸惑わせ、
花婿も、そんな彼女を捨てて、去ってしまう・・・。
7週間後、
ダンストの姉・シャルロット・ゲンズブールは、
地球に異常接近している謎の惑星・メランコリアの存在が不安でたまらず、
それを夫・キーファー・サザーランドに訴えるが、
「計算上、メランコリアが地球に衝突する事は有り得ない」と、
ゲンズブールを宥める。
そんな中、ゲンズブールの家にダンストがやって来る。
ますます精神を病み、
一人で歩く事も、風呂に入る事もままならぬダンスト。
そうしている間にも、
どんどん近付いてくるメランコリア。
夫の言葉に、一度は安堵したゲンズブールだったが、
ネットで、地球とメランコリアの衝突は免れないと知り愕然とする。
彼らの、そして地球の運命は・・・。
登場人物たちと、惑星メランコリアの衝突とは、
特に関係がなく、
地球消滅を前に、ある一族を選んでスポットを当てたような、
そんな気がしたのだけれど、違うのかな。
解釈は色々できると思うので、よく分からない。
何かがぶつかるせいで、地球が危機に陥るといえば、
「アルマゲドン」と「ディープ・インパクト」を思い出すが、
あちらは、ぶつかってくる隕石に、
核爆弾を仕掛けるなどして、
「軌道をずらす」、「隕石を小さくする」などの対策を講じ、
地球への被害を最小限に抑える努力がされていた(ように記憶している)。
しかしメランコリアは、どんな対策を打ち立てても意味が無いくらい、
大きな惑星で、
地球はただ、「その日」が来るのを待つしかない、
そんな状況。
それを、ある姉と妹が、
どう乗り越えるかであるが、
興味深いのは、
「それ」が近付くにつれ、パニックに陥るしっかり者の姉に対して、
とれも冷静な、情緒不安定な妹という図。
普段から妹は、自分の心と死の距離がとても短くて、
死に対してそれほど抵抗がないんじゃないのかなあと感じた。
対して姉は、日常、死について考えた事がない分、
それは恐怖でしかなく、
生を諦め切れない、そんな風に感じられたのだけれど。
私はどちらかなぁ。
その時になってみないと分からないけれど、
もう絶対、死は不可避と分かったら、
開き直って、美しい天体ショーを楽しむかな。
だって、メランコリアは、青い光を放つ、
大変に美しい惑星として描かれている。
キーファー・サザーランドが、ラスト近く、
ある行動に出るのだけれど、
私にはそれがとても無責任に感じられたよ。
一緒に観た友人は、「分からなくもない」と言っていたけれど。
登場人物たちは、とても金持ちのようで、
広大なゴルフ場の中で暮らしていて、
テレビも観ないので、
俗世間の様子は全く分からない。
他の人たちは、どうしているんだろう。
分からないけど、パニックに右往左往しているんじゃないのか。
ちょっと気になる。
上映中、一定の間隔で、
重低音のような、雑音のような音が聞こえて、
それが物凄く私の神経に障り、
体調が悪くなりそうだった。
最初は、映画館の音響のせいか、
私自身が耳鳴りでもしているのかと思ったくらい。
あれが良いという方もいるようなので、
一概には言えないのだけれど、
どの映画でもそれをされたら、私はちょっと困るな。
評価 ★★★☆☆
赤い風船、白い馬やおばあちゃんの家はまた見てみたいです。
メランコリアの重低音は、あの音かなと勝手に推測しています。
by 月夜のうずのしゅげ (2012-03-05 17:51)
月夜のうずのしゅげさん
>赤い風船、白い馬やおばあちゃんの家はまた見てみたいです。
どちらも、何度も観たくなる珠玉の名作ですね。
「メランコリア」の重低音とは、
20分おきくらいに繰り返す、何とも言えない音です。
最初は気のせいかと思ったのですが、
友人も、いい気持ちはしなかったと言っていたので、
他の人にも聞こえていたんだなーと思いました。
感じ方は人それぞれのようですね。
by 青山実花 (2012-03-07 19:19)